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第22話 『侯爵令嬢はパズルのピースをはめる』《イラスト:ルルとアンナ》

ふ~今日の分もやっと書き上げた……

ストック切れてから毎日投稿は大変だぜ( ̄ヘ ̄)フゥゥ~ ...

ん?またブクマ登録が!(ノ゜ο゜)ノ オオォ

ありがとうございます!(ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

古芭白元気が出ます!やったります!✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。


イラストは『陰東 一華菱』様よりの頂きものです。

ルルとアンナのケンカシーン!

可愛い(●´ω`●)

 アンナが何かを隠しており、ベルクルド商会について何やら情報を持っているようだとリリには分かっていたが、あえて問うことはせず、ベルクルド商会の件はこの場ではいったん保留することにした。


 それにリリには他にも気になることがある。

 ルルの前世と魂魄と体の記憶の関係……

 まずリリはルルとアンナの前世の話を聞くことにした。


「ところでルルはアンナと同じ前世持ちだけど同じ世界の同じ国なのかしら?」

「会話に見られる文化的背景は似ていますからおそらくは」

「そーですよねぇ。なんか聞いたことあるセリフだなぁとは思ったんですよぉ」


「しかし、まさかここが乙女ゲームの世界だったなんて」

「アンナさんは気がつかなかったんですか?」

「乙女ゲームなんてやったことありませんから分かる筈ありませんよ」


「いえ、でも『しろくろ』ですよ?ちょー有名じゃないですかぁ」

「知りませんよそんなの」

「えぇアンナさんは若さが足りないんじゃないですかぁ?」



 ピシッ!!!



 一気に室内の温度が下がり、不穏な空気が部屋中をに立ち込めた……


 ルルは言ってはならないセリフを言ってしまった。


 無表情のはずのアンナのこめかみに怒りマークが浮かび、背後から『怒怒怒怒怒!』と音を立てているような錯覚を覚えたが、リリは別段たじろがない。だって自分とは無関係だから。



