ひとみしりなおとな
この作品はフィクションです。
「うちの作者だね。」
「一言目から現実をぶっこんでいくスタイル。」
「人見知りな大人。うちの作者なんてのは、その道のトップランナーだからね。」
「全然かっこよくないから。人見知り界のトップランナーとか。」
「でも適度な人との繋がりは求めるんだよ。」
「めんどくさ。」
「そんなもんなんだよ。うちの作者だもん。」
「そんなもんか。」
「こないだ鼻で阿波おどりをしていたゴールデンレトリバーがいてね、」
「急に何の話?」
「うちの作者の話しても盛り上がらないから盛り上がりそうな話題を提供したく。」
「それが、鼻で阿波おどりをしていたゴールデンレトリバー?」
「そ。」
「………どういう状況?」
「まぁざっくり言えば、見なかったことにしよう、な、状況。」
「そんな感じなんだ。」
「言葉だと割と陽気なんだけどね。いざ実際に見てみるとなかなかの衝撃よ。」
「そんなにか。」
「あの飼い主は間違いなく人見知りなんだよ。」
「なんで。」
「飼ってるゴールデンレトリバーが鼻で阿波おどりを踊っちゃうってことは、飼い主が人見知りな証拠なんだよ。」
「証拠の根拠が皆無なんだが。」
「お、なんかカッコいい響き。」
「どこが?」
「ちょこんとそんきょして6日、くらいカッコいい。」
「…そんきょ、って、なんだっけ?」
「武道でやるやつ。」
「曖昧だな。」
「大抵のことは、曖昧な方がいいんだよ。明確な答えを導き出すのは、数学者と厚着の誰かに任せておけばいいんだよ。」
「後者の曖昧さよ。」
「いいんだってば。大抵のことは曖昧な方がいいんだから。」
「状況によると思うけどな。」
「例えば?カレーライスと路地裏探訪の着地点を探すときとか?」
「うん、キミは少し熱を測った方がいい。」
「68℃ありました。」
「よく生きてるな。」
「私はマグマだからね。」
「マグマだとしたら低温が過ぎる。」
「ボブアートだね。」
「…ひょっとして、ビブラート、って言いたい?」
「言いたくはない。ボブアートって言いたい。」
「ボブアートって何だ。」
「人見知りな大人が嗜む趣味。あるいは趣味。」
「趣味なんだな。」
「違う。」
「なんなんだよ。」
「とまぁ、人見知りな相手には、こんな感じで話しかけてあげれば、相手の緊張もほぐれるんではないかな、と。」
「困惑させるだけだと思うが。」
「ちなみに、うちの作者はこんな風に話しかけられたら、愛想笑いをしながら距離をとるそうな。」
「普通だな。」
「普通に人見知り。」
「ダメじゃねぇか。」
で、鼻で阿波おどり、って、何。