やくそくのあのばしょ
この作品はフィクションです。
「はぁ〜…、ロマンチックだねぇ。もしくはロマンチック。」
「何が。」
「知りたいかい?あるいは知りたいかい?」
「めっちゃウザいけど教えてもらおうか。」
「そっかー。そんなに知りたいかー。逆に知りたいかー。」
「今日の夕飯はカレーをやめてピーマンにします。」
「ごめんなさいすいませんわたしがわるかったゆるしてくださいもうしません。」
「謝罪の勢いの強さよ。」
「約束のあの場所、なんだよ。」
「…はい?」
「ロマンチックじゃない?」
「はぁ。」
「あるいは蟹鍋大三昧じゃない?」
「唐突に美味しそう。」
「何年か、あるいは何十年か。お互いに歳を重ねて姿は変わっても、約束のあの場所が二人を繋いでいるんだよ。」
「…あー、なんかあるな、そういうの。」
「ロマンチックじゃない?」
「まぁな。」
「あるいは蟹殻大散乱じゃない?」
「もっと丁寧に食べやがりください。」
「同居人にはあるのかい?そんな約束の場所。」
「残念ながら特に無いなぁ。」
「なーんだ。それじゃあ、蟹はたこ焼きだね。」
「どういうこと?」
「私にはねぇ、あるよ?」
「約束の場所?」
「もつ煮込み。」
「もちろん、って言いたかったのかな?」
「52箇所くらいね。」
「多いな。」
「約束は多ければ多いほど最初の方の約束を忘れるんだよ。」
「ダメじゃねぇか。」
「約束の場所に指定される場所には、大抵何か、目立つシンボルが存在しているんだよ。」
「銅像とか樹木とか?」
「教頭。」
「そうそう。って言いたかったのかな?」
「私の選んだ約束の場所は、なかなかだぜ?」
「ほぉ?」
「なかなか過ぎてしゃかしゃかだぜ?」
「ほぉ???」
「釈迦釈迦からの菩薩菩薩だぜ?」
「ほぉ?????」
「どうだ。逆転勝ちだろ?」
「うん、そーだね。」
「諦めてんじゃないよっっ!!!」
「諦めるしかないだろっっ!!!なんだよ!?釈迦の菩薩が逆転勝ちって!?どう受け止めればいいんだよ!?」
「とりあえず無視します。」
「すんなっ!!!」
「うるさいんだよさっきから。普段の南南西から6ヤードくらいうるさいんだよ。」
「基準がわからん。」
「基準は約束のあの場所に埋めてきました。」
「今すぐ掘り起こしてこい。」
「掘り起こしたが最後、貝塚の貝が全て復活するけどよろしいか?」
「やめておこうか。」
「それがキミのためであり、貝塚のためでもある。」
「ところで、結局、お前の約束の場所ってのはどこなんだよ。」
「三丁目。」
「どこの。」
「全ての。」
「52箇所で収まらないと思うんだが。」
そんなロマンチックなこと、なかなか無いですけどね。蟹は食べたい。