02 紫苑
今回は双子を中心に書いていきます
「この子蓮に会いに来たんだって」
・・・誰?確かに俺に似ているが俺は知らない。少女は柔らかく微笑んで俺の前に歩み寄る。間近で見るとすげー可愛い。
「ねぇ、ホントに忘れちゃったの?」
そんなこと言われても・・・。記憶にないから仕方がない。いいかけた時頭の中に2人の男の声が響く。
『双子か』
『はい。天使になれるのは1000年に一人と決まっているのに・・・』
『掟を曲げるわけにいかん。一人は生まれる前に天界に連れて行く。だが・・・』
『だが?』
『我々もそこまで酷くはない』
『といいますと?』
『2人がまた廻り会えるように・・・』
『2人を日本では珍しい金色の髪にオッドアイにするんですね』
『遠い未来、この哀れな双子が廻り会えますように・・・』
声はそこで途切れた。どちらも聞いた事のない声。何故今聞こえたのか俺にはわからない。
「その声は大天使様とその側近のもの」
少女が口を開く。桜や亜梨雛達は訳がわからないという顔をしている。
「―――り、ん?」
気がつくと俺はそう口にしていた。自分でもわからないうちに。どうしてその言葉がでたのか、分からない。否、本当は分かっていた。この名前を俺は知っていたんだ。
「そう。私は鈴。貴方の双子の姉」
少女―――鈴は告げた。桜達は動揺しているが、俺は驚かない。知っていたのだから。忘れていただけだから。
「貴方が忘れていたのは仕方ない。でも今思い出したのだからそれでいい」
多分忘れていた理由は、俺が生まれる前だからだ。でも、この世に生まれる前に刻まれた記憶は残っている。忘れてしまうだけで魂に刻まれた記憶は永遠に在る。前世もその前も。
それでも疑問は残る。何故その記憶を俺が思い出せたのか。俺はこの質問を鈴に投げかける。
「私と貴方が双子だから。そう決まっていたから」
そうとしかいえないと鈴は言った。決まっていた?知るか、そんなの。俺は自分の意思でここにいる。俺が髪を染め直さなかったのも本能では鈴のことを知っていたからだ。俺が髪を切らなかったのも鈴に会えることを願っていたからだ。俺は本能に無意識の内にしたがっていたんだ。だから今ココに居る。・・・多分。
「思い出してくれてありがとう・・・」
紫苑の花言葉・・・追憶、私を忘れないで
蓮が髪を切らなかったのは願掛けしてたからです