かいだんじ
この作品はフィクションです
「かいだんじ、とはなんぞや。」
「急にどうした。」
「こないだ道端で寝聞きしたんだけどね?」
「一時停止。」
「なんぞ。」
「寝聞き?」
「うん。」
「道端で?」
「うん。」
「立ち聞き、ってのは聞いたことあるけど。」
「その、二段階進化バージョン、だね。」
「そんな進化は聞いたことがないのだけれど。」
「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。」
「知人が道端で寝転がって他人の話を聞いてる時点でどうでもいいことはないのだけれど。」
「まぁまぁ。そこは鰯の尻尾に免じて。」
「何に免じてるんだよ。」
「三丁目の彼はかいだんじだねぇ、って、マダム二人が話していたんだよ。」
「主婦の世間話か。」
「間違えた。」
「どこを?」
「マダメスト二人が話していたんだよ。」
「正解を不正解に修正してしまう、やってはいけないミス。」
「立ち聞きを二段階進化させたんだもの。マダムも二段階進化させなきゃならないんだもの。」
「つまり?」
「マダム、マダマー、マダメスト。」
「それは進化というかなんというか。そもそも存在しない単語だし。」
「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。」
「知人がわけのわからない英単語をさも当たり前かのように使用している時点でどうでもいいことはないのだけれど。」
「まぁまぁ。そこは鯵の尻尾に免じて。」
「だから何に免じてるんだよ。」
「で、結局、かいだんじ、とは、なんなのさ?」
「まぁ、そうだな…。話の流れからすると、快男児、だろうな。」
「怪談児?」
「はい。わざと言ってるな。」
「よくぞ見破った!!誉めてなどやらんっ!!!!」
「そこはせめて誉めてほしかったんだけど。」
「なんで?飢えてるの?」
「別に飢えてるわけじゃ」
「植えてるの?」
「何を。」
「鰯。」
「何で。」
「畑一面に植えられている鰯の尻尾。」
「見たくないわそんな光景。」
「鰯は嫌かい?」
「嫌だろ。」
「じゃあ鯵。」
「魚の種類の問題じゃない。」
「魚は嫌かい?」
「嫌だろ。」
「いい歳して、好き嫌いするとはよくないねぇ。」
「畑に魚が植わってるのが嫌だって言ってるの。」
「魚、の、尻尾、な!?」
「そこ、こだわるんだ。」
「こだわらなきゃしょうがないんだよ。なんてったって、私は快男児なのだから!」
「お前は男児じゃないだろ。」
「じゃあ怪談児でいいよ。」
「なんか怖いからやめとけ。」
夜中に目が覚めてしまうのをどうにかしたい…