くもってる
この作品はフィクションです。
「今日は曇り空だねぇ。」
「だな。」
「雨降るかなぁ?」
「どうだろうな。」
「曇り空の時は疑心暗鬼になるんだよ。これから雨が降るんじゃないか、あるいは、雨が降るんじゃないか。」
「二回言う意味。」
「もしくは、雨が降るんじゃないか。」
「三回。」
「それとも、雨が降るんじゃないか。」
「四回はくどいな。」
「そう?」
「そろそろ違う展開が欲しいところ。」
「じゃあ、雨が降るんじゃないか。」
「期待も要望も裏切ってくるその姿勢。」
「憧れるよね。」
「一切。」
「雨が降りそう。でも外出はしなければいけない。そんな時はどうする。」
「折り畳み傘とタオルを用意して出掛ける。」
「へぇ。革新的。」
「だいぶ保守的だと思うけどな。」
「私だったらあれだね。牛肉と玉ねぎと人参とジャガイモを用意して、」
「ん?」
「それを鍋で煮込んでいくかな。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「なんでカレー作ろうとしてるんだよ。」
「………。キミは何を言っているんだよ?」
「いや、だって、」
「雨が降りそうだけど外出しなきゃならない時にどうするか、って話をしているんだよ。なんでその状況でカレーを作り始めるんだよ?訳がわからないんだよ。」
「こっちだって訳がわからない状況だが。」
「そもそもカレー粉もカレールーも無いのにカレーは作れないんだよ。私は指先からカレーを出せるカレーの魔神ではないんだよ。」
「だろうな。」
「全く、もう少しものを考えてから喋って欲しいんだよ。作ってるのはポトフなんだよ。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「ここで、結局一緒じゃねぇか、とかツッコミをすると、カレーとポトフのどこが一緒なんだよ、とか言われそうだから言わないとして。」
「全部声に出てるんだよ。」
「お前は雨が降りそうだけど外出しなければならない時に、ポトフを作るのか?」
「作るんだよ。」
「外出はどうするんだよ。」
「外出は6時間後だからご心配無く。」
「時間設定。」
「別に良いんだよ。朝起きたときに曇ってて雨が降りそうで、その日の午後に外出しなきゃならない状況だってよくあるんだよ。」
「あるけど。」
「だったら午前中にポトフ作ってたっていいんだよ。」
「いいけど。」
「そんなわけで出来上がりました。キーマカレーてす。」
「結局カレーじゃねぇか。」
「好きなんだから仕方ないんだよ。カレーは雨が降りそうな日でも美味しいんだから。」
「美味しいけど。」
「というわけで、今夜の献立はすき焼きでよろしく。」
「美味しいけど。」
実際には、投稿日はめっちゃ晴れてました。