これから
「ニルヴァーナさん…まだ話していないことがある…」
客室に案内され休んでいると、ルディルが訪れた。
大事な話があると言うので二人でソファに並んで座るも、『大事な話』がどのくらい『大事』なのか……
「…王族以上の…隠し事…ですか?」
私だけでなく、誰に聞いても「王族でした」というのは凄い隠し事だったと思う。
当日ではなく、事前に心の準備期間がほしかった。
「ニルヴァーナは貴族社会から抜け出したいよな?」
ルディルの言葉から推測できる。
彼は王族で簡単に平民になれる存在ではない。
ルディルの家族と一緒に過ごした時間はほんの僅かだが、それだけでも家族仲は良好で彼らはルディルが平民になることを望んでいないのは伝わる。
私がルディルの足枷に…
「私は…貴族社会は少し…恥ずかしい事なんだけど…怖い…です」
「強要するつもりはない。俺も貴族社会は…」
「だけど…ルディルのお荷物にはなりたくない」
「貴族の社交をしないだけで、お荷物なんかじゃない」
「それでも…社交パーティー…出席…してみようかと…」
「…無理する必要はないんだ。俺もパーティーとかは参加しなくても良いと思ってる。王族って言っても第三王子で、王位争いとかも無縁だから…」
「私…ルディルの役に立ちたいの…パーティーやお茶会も…逃げずに、参加…してみようも思う」
「…平気か?」
「変わりたいの…いつまでも逃げてるのは…」
「そっか…ありがとう。本当はちょっと怖かった」
「ぇ?」
「婚約…断られるかと思った」
「婚約を?そんな事は考えていませんでした…」
婚約解消するならきっと、私よりもルディルの方がもっといいパートナーがいる。
こんな欠陥だらけの私なんかより…
「そっか…良かった」
「良かった?私が…断ると思ったんですか?」
「…貴族…王族には嫌悪感があるかと思って…」
「…あなたは、あの人達とは違います。過去から今まで貴族や王族には良い印象はありませんてした。たけどルディルが王族と聞いても嫌悪感はないし、ルディルはルディル。そんなルディルの家族は皆さん素敵な方でした」
「…嬉しいよ、そう言ってもらえて」
「ルディルの家族は理想的な家族で…羨ましかった…」
私はあんな幸せそうに食事をする風景を知らない。
「…俺とあんな家族…作りませんか?」
それって…その…プロポーズ…ですか?
「…はいっ、ぜひ…ぇっ…ぁっ…」
ルディルの綺麗な指に顎を取られると、ゆっくりルディルとの距離が縮まり唇が…
「まっ…待ってください」
ある言葉を思い出すと唇が触れる直前、顔を背けた。
「…嫌…だったか?」
ルディルの悲しげな声に再び顔を確認すると傷付いた表情をしていた。
「いえ…嫌じゃないです…ただ正式な婚約もまだなのにキスしたら、「ふしだら」って言われてしまいます」
私からしたらとても大事なこと。
もし、ルディルの家族に「婚約前にキスだなんて…」「なんてふしだらな女なんだ」と言われ婚約が白紙にだけはなってほしくなかった。
「ふしだ…あはっ…そんなの…二人の秘密にしたら大丈夫だよ」
「大…丈夫?」
ふしだらなんて言われたらルディルに迷惑が掛かっちゃうのに。
本当に大丈夫なのか不安。
だけどルディルがそう言うなら…大丈夫? なのかも…
「あぁ、二人だけの秘密」
「秘…密…」
なんて甘美な響き。
物語の悪魔に魅了されてしまう主人公の気持ちを分かった気がする。
「そっ秘密」
耳元で囁かれ、先程の続きのように顎に指を添えられゆっくりルディルの唇が近付き優しく触れる。
唇に全神経が集中したようにルディルを感じた。
その後、私達の婚約が発表されルディルの婚約者の座を狙っていた令嬢から厳しい視線を受ける。
やり直し後、あの男含めあの家族と対立したことで、令嬢たちとも逃げずに立ち向かった。
一人で強くなったとは思ってない。
お祖父様の存在は社交界でも私を守ってくれ、隣にはルディルがいた。
そして一年後。
ルディルは叙爵し侯爵となり、私は侯爵夫人として王族主催のパーティーでお披露目されたことでウェルトンリンブライド王国の貴族として認められた。
終わり
この度、書籍化の話をいただき修正中です。
こちらは初期設定を、そのまま投稿しております。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。




