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お…お祖父様

 最近目覚めると、今日一日が楽しみで仕方がない。


「ニルヴァーナさん、今日は…」


「はいっ…ぁっ」


 楽しみすぎて、ルディルが言い終わる前に返事をしてしまった。


「ふふっ…えっと、今日は客が来るんだ」


 私の貴族令嬢として無作法に対してもルディルは笑って受け流してくれる。


「…そう…なんですね」


 お客様がいらっしゃるという事は、その間私は一人で過ごすって言うこと。

 ルディルと一緒にいられない事にがっかりしている自分がいる。


「ヨシュアルト侯爵がニルヴァーナに会いたいと言っている。もし、会いたくなければ俺は無理に会う必要はないと思う」


「…私に…ですか?」


「あぁ」


 てっきりルディルのお客様だと思っていた。

 ヨシュアルト侯爵は、お母様のお父様。 

 私のお祖父様。

 過去、私を埋葬してくれた人。

 一度も会ったことは無いが、唯一私が死んだこと悲しんでくれた身内…


「私…会って…みたいです」


 出奔し、隣国まで私に会いに来てくれた人…


「わかった、侯爵には伝えておく。…俺も一緒にいた方が良いか?」


 身内。

 心配してくれる人。

 でも私とは初対面で、人間不信とは言いたくないが簡単に人を信じることは出来ないでいた。

 ルディルと一緒に観光するようになって初対面の人とも会話できるようになった(商売人の会話術が長けているので私がぎこちなく返事しても相手の能力が高い為会話になった)とはいえ、ヨシュアルト侯爵と会話が出来るかは別。

 侯爵は初対面だが、私を知る身内。

 上手く会話が出来るとは思えない。

 優しくしてくれるルディルにここまで甘えて良いのかと悩むも、やっぱり怖いという気持ちの方が強かった。


「…お願い…できますか?」


「ああ」


 なんだか最近、ルディルに微笑まれると心臓が煩くなる。

 彼には聞こえてないと思うけど、私には耳元に心臓があるようで更には顔も熱くなって困っている。


「お客様が到着されました」


 食事を終え気持ちを落ち着かせていると、使用人からお客様の到着の知らせを受ける。


「既に談話室でお待ちいただきルディル様が対応中なので『急がなくても大丈夫です』とのことです」


 お客様を待たせる事もルディルに対応させている事にも申し訳ない気持ちで、急いで談話室へ向かってしまう。


 コンコンコン


「ニルヴァーナ様です」


「どうぞっ」


 返事を待ってから使用人により扉が開けられる。


「遅くなってしまい申し訳ありません。ニルヴァーナ…です」


 キャステンと名乗るべきなのか既にヨシュアルト侯爵の養子となっていると聞くのでヨシュアルトと名乗るべきなのか迷い両方とも名乗らなかった。


「初めまして、グレンバーグ・ヨシュアルト…だ」


 初めて見る侯爵は眉間に皺を寄せ私を蔑んだ目を向ける。

 侯爵もまた、私を『娘を殺した元凶』と認識しているのかもしれない。

 それは事実なので、侯爵の感情は悪意と受け取ってはいけない。

 私は被害者ではなく加害者なのだから。

 恨まれても仕方がないんだ…


「…二人とも家族だな。同じ顔してるぞ?」


「「へっ?」」


 重苦しい空気を変えるべくルディルが気を使ってくれたんだと思うも、私達を交互に見たルディルは自身の眉間を指差していた。

 ルディルの行動に眉間を確認し撫でていると、目の前の侯爵も同じように眉間を撫でながら視線があった。


「「あっ」」


 確認していた手を勢いよく離すと、侯爵も同じ行動をしている。


「親子だな」


 呟くルディルの言葉は私の胸にすっと染み込んでいった。


「親子…」


 私に馴染みのない…不似合いな言葉。

 それから私達はソファに座りしどろもどろな会話を始める。

 私の目の前には侯爵が座り、侯爵の隣に足を組んで背凭れに寄りかかりながら紅茶を堪能しているルディルの姿が目に映る。

 彼のリラックスしている姿に安心し気持ちを切り替え侯爵と対面する。

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― 新着の感想 ―
親子ではなかろうもん 養子縁組してたとしても血縁的に祖父と孫として見てあげるべきかと
 おい、侯爵。なんで睨んでるんだ?
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