むげん
この作品はフィクションです。
「問う。」
「急に?」
「この世の中で、何か一つを無限に出来るとしたら、キミは何を無限にする?」
「…意外とまともで難しい質問だったな。」
「失敬な。」
「何か一つを無限にねぇ…。…まぁ、ありきたりだけど、平和、とか?」
「審議。」
「は?」
「平和を無限に、というのは、基準が曖昧なんだよ。何をもって平和と呼ぶのかいまいちわからないし、人によって平和の基準はまちまちだし、同居人はお小遣い上げてくれないし、」
「お小遣い関係ないだろ。」
「無限にするのは、元が有限なものに限定させていただきたく。」
「まぁ、なんでもありになってもあれだからな。」
「そうそう、あれがそれで底知れぬ素行不良。」
「改心してください。」
「で?何を無限にしたいんだい?」
「そうだなぁ…。…じゃあ、綺麗な水。」
「おいおい。」
「?」
「キミはこの世界を水の惑星にでもするおつもりかい?」
「あ、そういうことになる?」
「綺麗な水が無限になったら、そりゃそうなるんだよ。それくらい少し考えればわかりそうでわからないもどかしさ。」
「わかってないじゃん。」
「君の選択により、水中で生存できない生物が死滅することになるけどそれでもよろしいか?」
「よろしいわけがない。」
「じゃあ違う選択肢を提供したくださいな。」
「なら、石油。」
「キミはこの世界を石油の惑星にでもするおつもりかい?」
「あ、そういうことになる?」
「石油が無限になったら、そりゃそうなるんだよ。それくらい少し考えればわかりそうでわからないわかめスープ。」
「美味しいけど。」
「もっと素直になりなよ。」
「?」
「さっきから世界規模のものを無限にしたがってるけどさぁ、本当ほもっと無限にしたいものがあるだろぉ?」
「なんだよ。」
「あれが無限にあればなんでも手に入るだろぉ?仕事もしなくていいし、老後の心配もしなくていいし、毎日好き放題できるじゃん?」
「…なんとなくわかったけど、それはあまりに欲望丸出しじゃないか?」
「欲望丸出しだっていいじゃない?この世は欲望によって発展してきたんだから。もっと自分に素直になりなよぉ。」
「…まぁ、あくまでも、もしもの話、だからな。」
「そうそう。」
「じゃあ、お金。」
「キミはこの世界をお金の惑星にでもするおつもりかい?」
「誘導しといてそれかよ。」
「ちゃんと、自分の資産を無限に、って言わなきゃだめなんだよ。世界中のお金が無限になったらお金には何の意味もなくなるんだよ。」
「確かに。」
「はい、ちゃんと言い直して。」
「無限にしたいのは、自分の資産。」
「そうやって人の言うことにまんまと乗っちゃう人が無限の資産を手に入れても、まともな使い方が出来ないからやめといた方がいいんだよ。」
「誘導しといてそれかよ。」
実体のあるものを無限にすると、必ず何かしらの弊害は発生するのかも。