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第1章ー華やかなる始まり
リディア・ノワールは、王国屈指の名門、ノワール侯爵家の長女として生まれた。黒髪と深い蒼の瞳を持ち、正義感が強く、幼い頃から誰よりも凛とした令嬢だった。妹のセシリアは、母親似の金髪の可憐な少女。けれど、彼女は小さい頃から他人を見下し、姉であるリディアにも冷たく当たることがあった。リディアは幼くして、王太子アルベルトとの婚約が決まっていた。初めて会った日、彼はリディアに「君は特別だ」と優しい笑顔を向け、リディアは彼に強い憧れを抱くようになる。やがて婚約式が無事に終わり、リディアは十五歳になり王立学園へと入学した。学園では王太子妃としての教育も兼ねて、政務や貴族の慣習を学び、時にはアルベルトの代理として公務の一部をこなすほど有能に成長していく。最初は、彼女の学園生活も婚約者との仲も順調だった──だが、二年後、妹セシリアが学園に入学してきたことで、全てが崩れ始めた。