どうなったでしょう?
『撤回されたんですね』
『あの噂は本当みたいですね』
掲示板に貼られていた試験順位は回収された。
その後新しく順位が貼り出されることはなく、数名の教師が退職し生徒も何人か停学となった。
彼等の理由は公表されていない。
『あの人達ってそういう事だったんだよね?』
『やっぱり貴族だからって優遇されてたんだよ』
『何が平等だよ』
私が学園長室に呼ばれたのを目撃した生徒により噂は拡散された。
いくら待っても学園から確かな説明もなく、私も口をつぐんでいる事で生徒達の憶測は飛び交い結果的に貴族と平民の溝は更に深まることに。
そして冷遇されていたFクラスの生徒による他クラスへの不信感は高まる。
そんな時、教師から連絡事項が発表された。
「以前まではクラス単位で課題を変えていたが、本年度から全学年同じ課題が提出される。課題は強制ではなく本人の意思で参加が認められるようになった。Fクラスだからと辞退することなく、一人でも多くの生徒の参加を期待し様々な意見を聞きたいと思っている」
突然の学園側からの規則変更の発表にFクラスの生徒は静かに歓喜していた。
順位表は撤去されたが、私の試験結果が否定されたわけではない。
曖昧であるが、Fクラスの生徒は私が不正していないという結論付けたよう。
彼らは実力でFになったのではなく、誰かの策略によって『Fクラスを押し付けられたんだ』と。
『失われていた自信』『踏みにじられた尊厳』を取り戻し始める。
不正があった事実は公表されていないが、待遇が変わるだけでも大きな変化。
そして他のクラスの生徒も察し、私を見て気まずい表情を見せる。
「課題ね……」
全学年の参加が許された課題だが、私が参加することはない。
過去に提出した私の課題は全く評価されず、時には私の論文はローレルが発表した事になり彼女が表彰された。
事実を教師に訴えたが、
『義妹の課題を横取りする最低な姉』
という噂が広まった。
私は何をしても認められない。
不正が蔓延る学園で努力をしていても無駄だった事を知っているので、無駄な事はしない。
「ニルヴァーナ・キャステン……課題についてやってみないか?」
「私は目立つような行為はしたくありませんし、私の努力は他人の物にしかなりませんのでお断りさせていただきます」
各担当の教師に課題についての話があるものの全て断っていた。
私と教師のやり取りを聞いていたFクラスの人間は、援護射撃ではないが私の知らないところで鋭い視線を教師に向けていた。
「もうそんな教師は……そうか。締め切りを過ぎても受け取るから、気が変わったらいつでも来なさい」
私が頑なに課題はしない態度を見せると、教師は諦め教室を去って行く。
Fクラスの生徒は私が知っている過去の人達とは違い、利用する事は無い。
静かに私の味方で居てくれていた。
最近では挨拶を交わす生徒もちらほらいる。
それでも、それ以上親しい関係にはならないよう私から線を引いている。
向こうも私が公爵令嬢ではあるが『娼婦の娘』という微妙な立場を考え安易に踏み込んでは来ることはなく、そこら辺の貴族よりも状況把握に長けていた。
「Aクラスより、居心地が良いわ」
私にはFクラスが合っている。