なつかしい
この作品はフィクションです。
「なにを懐かしいと感じるかは人それぞれだよね。」
「小学生が小学生らしからぬことをおっしゃっておりますが。」
「小学生だって懐かしいと思うことはあるんだよ。」
「例えば?」
「応仁の乱。」
「それを、懐かしい、に含めるの?」
「最近の小学生はそんな感じなんだよ?」
「それはカルチャーショック。」
「大化の改新までは懐かしいに含まれるんだよ。」
「それは最早なんてこったい。」
「そんなキミは、何を懐かしいと思うんだい?」
「俺はそうだな…。」
「はいタイムアウト。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「考える暇くらい与えてはもらえませんか。」
「断る!」
「なんでよ。」
「光陰矢のごとし。他人に暇を与えられるほど、この世は優しく出来てはいないんだよ。」
「世知辛いねぇ…。」
「でも、私は優しいから考える時間を与えて差し上げるんだよ。」
「それはどうも。」
「で?キミは何を懐かしいと思うんだい?」
「そうだな…。駄菓子とか懐かしいな。」
「そう?」
「子供の頃、100円握りしめてよく買いに行ってたもんだ。」
「ん〜………、なんか共感出来ないんだよ。」
「そうか?」
「だって、昨日も食べたし。」
「まぁ、お前はリアルタイムで駄菓子食べてるからな。」
「そう。だから私にとっての駄菓子は、懐かしいもの、ではないんだよ。言うなれば、今、そこにあるべきもの。」
「随分カッコいい言い方するな。」
「人生はカッコつけてなんぼだよ。」
「駄菓子でカッコつけるのはどうかと思うけどな。」
「10円で買えるチョコレートを投げつけて敵を倒すとかカッコいいじゃん?」
「どんなシチュエーション?」
「10円で買えるガムを伸ばして崖から落ちる仲間を助けるとかカッコいいじゃん?」
「どんなシチュエーション?」
「10円を募金するのってカッコいいじゃん?」
「カッコいいからって理由で募金をするのはよくないと思います。」
「どんな理由だろうとそれが人の役に立つならそれでいいと思います。」
「確かに。」
「簡単に意見を変えるのはよくないと思います。」
「確かに。」
「懐かしいっていうのが今回のテーマだったのにそこから逸脱するのはよくないと思います。」
「確かに。」
「でも逸脱するのはこの会話劇では日常茶飯事なので今更それをどうこう言うのもよくないと思います。」
「確かに。」
「とりあえず今回はこの辺で終わっておくのがいいと思います。」
「確かに。」
何を懐かしいと感じるかは、人それぞれ。