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2話 次元戦争

 その日の夕食後。今日調べた情報を孫を含めた家族に知らせると、


「え、おじいちゃんと一緒に遊べない可能性があるの!? それって本末転倒だよー」


 案の定、孫はこの世の終わりみたいな顔をした。


「何か新しいゲームを始めるんですか?」


「ボトムダウンオンラインというゲームなんだけど、あんまり情報が出回ってない類のゲームでね。秋人君は何か知ってる?」


「ボトムダウン? 聞いたことないですね。由香里は聞いたことある?」


「そうねぇ、あまり耳にしないタイプのジャンルね。でも美咲がやりたいって持ってきたのよね? 除法の入手経緯はどうなってるのかしら?」


「うーん、これ言っちゃっていいのかな?」


 孫はどこかいいあぐねているようだった。

 誰かに「内緒にしてて」と言い含められているのだろうか?


「言わないと一緒に遊ぶのも厳しいと思うよ? 秋人君や由香里も心配するし、出所はきちんと把握しないとさ。何かあったときに責任の追求場所は絶対に必要になるでしょ?」


「う、それは確かに。若干、名前からして怪しさが滲みでてるんだけどさ」


 そう言って提示されたのは【株式会社幽刻修験堂】と言うものだった。

 検索しても引っかからない、不思議なメーカーだ。

 本当にこの世のものなのか、定かじゃない。


 だがゲームは実在していて、少ないなりに情報は出ている。

 単純に認知度が低い以外の何かがありそうだった。


「聞いたことある?」


「聞かない名前ね」


「検索かけてもヒットしないんだよ、不思議と」


「それ、メーカーとして大丈夫なの?」


「でもゲームはあるもん。ユーリがね、面白いから一緒に遊ぼうってログイン権を用意してくれたの! あたし一人だけじゃ厳しいからおじいちゃんの分もあればって無理にお願いして用意してもらったんだよ!」


「そのログイン権を確保するのって難しいのかい?」


 話を聞く限り、無理なお願いのように聞こえた。


「ううん? なんでもこのゲームの存在を認知するだけでいいらしいの。けどそれには条件があって」


 何かいいあぐねる孫の背中を押して、無言で続きを促した。


「それは掲示板に情報を出して、それをメーカーから問題なしとされなきゃダメらしくて」


「ゲーム内情報の制限があると?」


「うん、一度遊んだ上で、人を呼び込むための情報の開示。でもネタバレはダメらしくて」


「情報規制してるのに人を呼びたいとはまた行動が矛盾してるね」


「ゲームとしてはスキル系。これは特殊なモンスターを討伐するか、NPCのお願いを聞くことで入手できたりするらしいんだ」


「ステータスとかは存在しないの?」


「普通に一撃喰らうだけでアウトらしくて、あたしは回避特化型だから、きっと楽しめるだろうって誘ってくれて……これで遊ぶのダメ?」


「どうしようか? 私はそこまで束縛しなくても、美咲のやりたいようにやらせればいいと思ってるよ」


「でもお義父さんが一緒に見守れる可能性は著しく低いのでは、意味がありませんし……」


「ならば私が一度入り、掲示板に情報を出してログイン権を入手する。その時に秋人君と由香里を誘うよ。それで遊んでみてから危険かどうか判断してみては如何かな?」


「それだとおじいちゃんと一緒に遊べないじゃん!」


「だけど、それ以前にこれをパスしないとこのゲームで遊ぶのもダメって話になってるんだよ? 美咲はそれでもいいの?」


「やだ!」


「ならば今は我慢してくれ。おじいちゃんが情報を集めて、このゲームが危険じゃないことを証明してくるよ。その上で、これは集めた情報の中にあったものなんだが……」


 私は孫に向けて次元戦争の話をした。


「ワールドごとに手を組んだり、一緒に遊ぶイベントがあるの?」


「そうみたいだね。そのワールドで活躍したり、貢献したりすれば、MVPプレイヤーから任命されやすくなるみたいだ。なんだったらいっぱい活躍して、美咲がMVPプレイヤーになってしまってもいい」


「わっわっ、それじゃあおじいちゃんがMVPプレイヤーになったら?」


「その時は正式に美咲と遊べるね。敵だった場合は、真剣勝負だ。開催期間は数ヶ月に一回とかそれぐらいのスパンだ。それまでにどこまで活躍できるかの競争になる。美咲は私をがっかりさせないでいられるかな?」


「負けないよ!」


 目に星を輝かせて、やる気を充足した美咲。


「お義父さんはあの子を乗せるのがお上手ですね」


「今からこの調子ではあの子の将来が心配だよ」


「むしろお父さんが責任取るしかないわよー?」


「おいおい、勘弁してくれ」


 こうして私が一人、ボトムダウンオンラインの舞台へと旅立つことになった。


 はてさてどんなゲームなのか、美咲のことを言えないくらいに緊張したまま、私はゲームの始動させる。


 まだ見ぬ冒険に胸をドキドキさせながら、視界が開くのを心待ちにした。

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