おくれます
この作品はフィクションです。
「おくれます。」
「急にどうした。」
「電車が遅延したときに言う言葉。」
「遅れます、か。」
「そうそう。」
「それがどうした?」
「おくれます。」
「何が。」
「メール送信が可能な状態。」
「送れます、か。」
「そうそう。」
「それがどうした?」
「おくれます。」
「何が。」
「プレゼントの要求に対しての解答。」
「贈れます、か。」
「そうそう。」
「それがどうした?」
「くれ。」
「プレゼントを?」
「うん。」
「急に?」
「うん。」
「用意してない。」
「つまりそれは?」
「贈れない。」
「そういうこと。つまりはそういうこと。」
「どういうこと?」
「用意してないプレゼントは贈れない。書いていないメールは送れない。その逆に、用意しているプレゼントは贈れます。書き終わったメールは送れます。」
「うん。当然のこと言ってるだけだな。」
「ちゃんと文章の校正はやったのかぁっ!?」
「急にどうした。」
「人様に送る文章は、送信ボタン前に誤字脱字チェック。これ基本!」
「まぁ、そうだけど。」
「そんなことも出来ないからキミはあれがそれなんだよ!」
「どれがなんなんだよ。」
「黄桃は黄色よりもオレンジっぽい色味。」
「缶詰か。」
「缶詰の詰め合わせを贈れます。贈りますか?」
「誰に。」
「やみのりさん」
「あー、」
「久しぶりだし。」
「三年ぶりか。」
「そうそう。入学式以来。」
「元気かな。」
「多分やつれてる。」
「大変なんだな。」
「気配り大変な仕事だからね。」
「今度差し入れでも持ってくか。」
「だったらあれがいいよ。」
「何?」
「コットン。」
「生地?」
「欲しいんだって。」
「珍しいな。」
「持ってってあげてよ。」
「わかった。」
「はぁ〜、それにしても、」
「なんだ?」
「誰なんだろ、やみのりさんって。」
「知らん。」
「缶詰贈る話だったのにコットンになってるし。」
「いっそコットンの缶詰でも贈るか。」
「いいね。」
「いいのかよ。」
「柔らかいから頭に当たっても安心。」
「缶の部分の話?」
「コットン製の缶。良くない?」
「何入れるんだよ。」
「プライスレス。」
「ザッツ意味不明。」
「まぁ冗談は倍々に増やすとして、」
「カオス。」
「食べたいよね。」
「何を。」
「オクレマスの刺身。」
「魚?」
「世にも珍しい降格魚なんだよ。」
「出世魚の逆パターン。」
「だからこそちゃんと文章の校正はやったのかぁっ!?」
「情緒。」
「貴様も降格させてやろうかぁ!?」
「遠慮させていただきます。」
本当、メールの文面の再確認、マジで大事。