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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「これは銃と言ってなあ、魔法よりずっと強力な武器なんだとよ」と言って第二王子は自分の頭を撃ち抜き倒れた。

作者: 騎士ランチ

「えー、卒パにお集まりの王族貴族の皆様、突然ですが第二王子はこの場をお借りして婚約破棄するのだ」


ここはどこにでもある中世ファンタジー風異世界、神戸市垂水区にあるトアール王国。そのファンタジーな王国の卒パ(周辺国の大人達が後継者候補達の成長を確認する凄く大事な日なんだよ!)の最中、突然第二王子が婚約破棄を宣言した。


どんぐらい突然かと言うと、卒パの二カ月前から重大発表をやりたいと告知し、第二王子の為に十五分の尺を与え、参加者達は皆何をほざくのか聞き耳立てていたぐらいに突然の出来事だった。


周囲の反応は様々だった。理解が追いつかない者、バカを見るような目で第二王子を見るもの、隣に居る者とヒソヒソ話し合う者とかも居た。そして、全員が第二王子の次の言葉を待っていた。


「えー、何故婚約破棄するのか、何故今なのかを説明するのだ。それは、この世界が乙女ゲームだからなのだ。第二王子は、実は転生者で前世の記憶を持っていたのだ」


ここまでの発言で、第二王子の評価がバカつぽいからバカへ、そこから更に真正のキチガイに進化した。こんな妄想垂れ流し人形を次期国王候補の一人としておく訳には行かない。周辺国の偉い人はこの国の未来を想像してニヤニヤし、自国の偉い人達は屈強な衛兵を呼び寄せた。


「卒パで第二王子が婚約破棄するのがベストエンドの条件。だから、当日まで邪魔されない様に黙ってたのだ。これが非常識なのは重々承知。でも、第二王子の前世が止まるんじゃねえぞと訴え続けて来たのだ」

「ちょーっと待つのてすわ!」


屈強な衛兵は飛びかかる機会を失った。第二王子の親友にしてライバル、即ち彼と同じぐらいアホとして有名な宰相の息子がずずいと前に出たからだ。


「どうも皆様こんにちは。私、この国の宰相の息子ですわ。第二王子の事は私にお任せ下さい」

「お前は第二王子の心の友宰相の息子!何故第二王子を止めるのだ!」

「そんなの決まってますわ。私、ゲームはバッドエンドから先に見る主義なのですの」

「ゲームプレイヤーとしての方向性の違いか、ならお前を倒してベストエンドへ向かうしかないのだ!」


昨日の友は今日の敵とばかりに、第二王子は心を切り替えて宰相の息子へ攻撃を仕掛けた。


「喰らうのだ、はどうけん!はどうけん!」


ペチペチペチ。


第二王子のヘナチョコ右パンチが宰相の息子の胸を打つ。


「くっ、コマンド入力が難しいのだ」

「その程度ですか殿下?次は私の番ですわね。はーはーはーはー!」


ペチペチペチ。

宰相の息子のヘナチョコ張り手が第二王子の胸を打つ。


「連打力が足りなくて百烈らないですわ」


ペチペチ。

ペチペチ。

二人は前世のゲーム知識を元に必殺技を出そうとしているが、出しそこねの通常攻撃になってしまい、見応えの無いペチペチ合戦が数分続いた。もう捕まえても良いよねと屈強な衛兵が再び動こうとしたその時だった。


「ルパンルパーン!あり?」


卒パ会場に馬車がフルスロットルで飛び込み、衝撃でバラバラになった馬車から千切れた手綱を手にした青年が現れ地面に転がった。


「痛たた。ふー、何とか間に合ったみたいだね」

「お、お前は第二王子と宰相の息子の共通の友達、騎士団長の息子なのだ!」

「今更やって来て何の用ですわ!」


卒パに遅刻して現れたのは騎士団長の息子だった。彼は千切れた手綱を股に挟み、前後に動かしながらここへ来た理由の説明を始めた。


「第二王子、宰相の息子、二人はそれぞれあーしに共闘を持ちかけたよね?乙女ゲームのストーリー通りになる様にして欲しいって。でも、あーしはどちらの考えにも賛同出来なかった。何故なら、この世界は乙女ゲームとは違うから」

「乙女ゲームじゃない?でも、この世界の人間は第二王子が前世てプレイしてた乙女ゲームで見た奴ばかりなのだ」

「なら、何でベストエンド通りに進めようとしてる殿下が皆から冷たい目で見られてるんだろうね?」

「のだっ!?」


第二王子は顔を青ざめさせながら、卒パに集まった人達の顔色を伺う。顔色の内訳は理解を諦めた顔が92%、必死にノーリアクションでやり過ごそうとしてるのが4%、腹抱えて笑ってるのが1%、共感性羞恥で顔を真っ赤にしてるのが3%だった。


