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押しきられてしまったのか…

「お義姉様は娼婦の娘という事で、婚約者候補を辞退すると王子に宣言しているのでそれ以上話題にするのは……」


 令嬢達と会話するのも不馴れな私が、誉められ持ち上げられる環境に困惑していると助け船が現れた。

 本人としては、話題の中心が認めたくない義姉で尚且つ侮辱ではなく尊敬の眼差しを受けているのが耐えられなかったのだろう。


「えっ、辞退を宣言されたんですか?」


「はい」


 ローレルの言葉が信じられなかった令嬢に確認され、肯定する。

 嘘ではないし、私としてもいつまでも候補でいるつもりはない。


「それは……残念ですね」


「残念?」


 何故残念なのか私には分からない。


「胸を張れるような出生ではないと噂されていますが、実際の所ニルヴァーナ様のお母様は元侯爵令嬢ではありませんか? でしたら問題ありませんよね?」


 ヒルメン令嬢の言葉の意味を汲み取れずに居たのは私だけではなかった。


「え゙っ?」


 私が疑問の声を挙げる前にローレルが不満の声を漏らす。


「出生であれば、ローレル様は男爵夫妻のお子となり婚約者候補の最低条件を満たしておりません。ですが、今は後妻という事でこの場の参加が許されております。ですので、元侯爵令嬢のお母様で現公爵家に身を置いているのであれば、ニルヴァーナ様が出生を理由に婚約者候補を辞退する事はないのではありませんか?」


 王子の婚約者になりたいと思った事のない私には、ヒルメンの言葉は嬉しいものではない。

 私の気持ちとは別に、お茶会に参加している令嬢達もヒルメンの言葉に惑わされ始める。


「言われてみれば……そうですね」

「確かに。それに、ニルヴァーナ様のお母様のご実家ってヨシュアルト侯爵家だと聞いたことがあります」

「ヨシュアルト侯爵ですか? 長い間ウェルトンリンブライド王国に外交官として交渉している?」

「そんな方の孫にあたるニルヴァーナ様であれば、婚約者候補として差し支えないのでは?」

「そうよね、元男爵夫妻のローレル様が婚約者候補に上がっているくらいですもの」

「ニルヴァーナ様が不相応なら、ローレル様の方が不適格ですわね」


 招待状が届き軽い気持ちで参加してしまった事を今になって後悔している。

 主催者であるカルリバルも婚約者の座を狙うソバレリーもこんな展開になるとは予想しておらず、困惑と共に嫉妬の表情も見え隠れする。

 モリアンナは表情を崩すことはないがローレルだけは憎しみを込めた思いで私を睨み付けていた。

 ローレルは私を『婚約者候補に相応しくない』と声を挙げたいのだろうが『男爵夫妻の子供』という事実を出されている手前、安易に否定出来なくなっていた。

 私を否定してしまえば、自身の候補資格も失ってしまう事になる。

 それだけは避けたい思いが表情から物語っていた。


「いえ、私の出生は貴族社会では認められるべきではないので辞退を……」


「おっお義姉様っ。お義姉様は公爵家の一員なのですから、婚約者候補を辞退する必要はありません。胸を張って婚約者候補として振る舞うべきです」


 私が辞退すれば、他の候補者達に辞退を迫られると危惧したのかローレルは必死になって私を婚約者候補の一人のままで居させようとしている姿に冷笑してしまう。


「そうですよ。王子は婚約者候補としてニルヴァーナ様とも対面されているので、王族としては婚約者候補であることを認定していることになります。王族の判断を覆すのはどうなんでしょうか?」


 ヒルメンの最後の一押しが利いたのか、この場にいる令嬢達は納得した様子で私を婚約者候補の一人として認めてしまった。

 私の意思を置き去りにして。


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― 新着の感想 ―
ニルヴァーナの母親の実家は娘が娼婦扱いされてるのになんで黙ってるのか不思議だったけど、理由らしきものが分かってすっきりしました。 今後 外国から戻ってきて現状を知ったらニルヴァーナはもちろん公爵とも一…
敵が、敵が多い 主に王子。
ニルヴァーナが父親によって理不尽な目に遭うたびに思ってました。 「なんでこの子、母親の実家を頼らないんだろう?母方の祖父母からこの異常さに物申してもらって、何だったらそっちに避難すればいいのに。それと…
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