「確かに今の私は貴女より年上です……が、前世で私はSJKでした」



 冷たい視線で見下ろされてルルはタジタジだ。



「前世含めれば貴女の方が年上でしょう」

「わ、私だって前世は高校生でしたぁ……」



 目が泳ぎまくるルル。もはや語るに落ちるまでもない。



「ダウト!!!」

「なんですかアンナさん!私は何も偽りは言ってませんよ!」

「女子高生とは片腹痛い!貴女の前世はアラサーでしょう!」

「な、な、何故それを!」



 きょどるルルに侮蔑の目を向けるアンナ。



「乙女ゲームを求める年齢層はだいたい25〜35歳くらいです。絶対です!」

「し、失礼な!乙女ゲームを嗜む年齢はもっと幅広いですぅ!」

「ライトユーザーや特定ゲームの追っ掛けユーザーならその範囲を外れるでしょうが、貴女は全方位型乙女ゲーマーでしょう!誤差いれても25〜35歳±3歳くらいです」



 アンナの指摘にルルは耳を塞いで首を振る。



「そんなことない、そんなことない。だって乙女ゲームは人気ワード。『小説家だろう』でも全年齢に愛読され常に上位にランキングするジャンル……」

「笑止!『だろう』系はなんちゃって乙女ゲームでしょうが!実在しませんし、読者も別に乙女ゲームなんてしていませんよ。絶対です!」



 勝ち誇った侍女とそれを悔しげに見上げるルル。



「だいたい乙女ゲームで擬似恋愛することの何がいいのやら」

「何を言うんですか!乙女ゲームには夢と優しさが詰まっているんですぅ!」

「は!妄想と欺瞞の間違いでしょう」

「ヒドイ中傷です!そんな鬼畜だからアンナさんは美人なのに彼氏がいないんですぅ」

「前世は男いましたぁ!今世はリリ様一筋ですぅ!乙女ゲーマーみたく夢と妄想の狭間で現実逃避しているお花畑の住人とは違うんです!」



 馬鹿にした嘲笑を向けてくるアンナにルルもデッドヒートだ。



「アンナさん!今の発言で貴女は全国1億2千万人の乙ゲーマーを敵に回したのです!!」



 ルルの強気の宣戦布告。

 だがそんな程度でアンナは怯まない。

 だってアンナだから。



「はっ!たかが乙女ゲームにプレイヤー人口がそんなにいるわけないでしょう!」

「乙女ゲームは偉大です!日本全国津々浦々にそのプレイヤー達がいるんですよ!」



 ルルの発言に「ふん」とアンナは小馬鹿にするように鼻先で嘲笑する。



「プレイヤーの大半は女性でしょう!まず日本の人口が1億2千万人として女性は2分の1の6千万人!乙女ゲームを求めない50歳以降と20歳未満を減じて2千万人!そして、ゲーマーがその3割として考えれば2千万×0.3の、ルルーシェ!貴女の想定を遥かに下回る600万人よ!」


「なんですかぁ!その逆ウォーズマン理論は!!いやそれでも600万人いるならまだ戦える!」


「馬鹿ね、全ゲーマーのうち乙女ゲームやってるのなんて1割にも満たないわ。更に600万に0.1を掛けて多く見積もっても60万人よ!政令指定都市最少人口の静岡市にも及ばないわ!」


「ひ、ひどい!人口の多さがそんなに偉いんですか!?静岡市を馬鹿にしないでください!東京のベッドタウンとしても栄えてそれなりに都会ですし、それなのに自然は豊かで富士山も良く見える絶景ポイントなんですよ!更に空気は美味しい!静岡おでんも美味しい!全てにおいて2度美味しい住みやすい都市なんですぅ!」


「富士山は別に静岡でなくとも見れますしぃ!私は真っ黒な静岡おでんは好みません!何ですかあれ?具材まで真っ黒にして!」

「静岡のソウルフード黒はんぺんを冒涜する発言ゆるすまじぃ!」


「貴女おでん食べ過ぎて腹の中まで真っ黒になってるんじゃないんですか?」

「真っ黒なのはアンナさんの腹の中ですぅ!」


挿絵(By みてみん)

【イラスト/陰東 一華菱様】


 ガルルルル……

 シャァァァ……


 と毛を逆立て威嚇する犬(アンナ)と猫(ルル)を背景(オーラ)にして争う2人を傍観していたリリもさすがに呆れてきた。



「…………二人とも論点がずれていっているわよ」



 間に入りリリは話を戻す。



「それで、2人は同じ『日本』という国の記憶を共有しているのね」

「『日本語』の微妙なニュアンスから私やルル、そしてご当主様も日本人だったと思われます」


「ニホンゴ?」

「『日本』という名の国の言葉ということです。シュバルツバイスの国語は日本語なんです」


「日本産ゲームだからでしょうね。御都合主義万歳です。転生時5歳以前の記憶がなかったので、日本語じゃなかったら詰んでました」

「私の転生時も5歳前後だったと思いますが、記憶はきちんとありましたよ?」


「そうなんですか?」

「同じ前世持ちでも記憶を維持したり失ったりとそれぞれなのね?」

「まあ、この手の転生ものの話だと記憶のあるなし両方メジャーなパターンですから色々じゃないんですかぁ?」



──アンナは記憶があって、ルルには記憶がない……



「ねえルル。5歳の時に転生した時や私の体に魂魄が移った時に身体の記憶に引きずられるようなことってあった?」


「?」


「私ねルルの体になってから、時折この身体の影響を受けている節があるの。私の気持ちや記憶、言葉や行動。なんとなく、ほんの少しなのだけれど」



 ルルは上を見て「んー」と思案する。



「……いえ、私はまったく……転生したてのころもそれまでの記憶がなかったような……まあ、5歳でしたし、転生の影響もあるから。物語の話ではよくあることだしあまり気にしてなくて」

