閑話⑭ 『そのころ伯爵令嬢は《決断》』
お待たせいたしました(^▽^;)
これにて閑話は残すところ1話(∩´∀`)∩
本編はおそらく3~4話になると思います。
嵐のように捲し立て、疾風のようにマリーは屋敷へと引き返してしまったマリーを茫然と見送っていたディッケルに中年の男が近づいてきた。
「団長」
「デイモンか……皆は無事か?」
デイモンと呼ばれたのは見た目が50近くに見える男で『爪弾き者の巣』の副団長を務めている男である。実年齢は40歳なのだが茶色だった髪が事情で白髪になってしまったため老けて見えるのだ。
「ガルフだけ屋敷に残してある。後は全員無事だ」
ガルフという団員も異能持ちである。彼の能力は異様に気配を感じさせないというもので、偵察や密偵などの仕事を割り振られることが多い。
「恐らくコラーディンは俺たちに何らかの罪を着せてくるだろうな」
「でしょうね」
ディッケルの予測は貴族のやりそうなことだとデイモンも頷いた。
「ガルフの帰りを待って、王都を出ましょう」
「そう……だな」
デイモンの提案は至極真っ当だ。ディッケルもそうすべきだと思う。だが、マリーのことが気になって素直に首肯できなかったのだ。
そんな煮え切らないディッケルにデイモンは首を傾げた。
「どうかしたんですか?」
「いや……ひとまず皆と合流しよう」
気にはなるが、今はどうすることもできない。
──ガルフの持ってきた情報次第だな。
ディッケルは仲間と落ち合い今後の方針を決めることにし、ディッケルとデイモンは非常時の場合に備えて決めていた隠れ家へと急いだ。
場所はスラムにある廃屋。浮浪者などもたむろしていたが、この程度の不衛生や治安の悪さは戦場を経験している傭兵たちにとって何も臆するところはない。
2人はそんな周囲の怪しげな者たちを無視してずんずんと廃屋内を進む。
団員たちが占拠している部屋に2人が入ると、団員たちが一斉に2人に視線を向けた。
「団長!」
「どうでした?」
「決裂だ」
騒ぐ団員たちににべもなく返答するディッケル。
「ちっ!あのくそ親父が」
「払いも渋いからせいせいするぜ」
「だけどマリーちゃんにもう会えないのか〜」
「巨乳をもう拝めないんだな」
「歩くたびに揺れるんだよなぁ」
「いい揺れだったろ?」
「はい!サイズはどれくらいなのですか?」
「Fカップだな」
「お前らなぁ!」
悪巫山戯の過ぎる団員たちにディッケルが青筋たてて一喝すると団員たちはわあっと散った。どこか他の傭兵団のような殺伐さとは無縁の集まりで、その様子を傍で見ていたデイモンは溜息をついた。
「で、これからどうするの?」
それを我関せずと眺めていたレミーが相変わらずの淡々とした口調で尋ねてきた。
「そんなのさっさと王都からとんずらに決まってんだろ」
「副団長には聞いてない」
何を馬鹿なという口調のデイモンにレミーはばっさり切り捨てる。
「お前なぁ……」
「まあ落ち着けデイモン。レミーもあんまり煽んな」
デイモンは熱り立ち、ディッケルはそれを宥めながらレミーを窘める。
「これからについてはガルフの報告を待ってから決める。各自それまで待機だ」
待機とは休憩の事ではない。その言葉に団員たちは次に備えて各々武器や荷物などの点検を行い始めた。みな手を動かしながらわいわいとだべり始める。
「この国ともこれでおさらばなんかねぇ」
「雇い主はクソだったが、いい国だったよなぁ」
「飯は旨いし」
「みんな明るいし」
「女は美人が多いし……」
団員たちは次第にしみじみと、しんみりと、ポツポツ語りだす。
「マリーちゃん可愛かったなぁ」
「ホントになぁ」
「オレ初めは高慢ちきな貴族令嬢だと思ってたんだ」
「ああ分かる分かる」
「美人だけど顔キツいし」
「最初ツーンってしてたしな!」
「そうそう!『貴方たち!汚いですわ!汚れたまま屋敷を彷徨かないでくださいまし!』」
「あったあった!そんで風呂に叩き込まれたんだっけ?」
「最初は高飛車な女だって思ったけど」
「ツンツンしながら文句言って、でも世話焼いてくれたなぁ」
「もう会えないのかぁ」
団員たちのしんみりした雰囲気。
バァン!!!
