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試験結果

 数日間の試験が終わると一気に緊張感が解け、生徒達は普段の活気を取り戻していた。

 試験前にどんな話題で盛り上がっていたかは忘れ、生徒達は新たな噂のネタを探しだす。


 放課後。

 試験結果が張り出されたと聞くと一斉に掲示板へと急ぐ。

 過去の私はあの紙を見るのにとても緊張していた。

 

『Aクラスから落ちてはいけない』

『上位じゃないと意味がない』


 毎回祈る気持ちで張り出される順位を確認していたのを思い出す。

 どれも今の私には関係のないこと。

 誰もいなくなった教室で帰り支度を済ませていると次第に廊下が騒がしくなる。

 きっと、誰が落ちて誰が上がったのかで盛り上がっているのだろう。

 関係のない私は身支度を整え教室を出る。


「お義姉様っ」


 学園での貴族は気品を見せつけるように優雅な振る舞いをする。

 平民も貴族を不快にさせないよう行動には気を付けている。

 そんな中、暴漢に襲われているわけでも突然獣が現れたわけでもないのに大声で人を呼び止める人物がいた。

 とても響く廊下で名前を叫ばれる。

 私を『お義姉様』と呼ぶのは一人。


「お義姉様っ」


 私が振り向かないでいると、相手は再び声を荒らげ私を呼ぶ。

 恐る恐る振り向けば、やはり私が予想した人物が鬼の形相で近付いてくる。


「……ローレル様? どうしたの?」


「どうしたですって? あんな不正して恥ずかしいとは思わないんですか?」


 彼女がこんなにも感情をぶつけてくるのは初めて。

 周囲も気にせず怒り任せに責め立てる姿は貴族とは思えない。


「不正? 何の事?」


 つい正直な疑問を口にしてしまったが、あの時もローレルは証拠もなく私の努力を不正だと踏みにじった。

 公爵に愛されていない私が自分より良い点数なのが許せなくてでっち上げた嘘。

 私が日々努力していたのは彼女も知っていたのに……

 よく使用人に


『勉強してもお父様に好かれたりしないのに可哀想』


 笑いながら話しているのを聞いたことがある。

 結局ローレルが訴えたことで私の試験結果は無効、卒業資格も失った。

 だけど、彼女が私を『不正』と発言するのは卒業間近。

 今は早すぎる。


「しらばっくれないで。勉強なんてしていないお義姉様が一位だなんてあり得ないわっ。お父様に泣きついたかしたんでしょっ? 公爵家として恥を知るべきだわ」


 二回目の試験という事もあるし、今回の人生では授業のみだが過去の私は寝る間を惜しんで勉強していた。

 それが今回発揮されたに過ぎない。


「……私にはなんの事だか思い当たらないのだけど。ローレル様も知っての通り、私がお願いした所で公爵様は動いてくれたりはしませんよ?」


 私があの男に見向きもされていないのはローレルも知っているでしょ? と語り掛ける。


「……なら、教師を脅すか色仕掛けかして試験問題を入手したんじゃないの?」


 ローレルは公爵が私の為に動くような人物ではないと納得し、他に不正のルートが有るのではないかと必死に思考を巡らせている。


「生徒に迫られたくらいで試験問題を横流しするような教師はオーガスクレメン学園にはいらっしゃらないと思いますよ? 万が一そんな教師が存在した場合、学園の名を汚す行為ですので退職するべきと判断されるでしょう。それに、依頼した生徒も罰を受け退学は免れないでしょうね。試験の為に貴族として不名誉な退職・退学を選ぶ愚か者は居るのかしら?」


「……なら、どうしてお義姉様が一位なのよ……」


 ローレルは私が一位であるのが納得できない様子。

 私としては試験を受けている最中、問題を解いていても難しいと感じなかったので上位には入れたなとは思っていた。

 それでも私が一位になるとは信じられずにいた。

 過去、あんなに努力しても一位なんて取ったことは一度もないもの。


「一位……確認していないので分かりませんが、それは見間違いじゃないかしら?」


 再度ローレルに確認する。


「見間違いじゃないわ。何度も確認したものっ」


 ローレルが感情のまま大声で話すので、掲示板から戻った生徒達は私達姉妹の会話を面白そうに聞いている。


「では、私も確認しに行くわ」


 興奮したローレルの横を何事もなかったかのように静かに通りすぎる。

 集まっていた生徒も私が通る道を開け、私が過ぎると再び掲示板へと向かう気配を感じた。

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