「魂魄置換してからも?」

「そーですねぇ……リリ様の体の影響を受けた感じはしませんねぇ」



 そのルルの言にわざとらしく大きな溜め息をつくアンナ。



「影響があれば少しはマシになっていたでしょう。残念です」

「そ、そんなにダメですかぁ!」

「くっ!リリ様の凛々しく美しいお姿がこんなアホ面アーパー娘になるとは口惜しい!」

「ひ、ひどいアンナさん!」



 四つん這いで嘆くアンナと悔し涙を流すルルの相変わらずの寸劇にリリは苦笑いした。



「それではアンナの方は?」



 話を振られたアンナは少しの間考えたが、首を振って否定した。



「体の記憶に引き摺られると言うより、前世の知識の影響を受けた感じですね」

「そう……なの」


「リリ様、記憶は脳の『海馬』や『大脳皮質』に保管されます。今のリリ様の脳は私のですから記憶の影響を受けることもあると思いますよ」

「貴女、意外と物知りですね」

「私これでも前世成績良かったんですよぉ。英語や国語は苦手でしたけど」



 そのせいで魔術言語が苦手で魔術によるヒロイン無双出来なかったと(おど)けたルルが、少し落ち込んだように見えたリリを(おもんばか)ったのだとリリには思えた。



──やはり心根の優しい()なのですね。



 ただ、リリは落ち込んだわけではなく、思考の海に沈みそうになっていただけであった。


 リリの頭の中で関係なく散乱していた別々のたくさんのピースが同じパネルフレームの上で繋がろうとしているように感じたのだ。



 5歳の時の流行病で快癒後に感じた私の違和感。

 同時期に流行病で転生の記憶を思い出したルル。

 5歳の時から未だにルルに執着するベルクルド。

 魂魄置換してから体の記憶に引き摺られる感覚。

 ルルとアンナにはない記憶に引き摺られる感覚。

 魂魄置換直後のタイミングで襲ってきた暴漢達。

 並列魔術構文編纂(デュアルコンパイル)で判明した私の中の2つの魂。

 そして時折見せる専属侍女(アンナ)の不審な言動の数々。



──まだピースが欠けている。やはり、『魂魄置換』の魔術についての知識が必要ですね。



 他にも、

 陰謀が王家やリュシリュー侯爵家に関わるならば、ベルクルド商会のバックに大物の貴族がいる可能性。

 ルルの流行病の時の借金や治療に纏わる仔細。

 ライルたちの婚約破棄の裏にある彼らの思惑。


 調べる必要のあるものは多い。


 今回の騒動は相関のなさそうな事柄が思わぬところで絡まり合い、ピースが全て埋まった時には出演者たちも想像していなかった作品を見せてくれる。リリにはそんな気がする。


 しかし、今はまだパズルが完成する時期ではない。

 思考の濁流に揉まれてリリは気づかぬうちに少し気疲れしていたように思えた。



──ん~今はネネちゃんの可愛い姿を見て癒されたいですね。



 蜂蜜色の甘そうな髪と翠玉のような綺麗な瞳の幼女を思い出し、リリは帰巣本能が湧いた。すごく湧いた。


 あの美幼女が瞳をウルウルさせて自分の帰りを待っている!そう思うともはや居ても立っても居られない。



──そうと決めればもはやここには用がありません!



 もともとここがリリの家のはずなのだが……



「さて、もう遅いし帰らないと」

「え?リリ様何処へ?」



 突然立ち上がり帰宅を宣言したリリにルルは驚いてその袖を握った。

 その目は行かないでと訴える捨てられた仔犬のようだ。


 ちょっと可愛い。と、自分の容姿を自賛してしまうリリだが、ルミエン家ではもっと可愛い可愛いネネが待っているのだ。リリは心を鬼にした。



「何処って、今の私は貴女なのよルルーシェ・ルミエン。当然帰る家はルミエン家だけでしょう」

「お待ちくださいリリ様。この者ではリリ様の代わりは難しいかと。私もフォローいたしますが、この者あまりにアーパー過ぎて使い物になりません」

「ひ、ひどい!」


「だまらっしゃい!貴女既に奥様のみならず王妃様にまで秒で正体ばれているでしょう」

「ううう……」


「ねえアンナあまり責めないであげて。お母様やエルゼ様は仕方ないわ。お母様は私の所作を(つぶさ)に見ているし、エルゼ様は達人だから気配を読まれて誤魔化すのは難しいわ。そのことはアンナにも分かっているでしょう?」

「リ、リリ様ぁぁぁ」

「くっ!それは……確かにそうですが」


 リリは可愛い可愛い妹(注:ルルの妹です)の待つルミエン家に一刻も早く戻らねばならない。ここで引き止められるわけにはいかない。


 いかにこの場を切り抜けるか……リリの灰色の脳細胞はフル回転だ。


「あのねアンナ。私もルミエンのお母様にどうも勘づかれている様子なのよ。やはり、日頃から接している方々を欺くのは至難よ。とにかくお父様とお兄様にばれなければ大丈夫。アンナとルルならできるわ。貴女がフォローしてあげてね」

