こんがらがる
この作品はフィクションです。
「難しい…。」
「どうした。」
「頭がこんがらがるんだよ。知恵の輪でバームクーヘンを作るくらいこんがらがってるんだよ。」
「その例えはよくわからんが、とにかく、こんがらがってるんだな。」
「そうそう。」
「何でこんがらがってるんだ?」
「縄跳び、ってあるじゃん?」
「小学校の体育とかでやるやつか?」
「そうそう。」
「それが?」
「あれってさぁ。縄、を、跳ぶ、から、縄跳びなの?。それとも、沖縄、で、全世界跳躍力選手権第8位の人が発案した、から、縄跳びなの?」
「圧倒的前者。」
「圧倒的前者なの?」
「圧倒的前者なの。」
「そっかぁ。それは意外でしたわ。」
「お前はいったい何で頭をこんがらがらせてるんだ。」
「だって、全世界跳躍力選手権第8位だよ?」
「そもそもその、全世界跳躍力選手権、ってのはなんなんだ?」
「その名の通り、全世界から跳躍力に自信のある選手が集まって、誰が一番ミルフィーユを重ねられるかを競う大会なんだよ。」
「お前は、その名の通り、って言葉の意味を理解した方がいい。」
「これもこんがらがるんだよねぇ。」
「だろうな。」
「ミルフィーユを重ねる大会なのに、なんで跳躍力なんだろうねぇ?そこは調味料力だろ!って思うんだよ。」
「調味料力、とは。」
「………調味料のパワー、だけど?」
「何当たり前の事聞いてんだ、って顔はやめていただきたく。」
「だって、調味料力は、調味料の力、だよ?それ以外になくない?」
「お前はそれ以外の意味も平気で言いそうだから。」
「それは困ったね。」
「自覚があるなら直してほしい。」
「直したいのはやまやまなんだけど、思い付いたことをそのまま喋るのは、私のアイデンデンデンだからね仕方ないね。」
「アイデンティティー、って言いたいのかな?」
「そう、そのアイデンデンデン。」
「わかってないな。」
「わからないけどわかったふりをする。それこそが、物事がこんがらがる原因。」
「自覚があるなら直してほしい。」
「そればっかり言ってるねぇ。」
「そればっかり言わざるを得ない状況だからな。」
「なんで?進学するから?」
「その理屈はわからない。」
「どう?」
「何が。」
「こんがらがってる?」
「俺が?」
「そう。」
「俺はだいぶ初期の頃から、お前という存在にこんがらがってたけど、こんがらがってないふりをしていた。」
「なんで?就職するから?」
「社会でははったりをかますのも、時と場合によっては大切かもな。」
「いや、そんな結論はいらない。」
「なんなんだお前。」
社会で生きるには、いろいろ必要ですわね。