二年生は…
初日は戸惑いが見えたクラスだが、次第に不安も消え今は自然に過ごしている。
「二年生になった君達には他国との交流を図ってもらう。ある分野で優秀な生徒が学園代表として交換留学生となる」
一年生ではなかったイベント。
学園代表となるのは名誉なことで、女性では婚約者候補一歩リード。
男性も自身の名前を売るチャンスとなるので強制ではないが多くの者が参加する。
「今年は芸術がテーマです」
毎年テーマは変わる。
今年は芸術……
音楽に精通している者や絵画や彫刻を嗜んでいる者が率先して参加する。
「参加者は作品に込めた思いや我が国の魅力を表現し、その後演説してもらい教師や学園長と協議し代表を選出する。そして学園代表となれば、近隣諸国を含め何十ヵ国の代表が参加し隣国のウェルトンリンブライド王国で開催される大会に参加する事になる」
「……ふ~ん」
私は参加するつもりはないし、過去もしていない。
勉強を必死にする人生で、音楽や芸術など一切触れることのない人生だった。
王子の婚約者候補達は、ここぞとばかりに参加する。
『皆さんは何をするの?』
『私は、ピアノにするわ。幼い頃から嗜んでいるもの』
『私は、絵画にするつもりです』
『私は……』
その為、誰が何をするのか探りを入れている。
ローレルも周囲を気にして何か考えているようだが、まだ決まっていない様子。
過去のローレルは参加していない。
と言うより、事件が起きた。
『先生、観てください。交流会用の作品が何作品か破損しています』
展示されていた彫刻の一部が欠け、絵画も彫刻の下敷きとなり破けるという事件が起きていた。
『交流会に参加していない誰かが犯人ではないですか?』
誰かの一言で交流会に作品を提出しない人間が犯人という話になり、私とローレルが怪しまれた。
私達以外にも参加しない人間はいたが、婚約者候補を一人でも減らしたい人達によって名前が挙げられ気付いた頃には私が犯人だと噂で断定された。
実際の犯人は不明。
「今回も起きるのかしら?」
犯人ではないと訴えたが、誰も信じてはくれなかった。
その後、教師が調査するも証拠も証人もなく『事故』と片付けられた。
『きっとあの方が有力候補者の作品を破損させたに違いないわ』
『ご自身が作品を出さないからって、人の作品を傷付けるなんて信じられないわ』
事故と言われて納得する者はおらず、生徒の間では私が犯人だとされた。
「今回は犯人にならないよう行動しなくちゃね……」
真犯人を捕まえたり、事件を未然に防ぐなんて面倒なことをするつもりはない。
起きてもいない事件で美術室を張り込みしていましたとなれば不審だろうし、参加者でもないのに美術室に近寄れば事件が起きた時真っ先に犯人候補に挙がってしまう。
なので、私は美術室には一切近付かない。
放課後はすぐに帰宅。
それだけ……
「それでも疑われるのかな……」