かみやすり
この作品はフィクションです。
「かみやすりじゃねぇかっ!」
「検温の時間です。」
「74℃。」
「前より上がってるし。」
「私はマグマだからね。」
「マグマだとしたら、低温が過ぎる。」
「そんなことはどうでもいいことはない。」
「ないのか。」
「マグマとかみやすりは切っても切れない関係。それこそ、ジャンガリアンハムスターとミネストローネの関係性に近い。」
「それは多分一生わからない。」
「わからなければわかるまでわけめがわかめ。」
「かみやすりがどうかしたのか?」
「かみやすりは、紙的な薄さを誇るざらざらしたやすりなんだよ。」
「だな。」
「実はだね、この、かみやすり、というワードが大事きわきわまりないんだよ。」
「きわが多い。」
「きわは多いに越したことないんだよ。」
「そうか?」
「例えば瀬戸際でしょ?」
「いきなりぎわじゃん。」
「そこはほら。あれなんだよ。」
「どれ。」
「かみやすりの特殊能力発動。」
「急なカードゲーム感。」
「自分の失言を削り取って無かったことにできる。」
「便利。」
「そんなわけで。」
「うん。」
「瀬戸際でしょ?」
「特殊能力は優秀でも使う人間が否だった。」
「しょうがないね。稲は大切だから。」
「大切だけど。」
「お米は大切なんだよ。和の心なんだよ。」
「うん。」
「喜ぶときの、わーい、という表現も、元を正せば、Y、なんだよ。」
「ざっといずあるふぁべっと。」
「おーいぇす。」
「和の心どこいった。」
「黒曜石の彼方へ。」
「お前好きだなそこ。」
「好きとか嫌いとか関わりなく、行っちゃうんだから仕方ない。仕方ない行っちゃうんだから。」
「逆にしてリピートしたことはスルーしよう。」
「りぴーとあふたーみー。かぼすカットソー。」
「急にどうした。」
「かぼすカットソー。」
「だから、」
「かぼすカットソー。」
「どうしたって」
「かぼすカットソー。」
「………。」
「かぼすカットソー。」
「…かぼすカットソー。」
「おっけー、かぼす玉ねぎ。」
「どういうこと?」
「夕飯に食べたいおかず第176位。」
「…かぼす玉ねぎ?」
「なんだそりゃ。」
「こっちが聞きたい。」
「まぁ、こんな状況でも、かみやすりがあればね。わけわからん会話を削り取って、無かったことにできるわけなんだよ。」
「便利。」
「りぴーとあふたーゆー。」
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
「………え、俺が先に言うの?」
「りぴーとあふたーゆー、だからね。あなたの後に繰り返す。それはまたあなた。そうすると、またもやりぴーとあふたーゆーが発動する。」
「無限連鎖じゃねぇか。」
「おめでとう。」
「めでたくない。」
「かぼす玉ねぎ、夕飯に食べたいおかず第175位にランクアップおめでとう。」
「それはおめでとう。」
玉ねぎスライスのかぼすポン酢がけ、なら、さっぱりしてそう。