さいこう
この作品はフィクションです。
「何事においても最高であるのは大切なことなんだよ。」
「いきなり志高いこと言い始めたな。」
「最高を目指すからこそ成長を得られるんだよ。人間ってのはそういう生き物なんだよ。」
「小学生なのに随分と悟ってるじゃん。」
「小学生の頃から自意識は高く持っておいた方がいいんだよ。子供は何かって言うと目先のものに惑わされるから。そういうのを防ぐためには、高い自意識。これ大事。」
「ふわふわホイップのシュークリームあるけど食べるか?」
「食べる〜。」
「言って数秒で惑わされるなよ。」
「今のは惑わされたんじゃないんだよ。高い自意識が糖分を欲した結果、なんだよ。」
「なんだそりゃ。」
「もしもこれが普通のシュークリームだったら、私は何の反応もしなかった。だけど、ふわふわホイップのシュークリームなんて。マジで自意識を刺激しまくってくる一品じゃないの。」
「そうか?」
「ぱりっ、としていて、それでいて、しなっ、としたシュークリームの皮の中に、ふわふわのホイップクリーム。ワタシ的に最高のシュークリームの形なんだよ。」
「俺はシュークリームならカスタードクリームの方が好きだけどな。」
「そうなのか。ならば、キミとは相容れないね。」
「そこまで?」
「ふわふわホイップクリームと、なめらかカスタードクリームは、対極の存在であり、それぞれがそれぞれの主張を崩さない、最高のクリーム二大巨頭なんだよ。だからこそ、相容れることは出来ない」
「カスタードクリームとホイップクリームのダブルクリーム入りのシュークリームとか、今普通にあるけどな。」
「ラーメンはやっぱり醤油だと思うわけなんだよ。」
「あからさまに話を逸らしたな。」
「あからさまに話を逸らさざるを得ないんだよ。まさか、カスタードクリームとホイップクリームが一緒に入ってるダブルクリームのシュークリームがあるなんてクリームクリーム言い過ぎじゃね?」
「確かに。」
「あまり連呼しすぎると最高というものが持つプレミア感が薄れてしまうからあまりよろしくはない。」
「そういうものなのか。」
「あまりに最高だ最高だって連呼されてるものって、なんかちょっと胡散臭く感じるじゃん?」
「それは人それぞれだと思うけど。」
「つまり私は話を切り替えたことによって、シュークリームの最高感を損なうことなく保つことに成功したんだよ。それはつまり、私は偉い、ということなんだよ。」
「偉いと思われたいだけかよ。」
「そうでもない。」
「なんなんだよ。」
「偉いことと最高なことは別なんだよ。だから私は、偉いと思われるよりお金がほしい。」
「それは欲しい。」
結局のところシュークリームは美味しい。