その空気を破るように扉が乱暴に開けられた。
ザッ!
先程まで気の抜けた会話をしていたはずの団員たちの表情が一瞬で鋭いものに変わり、いつの間にか全員が武器に手をかけ警戒体制をとっていた。
「た、大変だ!」
「なんだガルフかよ」
乱入してきたのが密偵をしていた団員の1人と分かり全員が緊張を解くが、そのガルフは慌てた様子で叫んだ。
「なんだじゃねぇ!大変なんだ!」
「まぁたマリーちゃんの着替えを覗こうとしてバレたのか?」
「マリーちゃん異様に勘がいいから」
「まあこいつだけいい思いさせないで済むんだがな」
「オレ覗き成功してたら絶対殺すマン!」
「それな!」
「禿同!」
「テメェぶっ殺す!」
団員たちの一斉の非難にガルフはたじろぐが、その間にディッケルが割って入った。
「お前ら落ち着け!何があった?ガルフ報告しろ」
「そ、それがあの親父、マリーちゃんを拘束しやがって……」
ガルフは屋敷内に潜伏していた時に起きたことの説明を始めた。
団員たちが屋敷から退避し、その後を追うようにディッケルがマリーを連れ出していたころ、ガルフは傭兵団『黄昏の死鴉』の連中に紛れ込んでいた。
ディッケルたちを追って人員が屋敷の外に割かれた段階で、ガルフは手薄になった内部を探索し始めたのだが、そこにマリーが戻ってきてコラーディン伯爵と口論になったらしい。
壁越しの会話でよく聞き取れなかったようだが、
『マリー、お前はリュシリュー侯爵令嬢ともルミエン男爵令嬢とも仲がよいそうだな』
『人質にちょうどいい……』
『自分の娘を人質にするなど誰も信じん……』
『娘など政治の道具にすぎん……』
『出来損ないがやっと役に立つ……』
といった話す声が聞こえたそうだ。
「お前なぁマリーちゃん助けろよ」
「テメェおめおめと逃げるかフツー!」
「やっぱり絶対殺すマン!」
「団長じゃあるまいし俺1人じゃ無理だろ!」
理不尽な団員たちの暴言にガルフもキレた。
「お前ら静かにしろ!」
そんな不毛な言い争いに副団長のデイモンの叱責が飛ぶ。
「重要なのは貴族の娘っ子のことじゃねぇ!あいつらが俺たちをどう扱うかだ」
「おいおい副団長!マリーちゃんを見捨てるってーのか?」
「マリーちゃんの助けを呼ぶ声が聞こえる……」
「聞こえるぞ!私にもマリーちゃんの声が聞きえる!」
「絶対助けるマン!」
「バカかお前ら!ここで助けに行ったら王都から脱出できん。妄言吐いてないでさっさと準備をしろ!」
「だ、だけどよぉ……」
団員たちもデイモンが正しいのは理解していたが、どうにも煮え切らない。
「なあ団長。ホントに助けに行かないのかよぉ」
目を閉じ沈黙するディッケルに恐る恐る団員の1人が尋ね、それを皮切りに他の団員たちも騒つき始めた。
「いい子だよなぁ。俺たちみたいなはみ出しモンにも気安く声かけてくれるし……」
戦場の負傷で顔に傷のある団員。
「腹すかせて台所で食いもん漁ってたのを見つかった時は笑って見逃してくれたんだ」
少し肥満気味の団員。
「オレさぁ、前に怪我した時マリーちゃんに手当てしてもらったことあってさ」
「あったなぁ。マリーちゃん不器用でけっきょく俺が代わったけどな」
もう完治している腕の包帯を摩る団員。
「屋敷の使用人どもに顔のことで笑われた時は真剣に叱り飛ばしてくれたっけ」
生まれつき鼻の奇形がある団員。