「うう。リリ様が優しい……」

「まあ、それは……しかし私はリリ様の中身がこれなのがどうにも我慢なりません」

「どうして?アンナは中身を問わないでしょう?」



 変態侍女はリリの外見こそ溺愛しているはず。

 リリは小首を傾げた。



「リリ様の美しさが損なわれないのであれば、です」

「どういうこと?」

「リリ様の完璧な所作がリリ様の美を引き立てているのです。それを……」



 アンナはルルに苦々しい顔を向ける。



「貴女のポンコツが滲み出てリリ様の容姿やステータスに影響しています!ホントにヒロインですか貴女は。『ステータスオープン』って言うてみい。スキルの欄に『ポンコツ』が見られるんじゃないんですか?」

「私のポンコツを属性やスキルみたく言わないでください!」



 ふふんとアンナは嘲笑わらう。



「ポンコツは認めるのですね」

「なんですか、なんなんですかアンナさん!さっきから人のことを貶めて。確かに私はリリ様みたいに振るえませんよぉ。でも、これから頑張ります!いつも外見ばかり言って。人は内面が大事だと思いますぅ!」


「あのねアンナ。ルルも大変なのよ。お願いだから今は協力して欲しいの」

「致し方ありません。しかし、やはりリリ様は外見のみならず内面も女神の如き気高さと優しさに溢れています。それに引き換え……」



 ルルに残念なものを見るような目を向けたアンナはふぅと溜め息をついた。



「このビッチは外面だけではなく中身もダメダメです」

「ひ、ひどい!」

「シャラップ!自分自身で内面を訴えるあたり終わってます。真に内面の優れた方は己から内面を口には致しません。周囲から誉めそやされるのです。そんなことだから奥様や王妃様に秒でばれるんです」

「ぐは!」



 アンナの口撃!クリティカルヒット!!

 しかし、容赦のないアンナは口撃の手を緩めない。



「だいたい頑張るって、口にするだけではなく実際の態度で示してから言いなさい」

「うぅ……言い返せません」


「あのねアンナ。あまり追い詰めないでね。いきなりは無理よ。私だって幼少から躾けられていなければ完璧な所作なんて無理だもの。ましてルミエン家は子供達に貴族家を継がせる意図が無いせいで貴族としての教育をあまり受けていないみたいなの」

「リ、リリ様ぁぁぁ!」



 ルルはリリの脚に縋りつき涙を流す。



「一生ついて行きます!」

「あのねルル。私の姿でそれは止めて。自分の情けない姿を見下ろすのは複雑な気分になるわ」

 


 スパァァァン!

 


 アンナがいつ用意したのか紙ハリセンでルルの頭を叩くと思いの外いい音がした。

 


「い、痛い……」

「貴女は言った側から何してくれてんですか!」

「あ、あのねアンナ。その体は私の体なの。あまり乱暴にしないでね」


「やーいやーい怒られたw」

「くっ!このアマ!リリ様の体でさえなければ抹殺してやるものを」


 一抹の不安はあるものの、リリはこの2人なら大丈夫!と自分に言い聞かせた。



 リリは転生者相手でも困らない。2人のノリはちょっと楽しいかも……


ルル「ううう……リリ様ぁ!最近アンナさんの当たりがきつ過ぎですぅ」

リリ「何を言っているの?あれは明らかに『ツン』でしょ?」

ルル「え?アンナさん『ツンデレ』!?」

リリ「あの()はなかなか『デレ』ないし、その『デレ』も分かり難いのよねぇ」

ルル「え~そうなんですかぁ?」

リリ「思い返して気づかないかしら?アンナけっこう『デレ』てるわよ」

ルル「えへへ。え~(テレテレ)なぁんだぁアンナさん私のこと好きだったんだぁ。(ツンツン)このぉ『ツ・ン・デ・レ』さん!」

アンナ「(-"-怒)殺す!!!」


いつも誤字報告ありがとうございます!

誤字脱字などありましたらご報告ください!

皆様の応援が古芭白を救ってくれます!

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