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第37話 『侯爵令嬢は王妃に謁見する』

遅くなりました!

まだ見捨てないで(´Д⊂ヽ

絶対にエタらせはしないから!(>_<)

 橄欖(かんらん)宮へ向かうリュシリュー家の馬車の中、リリとアンナが黙って顔を突き合わせている。見つめ合う甘い雰囲気からは程遠い、厳しい目のリリとその視線を無表情に受け止めるアンナ。


 ピリピリとした2人に耐えがたい緊張感を強いられてルルは隅で縮こまった。


──何ですか!何ですか?何なんですか!?2人が醸し出すこの緊迫感は!?


 馬車の中は狭い。


 逃げることは叶わず、いつになく怒っている感じのリリと、いつもより冷えた氷の無表情のアンナにの2人にルルは怯えた。


──くっ!かくなる上は……


 鍛えた必殺技『黙っていれば美人令嬢』発動!


 ルルは黙ってニコニコ笑って空気になった。

 だって怖くてそれしかできないもん。


「ルルも連れて行くのですか?」

「王妃さまよりの召喚でございますので」

「……」


 リリの顔がより険しくなる。視線だけで人を殺せそうなくらいの鋭さだ。はっきり言ってルルは自分が対象だったら確実に死ねたと思った。


 しかし、その視線を受けてもアンナはいつもの無表情。


「ねえアンナ。これから魂魄に関する魔術研究者に会うのよね?」

「はい。そのように伺っております」

「おそらくエルゼ様はこの事件に終止符を打つつもりなのよね」

「……」


 アンナは答えず沈黙したが、リリにはその沈黙こそが肯定だと答えていると理解した。


 この事件に関して、リリには2つの懸念がある。


 1つはマリアヴェル・コラーディンのこと。

 今回の黒幕はマリーの父ゲルハルト・コラーディン伯爵で間違いないだろう。おそらくゲルハルトの陰謀はアンナのみならず王家にも筒抜けだろう。それは、エルゼの言動から間違いはないと思われる。これから謁見するので、そこははっきりするだろう。


 ここで対応を間違えればゲルハルトは勿論のことマリーも縁座で処刑される可能性がある。エルゼとの交渉は慎重を要する。


──絶対にマリーは死なせません。


 もう1つ……それはルルのことだ。


 リリは自分の中にある2つの魂魄の意味にもう気づいている。

 自分の中にどうして2つの魂魄が混在しているのか。

 ルミエン家に懐かしさを感じたのは何故か。

 アンナにあってルルには無い転生前の記憶の意味。

 自分とルルが罹患した流行病。


 魂魄置換について魔術研究者の話を聞けば、リリの予想の裏付けになる。

 そして、それがリリの予想通りならばルルは……

 このことはルルに教えない方がいいような気がした。


 リリはちらりとルルを見た。その視線に気がついたルルは引き攣った笑みを浮かべた。


 こう見えてルルは繊細な娘だ。

 魂魄置換の真相を知れば傷つくのではないか?


 ルルはいい()だ。リリとしては傷付けたくはない。


「アンナ。やはりルルは置いていくべきです」


──え!?私置いてかれちゃうの?


 リリの発言にルルは微笑を保てず、唖然とリリを見つめた。そして、それはアンナも同じようで、眉が僅かにピクリと動いた。


「……王妃様の召喚です」

「私だけではどうしてもダメ?」


──どういうこと?私がいちゃまずいの?


「どうしてそのような事を……ルルも魂魄置換の当事者なのですよ」

「当事者だからこそよ。ルルには知らないままでいて欲しいの」


 ちらりとルルを見れば、リリの発言の意味を計りかねて小首を傾げていた。


「王妃様はルルのことを気に入っていらっしゃるご様子でした。悪いようにはしないかと」

「エルゼ様は国母なのよ。最終的には私やルルよりも国を選ぶわ」


 リリはそう言うと寂しそうな目でアンナを見つめた。アンナはその視線に少したじろぐ。


「アンナももう全てを知っているはず……それでも大丈夫だと言えるのね?」

「私はリリ様に危害が加わるような真似は致しません」

「私はルルのことを言っているのだけど……」

「……」

「ねえアンナ……貴女を信じていいのよね?」


 馬車の中に気不味い沈黙が訪れた。


──は、早く王宮に到着してぇ!


