表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌えない天使  作者: 黒羽
6/7

05 百合

いつもよりは過ごしやすくて、そよ風も吹いているその日、鈴に呼び出された。しかも、夜9時。


俺は8時40分過ぎに家を出た。待ち合わせは星宵中ほしよいちゅう。つまり俺らの学校だ。星宵中まで家から10弱。45分でも十分間に合う距離だ。俺は薄暗く人通りの少ない道を一人で歩いた。いくら電灯がついていても夜一人で歩くのはさすがに怖い。とはあまり思わないが、気分のいいものではない。鈴はこんな時間に呼び出して何を話すつもりなのだろう。俺が何か恨みでも買ったか?何か相談でもあるのか?それだったら昼間生徒会室でもいい。そう思い、その線は消された。というか、こんな時間に中2の女の子が出歩いてちゃだめだろ。そういう俺も生徒会長なんだけど。と、その時後ろから声をかけられた。桜だ。


「あれ?蓮じゃん。こんな時間に何してんの?」


桜はコンビニの袋を片手に下げている。どうやら、突然甘いものが食べたくなったらしくプリンやら菓子パンやら入っている。いい忘れていたが、桜はピアノも好きだが、それと同じくらい甘いものが好きなのだ。


「桜こそ」

「俺は甘いもの、食べたくなったからコンビニいってきてその帰り」


正解。やっぱりな。というか鈴に呼ばれていくというのは言ってもいいのだろうか。いや、言わないほうがいいだろう。鈴はきっと俺以外に聞かれたくなくてこの時間に呼び出したのだろう。俺は「散歩」と嘘をついた。桜はそれで納得したらしく「じゃ!」といって嬉しそうに去っていった。

俺が学校についたのはわずか数分後。


*       *        *


俺が学校に着くと鈴はもうすでに校門の前に立っていた。鈴は俺に気づくとこちらへ歩み寄ってきた。


「よびだして、ごめん」


俺は「別に大丈夫」と答えた。俺と鈴はその場にしゃがみこみ、用件を聞いた。鈴は少し躊躇うような表情をしていった。


「蓮、私が歌えない理由について知りたいと思ってるでしょ?」


何をいきなり・・・。そう思ったが鈴は真剣な眼差しでこちらを見ている。俺は首を横にふった。


「嘘。ホントは知りたいと思ってる」


鈴は睨むように俺をみた。俺はため息をついて、正直に言い直した。


「あぁ。知りたい」


「うん。話そうと思って今日は呼んだ」


鈴は少し微笑んだ。それからゆっくりと口を開いた。俺は黙ってそれを聞いていた。鈴が言っていた事はこうだ。鈴達天使が歌えないのは聞いた人間を不老長寿にしてしまうからなのだという。時には死にかけの人間を助けられる事もあるとか。掟で歌う事を禁じられた天使達は歌そのものを忘れてしまった。鈴を除いて。


「鈴はどうして歌を忘れなかったの?」


俺が尋ねると鈴はそれはねと話し出した。


「私に双子の弟がいるって知って一緒に歌いたかったから」


でも掟には逆らえないといった鈴は悲しげだった。聞かないほうがいいかなと思っていたら鈴は知りたそうにしていた俺に気づいたらしく、柔らかく悲しそうに微笑んだ。


大天使様かみさまも酷いよね。私達を引き離して、また廻り会わせたのに一緒に歌っちゃ駄目なんて」


鈴は一息ついて続けた。


「でも逆らえないの。逆らったら蓮と一緒にいられなくなる」


鈴の話だと、掟を破り歌った天使は記憶と力を失い、二度と天使には戻れなくなるという。


「これだけ。話したかったのは。聞いてくれてありがとう」


鈴はそういい、立ち上がった。送ってくよと俺も立ち上がると、すぐそこだからと歩き出してしまった。俺はその後姿を無言で見送り、見えなくなったところで帰り道についた。


鈴と歌いたかったな・・・。鈴も歌いたがっていた。どうして俺と鈴は一緒に歌えないの?そんなことばかり考えていると盛大なクラクションの音が響き渡る。視界がライトの光で覆われる。


俺の意識はそこで途絶えた。


百合の花言葉・・・貴方は私を騙せない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