きょうかいせん
この作品はフィクションです。
「相反する言葉。短い、と、長い。」
「うん。」
「では問う。」
「なんだ。」
「境界線はいずこぞ。」
「いずこぞ…。随分と特徴的な言葉を引っ張り出してきたな。」
「そこは気にしなくてよろしい。」
「気になる言い方をするからだろ。」
「そんなことを言うなら、明日の天気の方がよっぽど気になる。」
「気になるの基準が違う。」
「明日は晴れ時々山芋だってさ。」
「めっちゃねっとりしてそうだな。」
「そんなことは微妙にどうでもいいんだよ。」
「結構大事なのかよ。」
「短い、と、長い、の、境界線はどこなのか、ってことなんだよ。」
「そんな明確な境界線なんてないんじゃないか?」
「境界線が無いなら、なんで、短い、と、長い、なんて分かれてるんだよ?分かれているなら、その分かれている部分に境界線があるはずなんだよ。」
「それは事実だけど、難しいとこだな…。」
「境界線が曖昧なのは、あまりよろしいことではないと存ずる。」
「存ずる…。昔の言い回しがブームなのか?」
「そんなに昔でもないんだよ?なんで昔だと思ったんだよ。」
「周りであまり聞かないから。」
「じゃあ、昔と今の境界線はどこなんだよ?」
「今日は難しいことばっかり聞いてくるな。」
「簡単と難しいの境界線は…」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「境界線言い過ぎ。」
「気になってることを言ってるだけなんだよ。今日は境界線が気になる日なんだよ。」
「毎日変わるのか。」
「365日変わるんだよ。」
「記念日みたいだな。」
「記念日と普通の日の境界線は、」
「何かが生まれたか生まれてないか。」
「それはどうだろう。」
「意見言ったら言ったでそんな風に言われるのか。」
「そんな風に言われるんだよ。」
「断言するのか。」
「境界線を求める日は、発する言葉もはっきりきっぱり意地っ張りになるんだよ。」
「意地っ張りだから全てに噛みついてきてたのか?」
「違う。」
「だろうな。」
「全てに噛みつくと顎が痛くなる。」
「物理的にじゃねぇよ。」
「物理的以外に噛みつくなんてことあるんだよ?」
「あるだろ。反論する的な表現で。」
「反論と正論の境界線は、」
「それを見つけ出すのは難しすぎないか?」
「そう?」
「人それぞれ、正論と反論は違うだろうし、時代が変われば正しいことも間違いも変わるし、一概にどこが境界線だなんてわからないだろ。」
「そもそも、正論と反論は反対語じゃない気がするんだよ。」
「お前が言い出したんだろ。」
意味の境界線は曖昧な方がよいかも。