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朝からうるさい

「……お嬢様……お嬢様……」


「んんっ……なぁにぃ?」


 朝、マイヤが起こすのは珍しい。

 普段は私が起きるまで声を掛けたりはしないのに今日は何かあったのか?


「お嬢様、お支度をして食堂へ」


「……少し早いんじゃない?」


 昨日あの男の襲来後直ぐに眠ったのだが、普段のように眠ることが出来ず。

 今もなんだか疲れていて、もう少し休みたい気分だ。

 どうせあの家族での食事は私が一番最後なんだから時間なんて決まってないのに。

 寧ろ、早く向かい彼等と鉢合わせる方が問題。

 なので、どうして今日は起こされたのか分からない。

 厄介者の私に予定なんて無いのは過去の人生でよく知っている。


「旦那様より『今日からお嬢様も一緒に食事の席に着くように』との事です」


「……へ? あの人達が食べているのを観ていろって事?」


「……いえ。お嬢様も一緒にお食事をだと思います……良かったですね」


 過去の人生にはそんな出来事は無かった。

 私があの人達と共に食事をすることになり、嬉しそうにするマイヤを眺める。

 今まであんな扱いを受けてきたのに、突然一緒に食事と言われても今の私は喜べない。

 昨日の今日で何故そうなるのか。

 あの人の思考回路は私には読めない。


「……後で一人で食べる」


 あの人達がいる食堂に向かうという選択肢は私には無く、再び目を閉じる。


「お嬢様……」


 悲しげなマイヤの声が聞こえたが、私は私の感情を優先すると今回の人生では決めている。


 コンコンコン

 

 ノックの音やマイヤの返事を遠くで感じるも、私は眠りの世界に行きたかった。


「……お嬢様……お嬢様……皆さんお待ちだそうです」


「んん゛ん……私はいつも通り一人で食べるからぁ……」


「……お嬢様……」


「んん゛……体調悪いから朝食は結構ですって伝えといてぇ……ほら、初めてのパーティーで熱を出したとか言えばいいのよ」


 嘘は吐いていない。

 あの男が夜中に襲来し寝不足なのは確かなんだから。


「……畏まりました」


 人の気配が部屋から消え、静かな日常に戻る。


 ドタドタドタドタ


 どうして足音はこんなにも響くんだろうか?

 私の部屋の前を通る使用人なんて限られているのに今日は特に煩く昨日を思い起こさせる。


 バタン


「いい加減にしろっ」


 あぁ、この男か……


「……ふざけているのかっ、起きろっ」


「……んっ……何ですか? 昨日の今日で体調が悪いんですが?」


「お前の体調なんてどうでもいい。折角朝食に呼んでやったのになんなんだお前はっ」


「私、公爵様一家のお食事に呼んで欲しいなんて願っておりませんよ?」


「……お前がそんな態度だから今まで呼ばれなかったんだろう」


 過去の私は真面目な良い子でしたよ?

 悪い人間になった途端呼ばれるって皮肉ですね。


「今後も態度を改める予定はありませんので、私は一人で構いません」


「……明日から食事は一緒に取る、遅刻するなっ」


「お断りします」


「いい加減にしろっ」


「なぜ急に態度を変えるんですか? 今まで私に見向きもしてこなかったじゃないですか? 公爵ともあろうお人が誰になんと言われようと己を貫くべきじゃないですか?」


「お前があんな醜態を曝さなければこんなことにはならなかったんだ。反省しろ」


「では、私を娼館にでも売り飛ばしたらいかがですか? 娼婦の娘の私には似合いの場所ですよね?」


 本当に娼館に売り飛ばされても構わない。

 もし何かあれば死ねば良い。

 今の私は死ぬことに恐怖はない。


「クリスティアナは娼婦ではないと何度言ったら分かるんだっ」


「娼婦と聞かされてきた私が今更そんなことを言われても信じる事は難しいです。今までの公爵様の私への接し方でも『娼婦の娘だからなんだ』と納得ができます」


「……それでもお前は娼婦の娘ではない」


 自身の行動は否定しないが、前妻が娼婦であるのは否定するなんて……


「そうなんですか……そうであったとしても、私が公爵様のご家族と一緒に食事する理由にはなりませんよね?」


「お前も公爵家の一人だ」


「今まで公爵様と一緒に食事したことなどございませんが?」


「……新しい家族が出来たんだ、お前も加わりなさい」


「私の家族は亡くなった母だけですので、結構です」


「……勝手にしろっ」


「それと、今後はノックをしてくださいね。寝巻き姿の女の部屋に許可なく入るのはまるで娼館ではないですか?」


 悔しかったのか一度足を止めるも、バタンと大きな音をたてて扉を閉めた。

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― 新着の感想 ―
ニルヴァーナの反撃が始まりましたね。家族が酷すぎます。
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