 リリとアンナはそれから口を開くこと無く、ルルは耐えかねて心の中で絶叫した。


 そのルルの祈りが天に届いたわけではないが、間もなく馬車は城門にまで到着し、リリの来訪と目的を告げた。


 特に咎められることもなく城門を通されればそこは王族の領域。王族と城勤めでない限りは招かれた者以外には入ることの許されない空間。同じシュバルツヴァイス王国にありながら他から隔絶された絶対不可侵の区画。


 そんな場所にちょっと前までリリは当たり前のように出入りしていた。だが、ルルの体になってからは初めて。


 この橄欖(かんらん)宮もなんだか懐かしい。


 アンナに先導され、リリはルルと並んで宮殿の中を歩く。


 ルルはいつも穏和な笑みを絶やさないリリの表情が固いことを不思議に思った。


──リリ様が緊張してる?


 珍しいと思った。ルルから見てリリは泰然として、いつも笑顔で余裕のある姿しか思い浮かばない。


 エルゼの待つ茶室に案内され、リリを先頭に入室すると、テーブルでは既にお茶を楽しみながら3人を待つエルゼがいた。


 リリは普段通りのカーテシーでエルゼに挨拶をする。


「エルゼ様……ご無沙汰しております」

「2週間と経っていないっていうのに久しぶりって感じね」


 いつも通りにこにこ顔のエルゼに対してリリはいつもとは違う凍った表情。


「エルゼ様にはお変わりなく……」

「他人行儀ねぇ。いつも通りエルゼちゃんでいいわよ」

「……王妃様。本日はお招きいただき恐悦至極に存じます」

「……あら、随分とお冠ねぇ」


 リリの対応に、笑顔のまま目を細めるエルゼ。表情は笑顔のままなのだが、その眼光は周囲の者の心胆を寒からしめるほどに鋭い。


「まるで喧嘩でもしにきたみたい」


 その声音も温度が幾分下がったようにルルには思えた。


 だが、リリは全く動じることなく、真っ向からその視線を受け止めた。


「それとも本気で私とやり合うつもり?」

「エルゼ様の出方しだいでは……」

「ふーん」


 淑女にあるまじき腕組み、不敵な笑いを浮かべリリを睥睨する


 リリはそれでも怯まない。ルルとマリーの未来がかかっている。引き下がるわけにはいかない。


──ひ、ひえぇぇぇ!


 その2人の言い合い(バトル)を2人に挟まれて間近で見せられているルルは内心戦々恐々だ。


「エルゼ様は全てをご存知だったはずです」

「全て?何のことかしら」


 鋭く切り出すリリにエルゼはすっとぼけた。だが、リリはその程度で諦めるほどヤワではない。


「魂魄置換のことも、その黒幕がコラーディン伯爵であることもご存知でしたね」

「あら私が?どうしてそう思うの?」


 厳しい顔付きのリリとは対照的にエルゼは悪戯っ子のような笑みを浮かべて楽しそうだ。


「私とルルの魂魄置換が行われた次の日、入れ替わっていることに直ぐお気づきになられたとか」

「それならメイも同じでしょ?」

「ええ、ルルが迂闊にも『アンナ()()』と呼んでしまったそうですから」


──あ!あれってそれでバレたんだ。


 今になって自分の迂闊さに気がつくルルであった。


「ですが、エルゼ様の前ではそうではなかった……アンナから話は聞いておりますよ」

「そうねぇ……ルルちゃんが間抜ケフンゲフン、可愛かったから気がついたのよ」


──間抜けって言った!間抜けって!


 ルル涙目である。


「まあ、ルルがまぬ……迂闊なところがあるのは認めます」


──リリ様までぇ!


