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学園入学

 大抵の貴族は誘拐などからの安全を考え、学園まで馬車で向かうのが通常。

 名ばかりの貴族の私さえあの男の配慮から馬車を利用している。

 私専用馬車で一人移動。

 外観は高級感漂うが、内装は質素で椅子も固く石畳にも関わらず揺れも感じる馬車。


「あの二人と一緒じゃないだけましよね」


 ベネディクトとローレルは別の馬車で二人で登校し、私達は馬車も時間も違う。


「Fクラス……」


 Fクラスとなった今回は、クラスの顔ぶれは当然ながら違う。

 過去の時も友人はおろか、会話をする人も居なかった。

 学園に入学する頃には私が我が儘というのが広まっていて、王子の婚約者争いが本格化されると義妹を虐げる悪女となっていた。

 自身の評判や家門の名誉の為にも誤解されぬよう私と親しくする人はおろか、極端に避けられていたのを思い出す。


「一人でいるのには慣れているもの……」


 過去を振り返っていると、馬車は学園に到着し停車する。


「また始まるのか……」


 貴族の馬車がズラリと並び、続々と生徒が登校。

 優雅に降り立つ貴族を意識しながら平民は、そそくさと彼らの視界に留まることがないよう過ぎ去っていく。

 私も人の流れに倣うよう歩いていくと、周囲がどよめきだす。


「なに? あぁ……」


 自然と私も彼らの視線を辿ると、いずれこの国の頂点に立つ存在の男が登場。

 男は周囲の視線を気にすることなく悠然と歩いていく。

 彼の歩みを邪魔してはいけないと感じた生徒により、校舎までの最短ルートが出来上がる。

 私もその流れに逆らうことなく周囲と同化し、王子の記憶に残ることのないよう隠れた。

 過去のあの男は私の言葉を一切聞かず、ローレルとベネディクトの言葉と周囲の私への印象だけで私を判断し卒業パーティーで断罪した。

 あの男は事実よりも多数の声で正義を振りかざす事が出来る人物。

 その事を知っているので先回りして王子に取り入り、あの二人について有ること無いこと囁き印象操作し過去に私が味わったような肩身の狭い思いをさせることもできる。

 だけど私はそんなことをするつもりはない。


「あんな奴に頼るもんかっ」


 私は一人決意し、私の新しいクラスに向かう。

 Fクラスは生徒の間で


『落ちこぼれ』

『脱落者』


 などと見下されているクラス。

 そのように噂されるもので、Fクラスの生徒は卑屈になるか攻撃的になるか自身の存在を消すようになる。

 そして、不名誉に停学・退学となる者の多くがFクラスの者だ。

 教室も本校者から階段を上がり、一年生の階に到着し最奥がFクラス。

 Aクラスが優遇されているのか、Fクラスの人間を見世物にしているのか、それとも只の考えすぎなのかは分からないが大抵の者は自身より下の人間を確認し見下す。

 なので私は彼らの格好の餌食となる。

 公爵令嬢でありながら


 『娼婦の娘』

 『Fクラス』

 

 皆が喜んで楽しげに話題にするだろう。

 廊下を歩く今も皆の視線が私に注がれ、囁かれているのが分かる。

 今までお茶会やパーティーに参加したことがなかった私だが、王族主催のパーティーであのように目立つ行動をした。

 私の顔や名前は一気に有名になった事だろう。

 思惑通りの視線に満足してしまい自分でも気づかず笑っていた。


「ここがFクラス……」


 Fクラスに到着。

 クラス内の印象は……

 静かに俯いて着席する者や明らかに不機嫌な者。

 そんな輩に絡まれないように存在を消す者。

 教室内は私の知るクラスとは違い、異様な空気だった。

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