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第18話 『侯爵令嬢は《母》と遭う』

どうも昨日から熱っぽい……頭がガンガンする。

おかげで昨日はほとんど文章が書けなかった。

ので、過去のを見直しだけしていました。

そして昨日色々文章削りまくっていたら10万字切ってしまった(1話分ちかく削るとは)

10万字突破!……してねぇ!!

あ!編集で見ると掲載前の文字数もカウントされてたのか……明日までお預けかorz


第7話『侯爵令嬢は講義を受ける(説明回です)』の魔術言語と魔術構文の説明が誤字脱字のオンパレードになっていましたので大幅に変更しております。

後書きのアンナ&ルルの説明で十分と思いますが、興味がありましたらご覧ください。

 アンナは襲撃者を軽く撃退すると遅れてやって来た騎士団にその悪漢どもを引き渡した。その騎士たちはリリ達にしきりに恐縮しどおしだ。


 無理もない。相手はこの国でも有数の侯爵家。しかも王太子の婚約者だ。


 それが王都の街中の貴族街に近いこの場所で白昼堂々襲われたのだ。まだ自分たちの手で悪漢どもを捕らえていればよかった。しかし、現場に到着してみれば悪漢どもは侍女の手によって既に倒されていた。職務怠慢を(なじ)られても文句も言えない。


 不興を買えば左遷もありえる相手だ。今の彼らは裁判所で死刑判決の宣告を言い渡される直前の心持ちであろう。その心中を察するに余りある。


 しかもアンナは騎士団の間で有名なのだ。超有名人なのだ。


 あの(・・)王妃と、騎士団内で団長と副団長以外まともに相手ができないあの(・・)エルゼと互角以上に渡り合うと噂されているのだ。そして真偽の程は……真である。


 その実力者から氷の仮面の様に冷たい無表情で見られている。その眼鏡の奥から覗く氷点下の眼差しで。アンナとしては普段どおりなのだが、騎士たちからすれば自分たちの不手際を責められている気がして生きた心地がしない。


 だが、黙っていては事態が進展しないし、このままでは不味い。


 警邏の隊長である騎士が「なぜ今日は自分が当番だったのだろう?あ、デートだから非番代わってくれって頼まれたんだったっけ。俺はなぜ安易に了承したんだ?」と自分の軽率と非番を代わった騎士に呪詛を吐きそうになりながら意を決した。


「こ、この度は、わ、我々の……」

「騎士様」


 その隊長の言をリリが遮った。決して大きくも鋭くもない、しかしよく通るはっきりとした声で。騎士はその威に打たれて固まった。


──な、なんだ?不思議な少女だ。


 同年代の少女たちと比べて明らかに小さい体。整ってはいるが幼い顔立ち。学園の制服を着用しているから貴族子女なのだろう。だが、この場の絶対上位者のリリーエン・リュシリューとその侍女に比べれば特筆すべきものはないはずだ。


──だが無視できない!目が離せない!


 その振る舞いからくる品位か、その存在感に隊長はルルやアンナよりもリリに目を奪われてしまっていた。そんな隊長の様子を気にもしないかのようにニッコリと笑うリリ。


「騎士様。アンナの武名に油断しておりました。世に邪念を抱く不届き者は絶えることはなく、高位貴族の身なれば牽制のためにも護衛を伴わなければならなかったことを失念しておりました……とお嬢様はおっしゃっておられます」


 リリがルルに鋭い視線を送るとルルは思わずコクコクと頷いた。


──彼に謝罪をさせてはいけない。


 ここで隊長が謝罪をすればこの襲撃の顛末で騎士たちに落ち度があったと公に認められてしまう。彼らが上位か同等の立場であればよかったが、リリーエン・リュシリューが圧倒的に上位だ。この場合、リュシリュー家として彼らの非を国に申告しなければならなくなる。


「次からは気をつけます。御者と護衛を手配して頂ければ、この件は全て良いように……とお嬢様はおっしゃっておられます」


 場はリリに呑まれ、全ての動静は掌握された。


──リリ様、やっぱりスゴイ!

 ルルは隣でコクコクと頷くだけである。


「おお!なんと寛大なお言葉。リュシリュー様の噂に違わぬ慈悲深さ、尊崇の念を禁じえません」


 隊長にもリリの意図は伝わったようだ。とうてい高位貴族から受けられるとは思えない程の心配り。隊長は心中で感涙した。


 高位貴族によくある傲慢さが見られない。加えて女神と見紛うばかりの美貌、大人顔負けの配慮、相手を慮る心根。


 日ごろ自分たちより上位の貴族の横暴に辟易していた騎士たちは、この瞬間リリーエン・リュシリューに堕ちたという。リリの株爆上がりだ。


 後に騎士団の中でリリの話題は持ち上がり神聖化され、あまりの恥ずかしさにリリを身悶えさせることになる。


 おかしい。あの時はルルの姿だったはず!と思ってももう遅い!ルルはただの男爵令嬢。全てリリーエン・リュシリューの所業と認知されるのは自明の理なのだ。


――閑話休題――


 矢を射られた御者を施療院に送ってもらい、隊長から数人の騎士を借り受け、彼らに御者と護衛の任を任せてリリたち3人は再び車中の人となった。


「アンナ。あの襲撃者のことだけど……」

「ご安心ください。騎士団の中にも信……ゲフンゲフン、ん、ん、人脈がございますので後ほど調書を手配します」


 なにやらアンナが不穏な単語を口にしようとしたが、まあアンナだしとリリは笑って流した。

 この感じも懐かしい。まだ1日も経っていないのに長く感じる。

 そう思えるだけ色んなことがあった。が、感傷に浸っている余裕はない。


 3人は話を合わせられる最低限の情報交換の続きを再開した。


「それにしてもお母様……ルルのお母様と私の母が友人関係だったなんて驚きですね」

「はい。リリ様とこんなご縁があったなんて……ちょっと嬉しいかも」


 リリを見てはにかんだ様子のルルに、自分の姿なのに自分にできない仕草でリリは違和感を感じた。いつも鏡で見慣れているはずの自分自身。しかし異なるもの。私ではないのだと改めて思った。が、悪い気はしなかった。ただ、この()はちょっと粗忽だなと思った。


