りゃくご
この作品はフィクションです。
「正式名称と、略語。」
「毎度毎度ながら急にどうした。」
「人間って生き物はね。まー、正式名称を省略して呼ぶのが大好きな生物でございまして。」
「誰ですかあなた。」
「例えば、コンビニとかね。」
「確かに略語だけど。」
「正式名称はコンビニウムね。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「コンビニウム?」
「うん。」
「何そのアルミニウムみたいな物質。」
「お金を包んでこねれば、何にでも変形できる万能物質。」
「夢の物質見参。」
「1000円札を包んでヘリポートを造ろう。」
「規模。」
「あと、スマホね。」
「略語だな。」
「正式名称はスーパーマーケットホームセンターね。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「なにその子供がつけたみたいな名前。」
「とりあえず名前長くするとかっこいい的な?」
「はぁ。」
「でもすぐに正式名称忘れてしまう的な?」
「ふむ。」
「最終的には、あれ、で、片がついてしまう的な?」
「ほぉ。」
「的な。」
「的な。」
「それこそが、スーパーマーケットホームセンターユニバース。」
「早速変わっているのだが。」
「略してマセンタ。」
「インクの名前みたいだな。」
「それから、SNS。」
「略語だな。」
「正式名称は酢味噌入りの桜餅ね。」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「美味しいのか?」
「美味しいよ?」
「美味しいのか。」
「美味しいのだ。」
「でも一つ疑問があるんだけど。」
「一つどころじゃない気がするんだけどね。」
「お前がそれ言っちゃダメだろ。」
「それで疑問とは?」
「SNS、が、酢味噌入りの桜餅、だとすれば、だ。それぞれの文字の配分は、酢味噌入り、の、桜餅、ってことだよな?」
「そうなんだよ。」
「の、の負担、でかくない?」
「そう?」
「一文字で一文字って、それは略語的にダメなやつだから。」
「そんなルールあったっけ?」
「最後に、」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「もう最後?」
「もう最後なんだよ。」
「略語って、もっとたくさんあったような気がするんだけど。」
「こんなん延々続けてても一円の得にもならん。」
「それ絶対言っちゃダメなやつ。」
「それにどっちにしろ、略語って4つしかないし?」
「んなわけない。」
「そんな4つ目の略語は、蚊、ね。」
「それ略語なのか?」
「正式名称は戦略的血液吸収用生体兵器『蚊-KA-』。」
「なんの戦略だよ。」
「輸血。」
「命の尊さ。」
世の中、略語だとは思われていない言葉もいろいろあるんだろうなぁ。