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最終話 ー静かなる再会ー
ある日、リディアは偶然、孤児院にパンを配る女性の姿を目にした。──金髪の、どこか懐かしい後ろ姿。「……セシリア。」妹は、孤児たちに笑いかけ、優しくパンを手渡していた。近くの商人が話す。「あのパン屋の姉ちゃん、毎週タダでパンを配ってくれるんだ。」「なんでも……昔、姉を傷つけたことを後悔してるとか。」リディアは静かに歩み寄ろうとしたが、すぐに足を止めた。妹も気付いているはずなのに、振り返ることはなかった。──あれで、いいのよね。姉は、馬車へと乗り込み、遠ざかる。「お元気で……セシリア。」振り返った妹は、微かに涙ぐんで、でも笑っていた。二人は、言葉を交わさなかった。けれど、心はもう、確かに繋がっていた。──完──
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
初回作品なので、至らぬ点など多々あると思います。
もしよろしければ、ご意見ご感想などいただけますと幸いです。
小鹿わんこ