こんせんと
この作品はフィクションです。
「あのコンセント。」
「急にどうした。」
「あのコンセントに、」
「コンセントに?」
「とろろ芋を流し込みたい。」
「好奇心が生み出す悲劇。」
「やっていい?」
「いいわけないだろ。」
「なんで?」
「壊れる。」
「何が?」
「コンセントが。」
「コンセントはとろろ芋に弱いのかい?」
「とろろ芋にと言うか、流し込まれるのに弱い。」
「バーゲンセール?」
「なんでそうなった。」
「人の波に流し込まれるのがバーゲンセールの常というもの。主婦力の恐ろしさを思い知らせる時が来たのだよ。」
「安売りの惣菜とか買うのか?」
「いや、コンセント。」
「そこまでして欲しいか?」
「いらないのっ!?!?!?」
「そこまで驚くことか?」
「だって!だって!だって!?だって!?だって?」
「?」
「新メニュー、チキンダッテ。」
「急にどうした。」
「アジフライにタイ風ふりかけを振りかけた一品。」
「それはもはやアジフライだ。」
「いやはや。」
「?」
「キミは浅はかだよ。ジャングルジムに引っ掛かっているブラウン管テレビくらい浅はかだよ。」
「浅はかさを図る基準の不自然さよ。」
「なんのためにタイ風ふりかけを振りかけていると思っているんだね?」
「ふりかけだけでアジフライが別物の料理に変わるのか?」
「それを可能にするのが、このタイ風ふりかけ。」
「ちなみにだけど、何味なんだ?」
「タイ味。」
「ざっくりが過ぎる。」
「だいたいわかりそうなもんじゃん?なんとか風、って言われたら、なんとなく味のイメージ沸くじゃん?。日本風、とか、欧風、とか、インド風、とか、偏西風、とか、」
「そのパターンのボケは絶対に入れてくると思ってた。」
「とりあえずやっとかないとね。怒られるから。」
「誰に。」
「かいつまんで星人。」
「誰。」
「全ての事をかいつまんで説明することを是とする生命体。」
「重要な話が出来なさそうだな。」
「現在あなたの目の前にいます。」
「え?」
「私が。」
「お前はかいつまんで星人なのか?」
「え?」
「ん?」
「………キミ。」
「なんだ。」
「…疲れてる?」
「ある意味、金曜日の昼前より疲れてる。」
「かいつまんで星人とか、そんなのいないんだよ。」
「知ってた。」
「いるのは、ありきたり星人なんだよ。」
「はじめまして。」
「全ての事をありきたりな説明で片付けることを是とする生命体。」
「決定的に話がつまらなさそうだな。」
「あ!」
「なんだ。」
「コンセントにさ。かいつまんで星人と、ありきたり星人を流し込んだらどうなると思う?」
「まず流し込むな。ていうか、流し込めるのか?」
「あいつら体長3ミクロンだから。」
「予想よりも小さすぎた。」
昔、プラグのことをコンセントと呼んでいた時期がありましたわ。