12:恋心
(やっぱり2番だ…)
あいも変わらず見慣れた掲示板だ。
試験結果が貼り出されたと聞いてリオンは一目散に確認しにきたのだった。
(やっぱり越えられないのか…)
ほんの少し眉間に皺が寄る。
(まぁ、まだ先はあるもんな!)
そう思って寮の部屋に本を取りに向かって歩いて行く途中だ。
サラとアーロンがちょうど出かけるところに出会したのだ。
「あれ?今からデート?」
「おぅ、出かけてくるわ」
アーロンが言う。サラの前にいる時の彼はいつもより目尻が落ちている気がするのはリオンだけじゃないだろう。
「リオン、試験結果見に行ってたんでしょ?」
そうサラに言われるのでコクンとうなずく。
「どうだった?」
「まぁ、相変わらず!けどまだ次もあるし頑張らないと」
そうえへへと笑うとサラも笑ってくれた。
アーロンがサラといると目尻が下がるのと同じで、サラもアーロンといる時はそこまで分かりやすくはないが心なしか表情が穏やかだ。
「今日はどこ行くの?……なんて野暮なこと聞いちゃダメだね!たのしんできてね!」
あまり引き留めても悪いので、そう言って二人を見送りリオンは寮の部屋に戻った。
(サラとアーロン本当楽しそうだなぁ)
二人が付き合い始めたのはアーロンの一目惚れだ。
だからサラはあまりアーロンに思い入れがないのかと思っていたのだが、そうでもないのだなと最近サラの様子を見て思っている。
デートの前はいつも以上に身だしなみを気にしているし、アーロンと出かけた時のことを話すサラは心の底から楽しそうに話す。
リオンには引き出すことのできないだろう彼女の表情を見てリオンも幸せな気分になるのだ。
恋とはこんなにも人を輝かせるのかと。
けれど。
リオンは思う。
誰かを特別に好きになるなんて、自分はそんな感情は持ち合わせていない。
王族なんて自分の意思で誰かのそばにいる事などほとんどない。
だからきっと王族には生まれながらに恋心など持ち合わせていないのだろうとリオンは本気で思っていた。
そんなもの、王族として生きていくには邪魔なだけだ。だから持ち合わせずに生まれてきて良かったとすら思っていたのだ。
リオンのような立場なら尚更だ。
ただ父親である国王の思う道を歩かされる。そこに感情などないし、必要もない。
なんとなくぼんやりと見た窓の外は夏ということもあり、陽が強く随分と暑そうだ。
その気候に反して自分の思考は随分と冷めたものだと感じる。
王女としての自分の思考になると、この学校にいる自分とは別の人間なのではないかという感覚になることが度々あった。
そして思うのだ。
(やっぱり私は王族なんだろうな)
そう窓にうつる嘲笑った自分を見た後、そっと手元の本に目を移した。
(けれど、この子達は)
必要な本をいくつか手に取ると思わずリオンの口元に笑みが浮かぶ。
先ほどの笑みとは違い、穏やかな優しい笑みだ。
(私が恋焦がれるのはこの子達くらい)
そう本を大事に抱え図書室に向かった。