 ルル滝のような滂沱の涙だ。


「エルゼ様はルミエン家の状況も把握していらっしゃったとか。たかだか男爵家の内情を」

「ルミエン家は私の友人が嫁いだところよ。気にかけちゃいけない?」


 エルゼはクスクス笑う。リリの方にも特に動揺は見られない。この程度の揺さぶりでどうにかなる相手とは思っていないからだ。


「それに、『魂魄置換について知識のある知己の者がいる』と仰ったそうですね?」

「それが何か?」

「随分と都合がよろしいのですね」

「……」

「魂魄の魔術言語研究はこの国では禁忌です。研究者もかなり限られるでしょう。最初から魂魄の魔術言語を調べていたのではありませんか?」

「まだ起きてもいなかったのに?どうして?」

「10年前」


 リリの言葉にエルゼの表情が消えた。


「エルゼ様は事件の発端から既にご存知……」

「ええ、いいわ。認める」

「え!?」


 リリはこの程度でエルザが折れるとは思っていなかった。その為、簡単に認めたエルゼに意表を突かれてしまった。そのエルゼはリリの様子にしてやったりといった感じだ。


「知っていたわ。魂魄置換のことも、コラーディン伯爵のことも、そして……10年前のこともね」

「随分とあっさりお認めになるのですね」


 エルゼはいつものようにテーブルに肘をついて頬杖をつくとニヤニヤと笑う。


「私は別にリリちゃんやルルちゃんと争いたいわけじゃないもの」


 リリはじっとエルゼを見つめた。


──エルゼ様は何を狙っているの?


 表情にこそださないが、エルゼの意図が読めずリリは混乱した。


──今まで隠してここで切り札(カード)を切ってくる意味……


 自分に貸しを作るためだろうか?


 それは十分にありえる。ライルの思惑は置いておいて、リリは将来ライルと結婚して王太子妃になる予定である。嫁姑の争いは既に始まっているのかもしれない。大層な陰謀もエルゼにとってはその程度のものだ。


 それとも自分に次期王妃としての自覚を促しているのだろうか?


 それも考えられることだ。王太子妃となれば次期王妃である。リリは間違いなくこの国の同年代の令嬢の中で最も優秀である。それはエルゼも認めるところだろう。しかし、同時にエルゼは知っている。リリは周りが思っているほど冷淡でもなければ強くもない。むしろ甘い人間だ。今のうちに釘を刺しているのかもしれない。


 しかし、それだけではないようにリリには思えた。


──だけど今はマリーとルルの方が大事です。


 リリはとりあえずエルゼの企みについて考えることを止めた。


「じゃあ、そのことも踏まえて魂魄置換のお話を進めましょう」


 エルゼの合図で側仕えの侍女が恭しく跪礼して部屋を辞す。おそらく別室で待機している魔術研究者を迎えに行ったのだろう。


「今からこちらに来てもらうわ」


 それ程は間を置かず侍女が40前後くらいの痩身の男を連れて戻ってきた。


 その男は青のコートに白のスカーフ、黒系統のブリーチズを身に付けた研究者というより伊達男のような出で立ち。シルバーブロンドをオールバックにし、晒す目鼻立ちは整った中々の美形であった。


──おお!イケオジですぅ!


 ルル大喜び!



イケオジが出てきてもリリはときめかない。だけどルルは大興奮のようです……


ルル「……」

アンナ「……」

エルゼ「どうしたの2人とも?」

ルル「うん……」

アンナ「ネタが尽きました」

ルル「もともと無い作者の才能が完全に枯れ果てました」

エルゼ「うちの旦那はまだ枯れてないわよ?」

アンナ「下ネタに走った段階でもう末期ですね」

ルル&エルゼ「「いつも下ネタに走っている人が何言ってるの!」」


やばい……

本気でつきた(´Д`)


誤字脱字、感想などなどいただけると大変嬉しいです!

レヴュー?もう歓喜の舞を踊っちゃいます。

(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛(ノ゜д゜)ノソイヤ!゛


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