きゃくじん
この作品はフィクションです。
「もしも。」
「うん。」
「客人、が、キャーク人、だったら、どうする?」
「開始数秒ではじめまして。」
「そんなもんだよ。人生だもの。」
「で?」
「ん?」
「キャーク人ってなんだ。」
「地球侵略を目論む悪の宇宙人。」
「それはまたベタな宇宙人だな。」
「ガチじゃない方だからね。」
「特撮か。」
「で、なんだよ。ある日やって来た客人がキャーク人だったらどうするんだよ?」
「どうするって言われてもなぁ。どうしようもなくないか?」
「同居人。」
「なんだ。」
「残念ながらセーブデータが消えてしまいました。」
「なんの。」
「キャーク人相手にどうしようもないとか言っちゃったら、そりゃあ消えちゃいますよセーブデータ。」
「だからなんの。」
「人生の。」
「想像以上に重要だった。」
「そんなもんだよ。人生だもの。」
「でもさ。」
「ん?」
「よくよく考えたら、人生にセーブデータなんてなくないか?」
「あるんだよ。」
「知らなかった。」
「まぁ、ほとんどの人間は人生のセーブデータのことを知らないからね。人生はやり直せない、って思い込んでる。」
「本当にやりなおせるなら画期的だな。」
「でしょうよ。」
「どこにあるんだ?」
「黒曜石の彼方に。」
「どこだよ。」
「明後日の曲がり角に。」
「だからどこだよ。」
「あなたがくれた希望の道筋の先に。」
「もっと具体的に。」
「左。」
「ざっくりが過ぎる。」
「セーブデータは大抵左にあるものだと、全国左協会が定めているんだよ。」
「じゃあロードは右か?」
「ロードは道。」
「そっちのロードじゃない。」
「話が脱線しているんだよ。」
「ごめんなさい。」
「とかくに、だ。」
「とにかく、だ。な?」
「そんなセーブデータを消してしまうのがキャーク人の悪行なんだよ。」
「それは恐ろしい。」
「どうすれば守れるか。」
「どうすれば、って言われてもな…。具体的にどうやって消してるのかもわからないし、対策の立てようが無い。」
「そんなあなたにオススメの対策法がこちらです。」
「そんなのがあるんですか。」
「ズバリ、客人を家に入れないこと!」
「全員追い返せと?」
「誰が来ても居留守使えば大丈夫なんだよ。」
「いやいや、それは無理じゃないか?大事な用事がある人とか、宅配便とかあるだろうし。」
「大事な用事なら証拠の残るメールで送った方が早くて現実的だからそうしてもらえばいいし、宅配便なら再配達で時間指定したり自分で取りに行ったりすれば万事解決。」
「友達とかは?」
「作らなければオッケー。」
「孤独。」
「セーブデータを守るためには代償が必要なんだよ。」
「………ん?」
「どした?」
「ふと疑問に思ったんだが…。そのセーブデータって、誰が、どのタイミングでセーブしてるんだ?」
「茎ワカメ食べるとセーブされます。」
「限定的。」
「そんなもんだよ。人生だもの。」
「人生は茎ワカメなのか。」
「そう。」
「断定しちゃったよ。」
「だから、茎ワカメをお土産に持ってくる客人なら、家に入れてもセーフ。」
「今のところ、その経験はない。」
「なら、孤独を受け入れるんだよ。」
「セーブデータを守るリスク。」
「そんなもんだよ。人生だもの。」
「人生を軽く語るな小学生。」
宇宙人…。いるのですかねぇ…。