だいぜんてい
この作品はフィクションです
「前提、というものがあるね。」
「あるな。」
「何かを行う前に、必ずそうなっているべきこと、あるいは、もの。」
「まぁ、そんな感じか。」
「しかしながら、だ。前提よりもさらに強力な前提。大前提、というものが、この世には存在しているらしいんだよ。」
「言葉としては、あるな。」
「どれくらい強いんだい?」
「は?」
「前提と比較して、大前提は、どれくらい強いんだい?」
「どれくらい、って言われてもなぁ…。」
「あれかい?鶏ささみと豚ロースくらい?」
「その強さの比較はいまいちわからない。」
「マカロニとマカロンくらい?」
「それ言葉が似てるだけ。」
「アジフライとイカフライくらい?」
「両方好きだから比較したくない。」
「口内炎と歯肉炎くらい?」
「風邪予防も歯磨きも両方大事。」
「ちょっと待って。」
「なんだ。」
「後半ただのキミの感想になっているんだよ。」
「それは仕方ないだろ。人は個人の価値観でしか、物事を語れない。」
「大前提として、どれくらい強いのかの比較、ということを忘れられては困るんだよ。」
「いま自然と使ったな。大前提。」
「あ。」
「そこ、前提、じゃなくて、大前提、って言ったのは何でだ?」
「言葉の響き的に?」
「だとすれば、それが答えなんだろうな。」
「どれくらい強いのか、じゃなくて、単に言葉の響きの良さ?」
「そもそも大とか超とか激とか爆とか誇張する単語ってたくさんあるけどさ。そんなの使う人間のさじ加減だろ?人によって使いたい言葉のイメージなんて変わるんだからさ。」
「おぉ、…おぉ?」
「なんだ。」
「なんか妙に説得力あるっぽいけど、なんか薄っぺらい気がする。」
「なんだそれ。」
「凄く当たり前のことを言ってるだけって気がするんだよ。」
「失礼な。大前提として、当たり前のことが当たり前にあるからこそ、ボケることが許されるのだぞ?」
「出た、大前提。」
「やはり、つい使ってしまうな。」
「やっぱり言葉の響きがいいんだよ。大前提。」
「だな。」
「何の話だっけ?」
「大前提として、それを忘れちゃダメだろ。」
「ふむ。つまり、大、を付けると、なんか語感が気持ちよくなるっていう話だね。」
「そんな話だったか?」
「そうだったんだよ。だから、大福餅はもともと福餅だし、」
「あ、それはなんかそうっぽい気もする。」
「大黒天はもともと黒天だし、」
「急に神様をいじるな。」
「大学生はもともと学生だし、」
「範囲広がりすぎだろ。」
「大家族はもともと家族だし、」
「もともともなにも最初から家族だ。」
「代理店はもともと理店だし、」
「字が違う。」
「ダイヤモンドはもともとヤモンドだし、」
「漢字以外を持ち込んでくるな。」
「台はもともと存在しなかったし、」
「してたから。しっかりしてたから。」
「地球は丸くて青かったし、」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「大どこ行った。」
「黒曜石の彼方へ。」
「どこだよ。」
「左。」
「ざっくりが過ぎる。」
「大がついて語感が気持ちよくなるものは、大抵左から現れると決まってなどいない。」
「いないのかよ。」
「決まっていてたまるかそんなもん。」
「急に口悪いな。」
「間違えた。」
「なら訂正してくれ。」
「決まっていてたまるか大そんなもん。」
「無理に入れるな。」
てことは、大変、は、もともと、変、だったのか。