さかみちまつり
この作品はフィクションです。
「知ってるかい?」
「何を?」
「今日はお祭りなんだよ。」
「へぇ。」
「坂道祭り。」
「坂道祭り?」
「坂道の坂道による坂道のためのお祭り。」
「そんなお祭りあるのか?」
「あるんだよ。あるいは、無いんだよ。」
「どっちだよ。」
「…………… 。」
「……………。」
「…………………………。」
「…………………………。」
「……………………………………………………。」
「……………………………………………………。」
「…………無いんだよ。」
「めっちゃためた挙げ句に無いのかよ。」
「残念ながら無いんだよ。」
「なんでそんなこと言ったんだ?」
「だって仕方ないんだよ。今日はお祭りだからね。」
「へぇ。」
「無いものをあるという祭り。」
「無いものをあるという祭り?」
「そう。」
「………その、祭り、ってものに、こんなことを言うのが正しいのかどうかはわからないが…、」
「うん。」
「それは、なんの意味がある祭りなんだ?」
「うん?」
「………。」
「………。」
「………。」
「この祭りに意味なんて無いんだよ?」
「え?…いやいや、」
「ん?」
「この祭りって、無いものをあるという祭り、なんだろ?」
「そうなんだよ。」
「それなのに、意味は無い、ってのは、祭りの趣旨に思い切り反してないか?」
「盲点っっっ!!!!!」
「声でかっ」
「いや〜、盲点盲点。まさかキミからそんな指摘が飛び出すとは思わなかったんだよ。」
「そんなに意外か?」
「詩的な指摘が飛び出すとは思わなかったんだよ。」
「そんなにポエムか?」
「成長したな、ポン助よ。」
「誰だよ。」
「じゃあ、一緒に行くか!」
「どこへ。」
「坂道祭り。」
「無いんじゃなかったのかよ。」
「無いんだよ。でも、あるんだよ。」
「どういうこと?」
「まず、無いものをあるという祭りに行くじゃろ?」
「そっちは普通にあるんだな。」
「そこで、坂道祭りを申請するじゃろ?」
「申請?」
「うん。」
「無いものをあることにしてくれ、って?」
「うん。」
「それで?」
「そうすると、坂道祭りがあることになるじゃろ?」
「よくわからないけど、そうなのか?」
「めでたしめでたし。」
「………。」
「………。」
「………で?」
「ん?」
「あることになったとして、それは、結局どうなるんだ?」
「いやいや。あることになったんだから、それでめでたしめでたし、なんだよ。」
「なんの意味があるんだ、それ。」
「意味なんて無いんだよ。」
「いや、だから。意味がないって言うのは、無いものをあるという祭りの趣旨に」
「盲点っっっ!!!!!」
「最後まで聞けよ。」
「成長したな、ポン助よ。」
「だから誰だよ。」
早く自由にお祭りを楽しめる平和で穏やかな世界になってほしい。そんな思いでこれを書いたり書かなかったり。