きんけん
この作品はフィクションです。
「不思議なものがある。」
「どんな。」
「ベラボラドップルケンモロンソー。」
「不思議なものだな。」
「不思議なものなんだよ。」
「意味がわからないからな。」
「意味がわからないんだよ。」
「今テキトーに考えて言った言葉みたいだな。」
「今テキトーに考えて言った言葉なんだよ。」
「やっぱりな。」
「金券、というものがあるんだよ。」
「あるな。商品券とか。」
「お金の代わりになるチケットなんだよ。」
「そうだな。」
「不思議なんだよ。」
「何が。」
「お金そのものじゃダメなのかい?」
「あー。」
「3000円の金券を買って、3000円の買い物をして、3000円の金券を使う。現金でよくない?」
「そのパターンならな?」
「それ以外のパターンがあるのかい?」
「いろいろとな。大人にはあるんだよ。」
「大人の世界、ってやつかい?」
「まぁ、そうだな。」
「チョコレートにブランデーを入れて食べる的な世界だね?」
「まぁ、そうかもな。」
「蕎麦の最初の一口目はめんつゆをつけずに食べる的な世界だね?」
「まぁ、そうかもな。」
「お茶を注いだときに茶柱が立たなかったら、その日一日テンション上がらない的な世界だね?」
「それは違うっぽい。」
「どう違うんだよ?」
「それは、験担ぎ気にしすぎ世界。」
「大人ってのは、験担ぎを気にする生き物なんじゃないのかい?」
「人による。」
「そもそも、茶柱が立つ、のは、験担ぎ、なのかい?」
「正確には知らん。」
「知らんのに言っちゃうあたり、キミはあの世界なんだよ。」
「どれ。」
「知ったかぶりかもしれなくてもノリと勢いだけで喋っちゃう系世界。」
「長い。」
「長居?」
「誤変換勘違い世界ですか?」
「同居人。」
「なんだ。」
「なんでもかんでも世界をつければ良いってもんじゃないんだよ。」
「そりゃそうだ。」
「理解した?」
「した。」
「はい、じゃあご褒美。」
「なにこれ。」
「金券3000円。」
「こんな不思議なものよく持ってたな。」
「最近は子供でも金券を持ち歩く時代なんだよ。」
「そうか?」
「そんな時代だからこそ、現金を推奨したい。」
「なんなんだよ。」
「大事じゃん?現金。」
「大事だけども。」
「金券3000円と、現金30000円だったら、どっちが欲しい?」
「圧倒的現金。」
「ほらね?」
「今のは額の違いだ。」
「学の違い?学歴自慢は嫌味なんだよ。」
「誤変換勘違い世界かよ。」
平和的穏便世界に生きたいものです。