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第39話 『男爵令嬢は真実に至る』

もうどうしよう……

2話で終わらせる予定のエルゼとの対談が終わらないorz

また1日に10万字使うみたいなことになったら(; ・`д・´)

 エルゼは相変わらずのにこにこ顔。イダーイはこの部屋に入ってから終始その顔に胡散臭い微笑を貼り付けていたが、リリの顔は真っ青になり、アンナの表情はいつもの氷よりも固いものになっていた。


「え?だってルルーシェは私……」


 辛うじてルルは疑問を呈した。ルルにはイダーイの言うことの意味が全く理解できなかった。


「そうですね。この10年ほどのルルーシェ・ルミエンは貴女ですね」

「10年……」


 ルルの不安は最大値に達し、そわそわしだし助けを求めてアンナに視線を送ったが、アンナはルルの視線に気付いても氷の表情を変えなかった。次にリリに目を向けたが、リリは泣きそうな、悲痛な顔で黙ってルルを見つめるだけだった。


──リリ様の中にルルーシェの魂……で、でも私がルルーシェ……なのよね?


 ルルは混乱した。


──だってお母さんもお父さんもノノもネネも……みんな私の家族……


 ルルの混乱にイダーイは特に気にも留めた感じはない。


「ふむ……ルルーシェ嬢はご存じない?では順を追ってご説明いたしましょう」

「やめて!」


 リリは堪らず叫んだ。


「お願いですエルゼ様……もうこれ以上は……」

「あらあらリリちゃんどうしたのかしら?」


 懇願するリリにエルゼは変わらずにこにこ顔だ。そんなエルゼを、敬愛する王妃をリリは睨みつけた。


「これ以上ルルにその話をするのはお辞めください!」

「あらあらリリちゃんは少しルルちゃんに過保護ではなくて?」


──エルゼ様はルルを使って私を揺さぶっている……その狙いは?


 分からない。だからリリにはエルゼに抗う術が無かった。


「お願いします……」


 ルルは優しい娘だ。これを知れば絶対に傷つく。だから、リリはエルゼに懇願した。


「お願いします。私……何でもします。エルゼ様の言う通りに何でも。ライル様との結婚も厭いません。王太子妃教育も頑張ります。次期王妃としての自覚が足りないと仰るならもっと努力します。だから……」

「リリちゃんはやっぱりメイの娘ねぇ。みんなから黒鋼と呼ばれる一見して強固で冷徹そうに見える仮面の下はトロトロに甘くてボロボロと簡単に崩れる砂糖菓子みたい」


 エルゼは今にも泣きそうなリリを見て冷淡に嘲笑い酷評した。


「表面をいくら取り繕っても中身は情にも涙にも脆いお人好し」

「私のことは何と言われようと……お願いします。本当に私なら何でもします」


 リリの今まで誰も見たことのない潤んだ表情。それを見てルルもアンナでさえも驚いた。ただ、その中でエルゼはまるでリリを品定めするかのようにスッと目を細めた。


「何でも?それじゃダメなのよ」


 エルゼにバッサリと斬られてリリは茫然とした。


「王太子妃教育?ライルとの結婚?次期王妃としての自覚?確かにどれも重要だけれども……ダメなのよ。お願いを聞くからっていうのじゃぁね」


 エルゼはルルに視線だけ寄越すと、その威にルルはびくりと体を震わせた。


「エルゼ様、あまりルルを虐めないでください」

「あらあらそんなにルルちゃんが大事?」


 リリはこくりと頷く。


「どうしてかしら?出会ってまだ日が浅いでしょうに」


 くすりと意地悪く笑うエルゼ。


「もう一つの魂の影響かしら?」

「どう言う事何ですかぁ!」


 ルルが堪らず叫んだ。周囲を見れば、どうやらみんな何かを知っているようで、ルルは1人だけ話から取り残されていると感じた。


「みんなは何を知っているんですか?リリ様は……リリ様は私に何を隠しているんですか?」

「ルル……お願いだからもう屋敷へ戻って」

「ここまで思わせ振りなこと聞かされて話さない方が残酷じゃない?」


 エルゼはにこにこ顔でルルに向くと「どうする?」と話を聞くか聞かないかの意思を確認した。


「聞きます……聞かせてください」

「ルル……」


 リリはもう何も言えなかった。エルゼは目でイダーイに話の続きを促した。


「では……まず魂魄置換についてですが……」


 イダーイの話では魂魄交換は不完全で誰でも自由に交換できるものではなく、様々な条件が揃わないと行使できない実用性が低い魔術らしい。


 次にイダーイは魂魄置換の被術者の条件について説明を始めた。


 1.まだ魂魄と身体が上手く定着していない幼少期までの者

 2.お互いに膨大な魔力保持容量を持っていること

 3.お互いの魂魄と身体の親和性が高いこと


「身体は魂魄と密接に関係しています。成長していると魂魄置換しても安定せず直ぐに元に戻ってしまうでしょう」

「魔力保持容量が必要な理由は何ですか?」

「ルルーシェ嬢は良いところを尋ねられる。この魂魄置換は魂に大きな負荷をかけてしまいます。何せ他人の体に無理矢理に別の魂を移植するのですから。言うなれば……」


 イダーイは違う形のカップをテーブルに並べると、片方のカップにカップと同じ形に切り取ったケーキを入れた。


「カップが体でケーキが魂です。これを別のカップに入れることは可能ですが形が変形してしまいますよね?」

「その変化が魂への負担と言うことですねぇ」

「その通りです。そして、魂の強さは保有する魔力の大きさによるのです」

「つまり魔力保持容量の大きな強靭な魂魄でなければ術に耐えられない……」


 ルルはブツブツ呟きながら考え込んだ。


「そうか……お互いの魂と器が似ている、つまり親和性が高い方が負担が少なくなるから成功率も上がるんだ。そうなると魂と器は相関性があるのだから魔力保持容量の大きさがある程度近くないと……あるいは魂魄が器に合わせて柔軟に変形できるなら……だからまだ未熟な幼少期でしか……だけど私とリリ様は既に成長して……」