 リリはふふふと悪戯を思いついたような表情でルルを見据えた。


「ふーん嬉しいの?恋敵なのに?」

「うぇ……あ、その……」


 自分の軽率な発言に気がつきルルは慌て、その狼狽ぶりにリリは楽しそうに笑った。


「ライル様とのことは擬態だと分かっているわ。後できちんとお話してね」

「う、は、はぃ」

──で、殿下。リリ様にもバレてますぅ。


 消え入りそうな声のルルを見るリリは微笑ましそうだ。


 自分の姿のはずなのにルルは顔が熱くなるのを感じた。自分自身の見慣れた容姿なのに中身が違うだけでこんなにも変わるのかとルルは自信をなくしそうだった。


 アンナはそんな2人を何の感情も見せずに黙って見守っていた……



 やがて馬車はリュシリュー邸の前に到着した。

 国の騎士たちを伴っての帰還に邸内がざわめく。


 そんな周囲の様子を素知らぬ素振りでアンナは騎士たちに礼を述べ、駆けつけた家令と従僕に指示を出した。家令が侍女に指図されているのがおかしい?リリ様専用侍女は化け物なのだ。このリュシリュー邸においてメネイヤ以外に当主を含めアンナに逆らえる者などいないのだ。


 とにかく身バレが不味い。ボロが出る前にルルの前からこの連中を引き離さなければならない。アンナは容赦しなかった。


 名残惜しそうにルル(騎士たちはリリと思ってる)を見る騎士たちもせっかく駆けつけてきた使用人たちも無情に追払いアンナは素早くリリとルルを邸内へと(いざな)った。


 玄関の重厚な扉を開け広いエントランスに入ると、ちょうど階段をゆっくりと降りてくる佳人が目に入った。その歩く姿はどこまでも優美で幻想的だ。


──お、お母様!相変わらずの存在感。


 リリでさえも息を呑む母メネイヤの艶姿。結婚前に社交界で会場中を圧倒した美貌と品格は健在だ。むしろ貫禄が増して当社比1.25倍だ。あの傍若無人のアンナでさえタジタジだ。


「お、奥様……」


 アンナが間に入ろうとするのを軽く手を上げるだけで制された。

 これではアンナも引き下がるほかない。


「お帰りなさいリリ」

「は、はい。た、ただいま戻りましてござりまする」


 呑まれたルルの支離滅裂な様子にアンナは顔を覆いたくなった。


 リリの方は特に動揺はない。どうせバレてるんでしょ?今さら取り繕ってもムダよ。と割り切って微笑で軽く流した。


「アンナ、報告は後ほど私の部屋で……」

「その件に関しましては王妃様よりご自身が奥様に直接お話になると」

「エルゼリベーテ王妃様が?」


 アンナの報告にメネイヤは少し考える素振りを見せたが、すぐに頷いた。


「分かりました。その件は王妃様にお伺いしましょう。それで……」


 すまし顔のリリに一瞥をくれてメネイヤはあたふたしているルルを睥睨した。


「こちらのお嬢さんは?」

「う、あ、その……お友達?といいますか……」


 本来ならルルが紹介しなければいけないのだが……ここまでね、とリリは一歩前に進み出て自身の存在を示した。


「リュシリュー侯爵夫人。初めてお目文字いたします。僥倖にもご息女リリーエン・リュシリュー様の知己を得ましたルルーシェ・ルミエンと申します」

「え?リ……リ?」


 一部の隙もないカーテシーをするルルーシェの姿にメネイヤはリリの姿が重なったように思えた。完全に動揺している。完璧な淑女とも思えたメネイヤに隙ができ、リリに呑まれた。まるで金縛にあったようだ。


「あ、いえ……リリのお友達ね。いらっしゃい。ゆっくりしていっていらしてね」

「はい。恐れ入ります……では御前失礼致します」


 ホッと安堵したアンナが2人を先導してメネイヤから離れて行った。


 そのリリとルルの後ろ姿を見えなくなるまで見送ったメネイヤはやっと金縛が解けたように息をついた。


「リリ……ルルーシェ・ルミエンと。では、あれはセスの娘?」


 眉間に皺がよりメネイヤの顔が険しくなる。


「それではリリはセスのところにいるの?」


 そう呟くメネイヤの目には寂しそうな色が見えた。


「セス……貴女はいつも……」


 拳を握りしめ、唇を少し噛むメネイヤの顔が少し歪んだ……



リリ「お母様……我が母ながら本当に美人ねぇ」

ルル「母娘だからリリ様とそっくりだしアンナさんは欲情しないんですか?」

アンナ「奥様は人外です。守備範囲外です」

ルル「(人外のアンナさんが人外って……)ま、まあ年齢不詳ですしねぇ」

リリ「夜会初参加の男の子が母に求婚することがままあるとか」

アンナ「当主様はいったい何をしているのか……」

ルル「というよりお母さんよく当主(あれ)と結婚されましたよね?」

リリ「お父様は若いころかなりモテたみたいなの。お母様の方からのアプローチがすごかったそうよ。お父様がそうおっしゃっていたわ」

アンナ&ルル「「絶対ウソです!」」


誤字脱字やおかしなところありましたらご報告ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] リリの母とルルの母は親友だったとのエルゼの話だったのにラスト何やら確執が? 気になる展開です
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