いったん思い出を語りだすと次々にエピソードが出てくる。全員が一斉にディッケルを見た。ディッケルはその気配に閉じていた目を開け団員たちを見回した。
「デイモンの言うように助けに行けば俺たちは捕まる可能性が高い……」
「かまうもんか」
「受けた恩は絶対返すマン!」
「お前そればっかだな」
「だけどその通りだ」
「ああ、ここで逃げたら男じゃねぇ」
「まったくだ!情けねぇ姿を晒したくはねぇ」
「この先ずっと惨めな思いするくらいなら、ここで一旗揚げようぜ」
「どうせ俺たちはロクな死にかたしねぇ」
「戦場で散るもここで散るも死ぬことにゃ変わらん」
「だな。どうせ死ぬなら可愛い娘を助けて死んだほうがマシだ」
「マリーちゃんのためなら死ねる!」
ディッケルは団員たちの傭兵らしくない発言に溜息をついた。
「揃いも揃ってお人好しどもめ」
「何言ってんだ。俺たちみんな団長のお人好しに助けられたんだぜ」
「そうそう」
「団長が一番のお人好しだろ」
ディッケルが苦笑いすると団員たちが笑い出した。
「お前らいい加減にしろ!全員討ち死にするつもりか!?」
「いいじゃねえか」
「オレたちゃどうせ長生きできねぇ稼業だ」
「そうだそうだ!」
「面白おかしく生きて、好きに死んで何が悪い」
「もともと俺たち全員、団長がいなきゃ死んでたんだ」
「副団長だってオーヴェルニで瀕死のところを団長に助けられたんだろ?」
「どうせ拾った命だ。いまさら惜しむことなんてあるかよ」
あまりにあり得ない状況にデイモンが止めに入ったが、団員たちの口撃に言葉に詰まる。
「レミーはどう思っているんだ?」
ディッケルはずっと黙ったままの金髪の少年の意見を尋ねた。
「あの人は苦手……だけど助けにいくべき」
レミーの発言にディッケルは驚いた。
「珍しいな。レミーが撤退を推奨しないのは……能力か?」
「能力とは別……でも助けに行った方がいいような気がする」
レミーは気怠げな目をディッケルに向ける。
「そうしないとヤバい気がする」
「ふむ……」
ディッケルは顎を撫でて考え込んだ。
──『察知』の異能ではない……だが、今まで能力で危機を脱してきたコイツの本能なのかもしれないな……
「……やるか?」
「おお!」
「話せるぜ団長!」
「野郎どもケンカじゃ~!」
活気付く団員たちにデイモンの顔は苦り切った。こうなってはもはや止めることはできない。
「だが助けるにしたって方法があるのかよ?特攻玉砕は嫌だぞ」
最後の抵抗とデイモンはディッケルに問い質した。問われたディッケルはマリーの言葉を思い出しながら、にやりと不敵に笑う。
「なあリリーエン・リュシリューとルルーシェ・ルミエンを知っているか?」
アンナ「なんですか、このマリーの愉快な仲間たちは?」(。´・ω・)?
ルル「一応優秀な傭兵団との設定なんですが……」(^▽^;)
アンナ「完全にマリー親衛隊と化していますが……」(。-`ω-)
ルル「くっ!何故マリー人気……胸ですかぁ!やはり胸の大きさなんですかぁ!」(ꐦ°᷄д°᷅)
アンナ「Fカップらしいですからね」(・ω・)
ルル「ぐぁ!なんですか嫌味ったらしく揺らしおってぇ!!!」ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!
アンナ「いい揺れだろう?」 (ΦωΦ+)
ルル「はい……モノホンなんですか?」(TдT)
アンナ「モノホンだな」( -`ω-)✧
ルル「(☍﹏⁰)。」