「素晴らしい!僅かな情報でそこまで考察できるとは」


 イダーイの賞賛の声にルルははっと顔を上げた。


 にこにこ顔のイダーイだったが、その目は獲物を狙う猛禽類の様に鋭く、ルルは誤魔化すように曖昧に笑った。


「ふふふ。話を続けましょうか」


 イダーイによれば魂魄置換の魔術を行使する必要な条件があると言う。


 1.膨大な魔力を必要とするため、術者はかなりの魔力保持容量を必要とすること

 2.被術体同士が近くにいること

 3.遠隔の場合は依代を必要とすること


「魔力量に関しては過去の記録ですので、魔術言語が新たに発見されていたり、魔術構文の効率化が進んでいれば少なくて済むかもしれませんが、当時は王宮魔術師が数人がかりで術を行使したそうですよ」

「王宮魔術師でも……」


 かなりの大規模な魔術となることが想定される。


──だけど私やリリ様クラスの魔力保持容量があれば1人でも行使できるんじゃ……


「それから魂魄を置換する対象同士が近くにいることが望ましいのですが、今回のように離れた場所でも術を行使するなら依代となる肉体の一部が必要となるでしょうね。そうしなければ肉体から離れた魂が、どの肉体へ入り込めばよいか分からなくなります」

「依代と言うよりは目印と言うべきではないのですか?」

「ふふふ。ルルーシェ嬢は中々に賢くていらっしゃる」

「それでその依代はどんなものなんですか?」

「よい質問です。魂と肉体を結びつける根幹となるものが望ましいとされています。血液などが良いと言われていますが、はっきりとはしていません。過去の動物実験では体毛などだと数百から数千本は必要となるみたいですね」

「それじゃあ今回の魂魄転移の依代はどこから……」


 幼少期でしか成功しない術……魂魄と身体の親和性がどうして分かっていたのか……リリ様はともかく私の魔術保持容量がどこから漏れて……そもそも依代はどこから入手を……それに10年前からってどういう意味……


 ルルは思考の海に沈んで行く。そして導き出される結論は……


──待って!待って!待って!それじゃあリリ様の2つの魂魄って……私が5歳以前の記憶がないのは……私が……私が……


「賢い貴女ならもうお分かりですよね。幼少期でしか成功例の無い魂魄置換がどうして10代の貴女がたで成功したのか?リリーエン嬢の相手に何故ルルーシェ嬢が目を付けられたのか……」


 にこにこ顔を向けるイダーイに対してルルは真っ青になった。


──みんな……みんな……分かっていたんだ。だからリリ様は私のために……


 ルルは涙ぐみながらリリに顔を向けたが、リリは両手で顔を覆って俯いていた。


──私はバカだ。せっかくリリ様が私のために……私を守ろうとしてくれていたのに……


「わ、わ、私バカだからぁ……よ、よく分からないですぅ」


 それは真実から目を背けるための言葉。

 それは事実を認めたくないための言葉。

 そして全てを知ろうとした己の愚かさを呪う言葉。


 だけどルルの声は震えていた。

 どうやっても理解したことを誤魔化しきれない。


「おやおやご謙遜を。僅かな説明だけで魂魄置換の本質を見抜かれるだけの洞察力をお持ちなのに……」


 にこにこ笑うイダーイがルルには死神のように思えた。


「魂魄魔術の説明は終わりです。そこから導き出される今回の事件の真相について私からお話しましょう」


 それはルルにとって絶望を知らせる言葉……


アンナ「今回のルルは偽物ですね」

ルル「何をおっしゃるアンナさん!」

アンナ「いえ、今目の前にいるルルと上のルルが同一人物とは思えません。よって今回のルルは偽物です。はいQ.E.D.」

ルル「アンナさん!Q.E.D.というのはラテン語『Quod Erat Demonstrandum』の略で『かく示された』とい言う意味でぇ、数学などで『証明終了』で使用されるのですぅ!そんな根拠のないQ.E.D.なんてありません」

アンナ「ちっ!相変わらず五月蠅いですね。このウザさは間違いなく本物のルルです。そして上のルルは賢過ぎるし話し方が普通になっています偽物ですね。はいQ.E.D. 」

ルル「ぐぬぬぬぬ!全く論理性に欠ける解答なのに何故か否定できません!」


誤字脱字文章ミスなど教えてくださると助かります。

見捨てず読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] とうとう、知られてしまいましたね。 これが吉と出るか、凶と出るか……。
[良い点] つぎつぎと移り変わる、 予期せぬ展開。 なんだか熱いですね。
2021/08/11 15:15 退会済み
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