けいやく
この作品はフィクションです。
「恐ろしい…。」
「何が。」
「とんでもなく恐ろしい話を聞いてしまったんだよ。」
「どんな。」
「聞きたい?」
「うん。」
「本当に?」
「うん。」
「絶対?」
「…絶対ではない。」
「じゃあやめとく。」
「そうか。」
「そういう契約だからね。」
「ん?」
「話は変わるけど間欠泉ってさぁ」
「ちょっと待て。」
「何?」
「契約?」
「うん。」
「どんな。」
「相手が絶対に聞きたいと言ってこない限り喋らないっていう契約。」
「誰としたんだよ、そんな契約。そもそも何のために。」
「理由聞きたい?」
「うん。」
「本当に?」
「うん。」
「絶対?」
「絶対。」
「なんで?」
「そんな意味わからん契約する奴が、どんな奴で、何を考えている奴なのか気になるから。」
「なるほど。」
「うん。」
「じゃあ話せない。」
「なんで。」
「そういう契約だからね。」
「ん?」
「話は変わるけど間欠泉ってさぁ、」
「ちょっと待て。」
「何?」
「契約?」
「うん。」
「どんな。」
「二つ以上の理由を提示してくる相手には話してはいけないっていう契約。」
「誰としたんだよ、そんな契約。そもそも何のために。」
「理由聞きたい?」
「うん。」
「本当に?」
「うん。」
「絶対?」
「絶対。」
「なんで?」
「そんな意味わからん契約をする奴が、どんな奴なのか気になるから。」
「なるほど。」
「うん。」
「ところでキミは、カレーライスに納豆を入れるタイプの人?」
「入れない。」
「じゃあ話せない。」
「なんでだよ。」
「それで間欠泉ってさぁ、」
「それもなんでだよさっきから。」
「何が。」
「その何がなんでも間欠泉の話をしたいスタンスはなんなんだよ。」
「理由聞きたい?」
「絶対聞きたい。間欠泉の何をそんなに語りたいのか知りたい。カレーライスに納豆を入れる。」
「なるほど。」
「どうだ。」
「話せない。」
「なんでだよ。」
「その、これでどうだ顔がムカつくから。」
「契約じゃないのかよ。」
「同居人。」
「なんだ。」
「そんな、契約は、無い。」
「ゆっくり言うなムカつくから。」
「だって無いものは無いんだよ。無いものを有ると言ってのけるのは、契約した人間にしか出来ない所業。」
「そんなことはないだろ。」
「で?」
「ん?」
「何の話だっけ?」
「お前がとんでもなく恐ろしい話を聞いた、って。」
「あーあー、なんかそんなことを契約的に言った気もする。」
「契約的に言うって何だ。」
「聞きたい?」
「………聞かなくていいや。」
「きーけーよー。つーまーらーなーいーだーろー?」
「だってまた契約がどうこうの話になるんだろ?もう疲れた。」
「そんな疲れた君のために、薬草入りケーキを作ってみた。」
「いつの間に。」
「略してひっくり返せばケー薬。」
「強引。」
話は終わったけど間欠泉ってさぁ…