くものす
この作品はフィクションです。
「昨日木の枝と枝の間にクモの巣が張られているのを見てだねぇ。」
「ふーん。」
「そのとき思ったねぇ。あぁ思ったさ。」
「なんて。」
「宇宙から見れば、クモの巣も人の家も、どっちも肉眼では見えないんだろうなぁ、ってさ。」
「うん、まぁ…、そうだろうな。」
「肉眼って、あれだよね。」
「うん?」
「目を移植された肉まんだよね。」
「違うな。」
「そのとき思ったねぇ。あぁ思ったさ。」
「どのときだよ。」
「宇宙から見れば、肉眼も肉まんも、どっちも肉眼では見えないんだろうなぁ、ってさ。」
「うん、まぁ、そうだろうな。」
「残念!!宇宙船に他の乗組員と肉まんがあれば、宇宙でも肉眼で肉まんと肉眼を見ることが出来るのですっ!あるいは、出来るのですっ!」
「屁理屈じゃねぇか。」
「屁の理屈とは、また不可解なことをおっしゃる。屁に理屈があるのかねポンデマンくん。」
「どちら様でしょうか。」
「世界最古のタイムマシンを開発した人。」
「古いのか未来なのか、わかんないな最早。」
「……………現時点ではタイムマシンなんて存在しないから、当然未来ですけど?」
「冷めた目で見ないでいただけます?」
「夏場にはちょうどいいじゃん?」
「冷めた目で見られてもクールダウンは出来ないんだよ。」
「……………そうなの?」
「そんなこと初めて聞きました、みたいな目で見ないでいただけます?」
「クールダウンと言えば、クモの巣にもそんな効果があるらしいよ?」
「クモの巣でクールダウン?」
「キミが普通に歩いているだろ?」
「うん。」
「そしたらいきなり顔面にクモの巣がひっかかるだろ?」
「うん?」
「びっくりしてヒヤッとするだろ?」
「………うん。」
「話は変わるけど」
「変わるな変わるな変わるな。」
「なんでさ。」
「自分で言い出した話題なんだから、ちゃんと回収してから話題変えなさいよ。」
「私はそんな逃げの姿勢は見せたくない。」
「どこがどう逃げなのかの説明を求める。」
「とりあえず無視します。」
「しないで?」
「とにかくさ。クモの巣には無限の可能性が秘められているんだよ。」
「そんな話してたか?」
「クモの巣にも人の家にも人生にも、ね。」
「………。」
「………。」
「…なんか、かっこいいこと言ってやったぜ、みたいにドヤ顔してるけど。」
「文字媒体なのを良いことに、誤解を招くようなことを言うのはやめておくれ。クモの巣じゃないんだから。」
「どういうこと?」
「とりあえず無視します。」
「しないで?」
クールダウン大事。