つうのたべかた
この作品はフィクションです。
「突然ですが。」
「突然どうした。」
「私、日比野転々、食通になりました。」
「そりゃおめでとう。」
「ありがとうございます。」
「で?食通になったら何か変わるのか?」
「そりゃあ変わるんだよ。今までの日比野転々は、ただ美味しいものを食べて美味しがっていればよかった。ただそれだけでよかった。なぜなら私、可愛いから。」
「自分で言うかね。」
「しかっしながら!食通になったこれからの日比野転々は、食通として、通な食事をしなければならないんだよ。何故なら私、可愛いから。」
「可愛さ関係ないねぇ。」
「世の中には様々な料理があるけれど、普通の食べ方と、通の食べ方がある。これは、全ての料理に存在する。何故なら私、可愛いから。」
「まだ同じボケを乗せてくるか。」
「そんなわけで私は可愛い。」
「さすがに重ねすぎでは?」
「うな重?」
「言ってないぞ?」
「よろしい。では、通のうな重の食べ方をお教えしよう。」
「聞いてないぞ?」
「まずね。通は鰻屋さんに徒歩で行くから。セスナ機とか使わないから。」
「普通そうだろ。」
「で、鰻屋さん入ったら、席ついて、水飲んで、山椒飲んで、手を拭いて、」
「しれっと山椒を飲まないでいただきたい。」
「手を拭きつつ山椒を飲んで、」
「飲まないでいただきたい。」
「うな重が来るのを待つわけだよ。通だから。」
「通じゃなくても待つだろ。」
「で、うな重が来たら、それをアイテムボックスに入れて、」
「ん?」
「三段山のダンジョンに向かうわけだね。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「三段山のダンジョンってなんだ。」
「推奨レベル28のダンジョン。」
「そういうことを聞いてるんじゃなくて。」
「主な出現モンスターは、針山小僧、流し目小僧、子像小僧。」
「小僧ばっかり。」
「あつらみの里へ抜けるためのダンジョンだから、ボスは存在しないぞ。一安心だね!」
「それは安心だね!………じゃなくて。」
「何かね?」
「あつらみの里って何だ。」
「唇から衝動的に零れ落ちた言の葉の連なりだが?」
「要するに思い付きで言っただけ、ってことだな?」
「肯定的。」
「あと、通のうな重の食べ方どこいった。」
「………。」
「………。」
「…なんだっけ?」
「おい。」
「まぁまぁ焦らない焦らない。焦ってもいいこと多少はあるよ。」
「あるのかよ。」
「通のうな重の食べ方とは、まさにここ!」
「?」
「三段山のダンジョンの最深部で食すことなんだよ!」
「…なんで?」
「命の危機を感じることは最高の調味料だからなんだよ。」
「緊張感と警戒心で味どころじゃなくなると思うけどな。」
毎週日曜日投稿、うっかり忘れてた…