待ちに待った卒業式
私は遂に学園を卒業する。
この日をどれだけ待ち望んだことか…
卒業式は過去と同じように滞りなく進み主役である卒業生は卒業する事に対して感傷に浸る事なく、この後の卒業パーティーに気持ちが向いている。
なので、今回卒業生代表として選出された私が登壇しても記憶には残らないだろう。
私としては、卒業生代表を一度は断った。
それでも…
「卒業生代表は最終試験を踏まえた総合成績や常日頃の振る舞いに人望などを含めた『学園の名に恥じぬ者』とされている。ニルヴァーナ・キャステンは三年間首席だったことはもとより、身分に囚われることなく相手を尊重する姿勢、それに人望とは周囲が面白おかしく話題にする人物のことを言うのではありません。私達教師は総合的に見て本年度の卒業生代表は、君が適任だと判断しました」
確かに私は首席ではあったが、他二点では私は基準を満たしているとは思えない。
寧ろ、学園の代表として私の名前が残るのは今後の『恥』に繋がる気がしてならない。
そもそも、私達の代では誰もが認める適任者がいる。
「とても光栄なことではありますが、私よりも王子の方が適任であり、人望もあるので多くの生徒が望んでいらっしゃると思います」
私は仄めかす事なくハッキリと相手の名前を口にした。
私のような家族に認められない貴族ではなく、我が国の王族である王子。
卒業式という大舞台に相応しい人物であり、誰もが今回は当然王子が代表になるのだろうと口にしていない。
寧ろ当然すぎて誰も口にしない。
そんな状況で私が卒業生代表となれば卒業式を壊すことになる。
そして、貴族の間で忘れられない日として語り継がれる可能性も…
「代々卒業生代表は身分関係なく学園での評価のみで決定される。それに我々学園は今後不正は勿論、忖度もしない事を表明した」
表明した…
それはつまり、貴族達に学園は以前とは違う事を証明したい。
その為にも私のような出生は怪しいが、三年間首席を維持し無難な生活態度であったので利用するにはもってこいの人物と判断された…という事。
だが、今後の私を考えると『学園の恥』でしかなくなる。
卒業資格も抹消される可能性があるのに…
それは前代未聞の出来事となり誰も忘れられなく…なる…
ん?
学園が私を利用するなら、私も学園を利用すれば良いのか。
学園卒業資格者から抹消されるなんて『学園の恥』だが、それは『家門の恥』でもある。
そう考え私は決断した。
「分かりました。お受け致します」
そして今、私は登壇し卒業生代表として挨拶している。
私が登壇することに王子はどう思っているのかは分からない。
式が始まる直前に
「卒業生代表はニルヴァーナ令嬢だと思っていた」
とだけ、声を掛けられた。
王子の感情を読み取るのは私には難しかった。
過去、卒業生代表として挨拶したのは王子だった。
卒業生代表の言葉など興味のないのは式に参加している生徒だけでなく、私さえもどうでも良かった。
私は卒業式で顔を売り、この後のパーティーで王子により『断罪』されると思うとつい卒業式というのに顔が綻んでしまう。
あぁ、早く過去と同じように私を追放してほしい。