「な、なんか皆が第二王子と宰相の息子を馬鹿にした目で見てるのだ」

「え、私もですわ?ホワイ?」

「二人が馬鹿にされる原因は、ここが『乙女ゲームみたいな世界』だからだよ。ここでは、前世知識で上手いことやろうとする馬鹿が自滅して屈強な衛兵に捕まり、そんで破滅するんだよ」


第二王子と宰相の息子は同時に首を180度回転させた。視界にタックルの体勢の屈強な衛兵が映った。


「ほぎー!騎士団長の息子の言う通りですわー!」

「ど、どうすればいーのだ!?」

「二人とも落ち着いて。さっき言った通り、乙女ゲームみたいな世界では乙女ゲームだと思い込んだアホは屈強な衛兵に捕まって破滅する。だから…、屈強や衛兵を先に倒してから婚約破棄すれば良いんだよ!!」

「「成歩堂!!」」


三馬鹿が一斉に屈強な衛兵へと身構える。彼らの主張及び目指すゴールはバラバラだったが、共通の敵を前にして彼らの友情は復活した。


「真の敵が分かったからには、切り札を出させて貰うのだ。そぉい!」


第二王子はズボンを下ろし、オムツの中に手を入れるとL字型の金属を取り出した。


「これはジュウと言ってな、魔法よりずっと強力な武器なんだとよなのだ。第二王子が前世の力で作ったのだ」


ざわ…ざわ…

銃を見たギャラリーがざわつく。ある者は銃の危険性を即座に察してしゃがみ、ある者は銃が何かは分からないなりに防衛魔法を展開し、ある者は第二王子がこの後絶対に失敗すると確信しながら見届けた。


「さあ、ジュウの力を見せてやるのだ」


第二王子は銃を持つ手をゆっくりと動かし、銃口を自分のコメカミに当てて引き金を引いた。


「成歩堂ファイブ!」


ばん。


「のだっ…?」


火薬の破裂する音が響くと共に、第二王子の頭は右半分が消し飛んでいた。


「ファイブじゃなくて、フォーだったのだ…?」


モリモリモリモリー!

ズン!


オムツをパンパンに膨らませ、脳と眼球を溢しながら第二王子は崩れ落ちた。


「屈強な衛兵、よくも殿下を!」


宰相の息子が屈強な衛兵をキッと睨みながら落ちた銃を拾い上げる。屈強な衛兵は完全に思考停止してしまい、捕縛の為に踏み出せない。


「殿下、見事な最期てしたわ。後はお任せ下さい。さあ皆さんご覧あれ、正しい銃の使い方をお見せしますわ」


宰相の息子は銃口を自分のコメカミに当てて引き金を引いた。


「なるへそスリャー!」


ぱん。


「一歩届かず、ですわ…」


モリモリモリモリー!

ズン!


第二王子の敗北を再現するかの様に、頭の半分が吹っ飛びオムツをパンパンに膨らませ宰相の息子が倒れた。


「宰相の息子ー!仇は必ずあーしが討ち取るよ!」


騎士団長の息子は銃を拾った。


「へきさごん!」


ぱん。

モリモリモリモリー!


「これ、もしかして相手に撃っのが正解…?海の不覚一生のリハク、がくっ」


ズン!


「か、確保ー!」


屈強な衛兵は漸く動き出し、大慌てで三人を担ぐと騎士団長の乗ってきた馬車へ詰め込み外へと連れ出そうとした。が、馬車は既にお前はもう死んでいる状態だったので、屈強な衛兵が馬に鞭を入れた瞬間完全に崩壊し、三馬鹿は床に転落。


モリモリモリモリー!

モリモリモリモリー!

モリモリモリモリー!


落下の衝撃で更に膨らむオムツ。屈強な衛兵はさすまたで三人の胴体をひとまとめにして締め上げ外へと引き摺っていく。腹を締め付けられた事で無限モリモリ編に突入した三馬鹿は、オムツをバランスボール並に膨らませながら退場するのだった。


オムツから溢れる悪臭に顔を背ける者、結局何がしたかったのかと首を傾げる者、耐えきれず笑い顔になる者、恥ずかしさに泣き出す者、反応は様々だったが好意的な反応は何一つ無かった。三馬鹿達は残された左目でそれを見ながら涙していた。


その後、屈強な衛兵は判断が遅いとして一ヶ月の減給、三馬鹿は貴族の地位を失い修道院の地下で幽閉の身となった。


「お前らのせいなのだ!お前らが第二王子の邪魔しなければ婚約破棄が上手く行ってベストエンドだったのだ!」

「ああ、何でこうなったの?私はバッドエンドを目指してましたが、原作に無い不幸なんて体験するつもりはありませんでしたわ!このままでは、この乙女ゲームの世界がバグってしまいますわ」

