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帰省

「今年も帰省するの?」

「ああ、もちろん。お前はまた、居残り組か?」


 今年も、夏季の長期休暇が近付いてきた。その度に交わされる彼女との会話。毎年のことだ。


「私はそうだね。今年も居残りかな」

「そっか。またお土産持ってくるから、少しの間待っててくれ」


 少し寂しそうな彼女の頭を撫で、肩を抱いてやる。これも毎年のことだ。そのくせ、お土産には大喜びするのだから、可愛いヤツだ。


 帰省する方法はいくつかあるが、俺はいつも、実家が用意してくれた乗り物で帰る。これのおかげで帰り道は快適だ。


 実家に着き、家族の歓迎を受け、その夜はご馳走でもてなされる。一緒に帰省してきた親族も大勢集まり、もう大宴会だ。みんな笑顔で近況や下らない話で笑い、酒を飲み、ご馳走を食べ、大騒ぎだ。


 午後10時を過ぎる頃には、半分ほどの親族は帰るが、俺たちのような遠いところから来た帰省組はもう少しだけ、静かに飲む。これから3日ほどここにお世話になるのだ。迷惑はかけられない。


 そして、実家周辺を散歩し、他に帰省した友達連中とつるんで狩りなどで遊び、夜になったら実家で家族や親族とまた宴会のようなものを催し過ごしていると、あっという間に帰る日だ。


 俺はまた、実家の家族や親族の見送りで、実家が用意してくれた乗り物で帰る。帰り道に、狩りで得た獲物の数を数える。俺が苦労して、海やプールに潜み、捕まえてきた獲物だ。


 全くこの時期は、海だプールだと、暑いからと無防備に泳ぎに来る獲物が多くて、こちらとしては嬉しい限りだ。盆で帰ってきたついでに、生者を水辺に引き摺り込んで、活きの良い魂を2、3個持って帰ると、非常に彼女が喜ぶ。


 あの世では生者の魂は珍味中の珍味だからな。しかも生者は、盆だろうがなんだろうが、時期も潮の流れも何もかも考えず、溺れたときの対策も知らずなので、入れ食い状態だ。今回も彼女は喜んでくれるだろう。


 実家に帰省し、お土産に生者の魂を持ち帰る。全く「お盆」とやらは素晴らしい。

 さて、来年は何人の魂を持って帰ってやろうか…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ひでえ、ご先祖様もいたものだ。これは家系? なんのひねりもない話だな、と思って読んでいたら騙されました。
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