入学式
他のクラスに比べ異様と感じるも、今日から私もこのクラスの生徒の一人。
黒板に張り出されている座席表に従い着席。
大人しくクラスの雰囲気に溶け込むと教師が現れる。
「もうすぐ式が始まる。皆静かに付いてくるように」
教師に促され、式が行われる講堂へ移動する。
会場に到着し周囲を確認すると、Fクラス以外の生徒はまだ来ていない。
入り口から奥の席を割り当てられているFクラスを先に案内したのか、それとも成績不振のFクラスは成績優秀者を待つのは当然という意味なのか。
「他のクラスの人間が到着するまで静かに待つように」
席に座るだけなのでそこまでの意味はなく、私の考えすぎかもしれない。
喩え、入り口から奥とは言え通路は確保されているので他のクラスが先に入場していても他のクラスに迷惑を掛ける事なくFクラスが座席に着くのは難しいことはない。
考えれば考えるほど嫌な気分になるのでそれ以上考えるのを止めた。
席はクラス毎に用意された範囲内であれば細かく指定はされていない。
皆自由に着席する。
私達が大人しく席に着いていると、他のクラス……Eクラスの生徒が到着し同じように着席。
それからD、C、B、Aクラスの生徒が現れると一人納得していた。
私達Fクラスが席に着いているのを認識したEクラスの生徒からの視線は、明らかな『見下し』。
見下されるのが嫌だが、自身より劣等生がいることに安堵し相手を見下す。
そんな状況をFクラスの人間は黙って耐える。
「これより入学式を開始する」
全生徒が着席するのが確認されると式が始まる。
学園長の挨拶に担任の紹介。
貴賓による祝いの言葉。
そして新入生代表は入学前のクラス決めの事前試験で優秀な成績を修めた王子が挨拶をする。
『あの方が王子?』
『カッコいい』
式が始まり集中力が途切れ始めた頃だったので、王子の登場で皆の意識が一気に目覚めた。
令息は少しでもお近づきになり側近に、令嬢は将来の王妃になるべく婚約者。
そして平民も人生の大逆転劇を想像し、多くの者が目をギラつかせながら壇上に立つ王子を凝視。
そんな中、私だけは冷めた目で彼を見ている。
過去、私の話を一切聞かず事実確認もせず大勢が話す噂話だけで私を断罪した男…
「……くたばれ」
心で罵ってはいても、彼に対して何かするつもりはない。
私の今回の目的は、実の父親を陥れること。
だけど不幸になってほしいと願う人間は沢山いる。
新しい家族と私の言葉を聞かなかった生徒。
金で貴族の言いなりになった教師。
そして私の存在に価値がないと分かった途端あいつらに生け贄として差し出した使用人。
それら全ての人間に復讐したいが、欲張れば失敗する。
私の一番の目的は父だけ。
あの男に復讐さえ出来ればそれで良い、多くを望んではいけない。
但し、彼らの事は心の中では存分に悪態を吐かせてもらう。
「……ふぅぅぅううううううう」
過去の学園生活を思い出すと、嫌な事、不快な事、悲しい事しか私にはない。
楽しい事も嬉しい事、誰かと喜びを分かち合った事も何一つない。
誰かに認めてほしくて必死に努力するも他人によって打ち砕かれた。
それどころか私は不正をして成績を保っていたとされ、誰もがその噂を信じAクラスの汚点とまで言われる始末。
そんな事を思い返していると溜め息しか出ない。
「これで、入学式を終了とする。各自教師の指示に従い教室に戻るように」
長い入学式が終わり、私は私のクラスFクラスへと向かう。
もちろん、どのクラスよりも一番最後に案内される。