「出してー!あーしはこいつらを止めに入った側なんだよー!この世界が乙女ゲームそのものとか思ってるキチガイと同列にしないでー!」


鉄格子付きの狭い部屋に閉じ込められた彼らは、毎日壁ドンと地団駄を繰り返しながら互いを罵り合い続けたのだった。











以上が、この大陸の覇者となった隻眼王グリアードの青年時代を書いた物語である。


元第二王子グリアード、元宰相の息子エルーシア、元騎士団長の息子アスカ。この三人はほぼ同時期に前世の記憶を思い出し、互いの秘密を打ち明け世界の平和の為に協力する事を誓った。


だが、彼らは転生者三人が揃えば敵は無いと油断する事は無かった。一つの学級に三人も転生者が居たのだから、絶対に他にも居ると考えたのだ。


「隠れ転生者は間違いなく存在する。どうする?」

「というか、立ち位置的に私達がその隠れ転生者の物語のざまぁ役になりそうですよ?」

「いや、この状況はこちらが有利だ。各国の要人が集まる卒業パーティてざまぁされてやろーぜ。それて周りと違う反応した奴が隠れ転生者だ」


アスカの案により、三人はあえて大勢の前で自爆し、その時の反応で転生者を判別する事となった。


そして卒業パーティ当日、三人は転生者ならば思わず反応したくなる様な愚かな行為を繰り返し表舞台から退場。去りゆく彼らの目には誰が転生者か丸わかりだった。


その後、彼らは家族から何日にも渡り説教され縁を切られた後にキンタマーニをゴールデンボンバーされ修道院地下へ幽閉された。想定通りのダメージのみて望んた結果を得られた彼らは歓喜し、毎日壁と床を使ったモールス信号で互いを励ましながら今後の計画を練り続けていた。


「この世界、今何のルートを辿ってるのだ!?第二王子の婚約者はまだ元気してるのだ?」

「外では、一体誰が国の中心となってますの?私達が不在てもゲームは進行出来てるのですわ?」

「魔王の軍とは戦争したの?海の向こうとの交流は?…へー、そんな凄い事になってるんだ。…ねえ、何であーしはそっち側じゃないんだろうね」


外の情報は牢屋番がいくらでも話してくれた。三人の悔しがり泣き叫ぶ姿と、ピントのずれた後悔をする姿が滑稽で面白かったからだ。


グリアードは自分がざまぁキャラだと確信していた。なので、こうして定期的にざまぁパートを提供する事で外の情報を手に入れると同時に毒殺を回避し続けていた。それが実り、卒業パーティで見つけた転生者達の底が全て知れた時、彼らは牢屋を出て大陸統一の為に動き出した。


大陸各地て王やそれに近い地位てふんぞり返っていた転生者達は次々と敗北して行った。転生者同士の勝負は情報がモノを言う。グリアード達は相手のスキル・武器・大義・女の趣味をほぼ全て把握しているのに対し、相手側はグリアードの事を卒業パーティで婚約破棄して自爆した第二王子としか認識して無かった。


最初に倒した転生者は、グリアードの事を全く覚えていなかった。その後に倒した転生者達も、『あー、ハイハイあの馬鹿ね』と舐めた態度で勝負に挑み、グリアード達が隠し続けていたスキルが何なのかも調べようとせず倒されていった。


自分達を除く全ての転生者を倒し、大陸統一を果たしたグリアードはこの様な言葉を残している。


『転生者は恐ろしい存在だ。奴らは少し気に食わない事があると生活基盤を破壊して他国へと移り住み、スローライフと称して要塞都市を建造する。そんな存在を生かしておく訳にはいかない。この世界の人類が安定した社会を維持するには転生者は不要な存在だ。そして私も、王族として育てられて無かったら、転生者の友と出会い互いに秘密を打ち明けていなかったら、奴らと同じ危険な存在となっていただろう。私とエルーシアとアスカは、他の転生者を全て排除し、私達自身も子供を作らないと決めた。それを実現するには、卒業パーティの日にああするしか無かった。他にもっと良い方法もあったかも知れない。だが、アレ以上の手を思いつけなかった』


卒業パーティでの彼らの活動は舞台化し、今でも再現されている。

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緑のずんだ妖精声の第二王子 白ロリータでピンクな声の子息 金髪サイドテールギャル声子息 脳内再生余裕でした あと今回のどんでん返しや発想がとっても面白かったです
面白かった。 ただ、3点本筋じゃないところで非常に読み辛かったのでもったいなかった。 ①第二王子の1人称  1人称「第二王子」で本人のセリフか他の人のセリフかわかり辛い ②三馬鹿の口調が全員ギャル語…
とても面白かったです! 第二王子とその仲間たちがバカ丸出しの演技して婚約破棄する光景にめっちゃ笑いました! よくみたら卒パのギャラリーの中に前世を知っていないと出来ない反応をしている人たちがいて、 あ…
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