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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
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第91話 想定外の魔力

顔を洗い、歯を磨く。


キリッと鏡に映るイケメンマイフェイスが

今日もしっかりイケメンフェイスなことを

確かめてから再びベットに……


「ん」


戻ろうとしたその時である。


「おん?」


ふとした違和感。

例えるなら、2つ並べられた同じ写真から

些細な違いを見つけたような、

そんな小さな違和感に気がついた。


毛布に包まれるように隅っこで眠っているサナ。

床に腹を出して豪快に眠るアリア。


そして。


「……あれ?」


オリビアの姿が……見当たらない?


寝相が悪くてベットの下にでも潜り込んだか?

しかし下を覗き込んでいたがやはりいない。


(どこ行ったあいつ)


部屋のどこを見ても

オリビアの姿が見当たらなかった。

帰ったのか…?でもあいつの手荷物は

そこにおいてあるしなぁ。


『あぁ、オリビアちゃん?

オリビアちゃんなら…』


訝しんでいたそんな時。

完全に油断しきっていた俺の身に

一つの怪奇現象が起きたのである……!!



『オリビアちゃんならさっき外に出て行ったよ』


「!?!?!?!?」



……お分かりいただけただろうか?

そう、頭の中から、謎のもうひとりの声が

聞こえてきたのだ……!


(!?!?頭の中から声がする……!?!?)


そのあまりの怪奇現象に驚嘆も驚嘆!

まさか幽霊!?この部屋には幽霊が出るのか!?!?

お、俺の体は恐怖でガタガタ震えだした!!



『えっ、ええぇぇ……??僕だよ勇者だよ!』


「ゆう、しゃ……??」




………。

……。


ポクポク…チーン!


あぁっ!いたいた!

いたわそんなやつ!!最近影薄くて

すっかり忘れてたわ!!!


「あー、はいはい!お前ね!はいはい!」


むかーーしの友達に久しぶりに出会った時ばりの

ぼやけた記憶がようやく俺の中に去来する!


いたわー!そういや勇者が

俺の頭の中にいたんだったわー!


『あ、扱いがひどすぎる……。』


寂しそうにしょんぼり声を出す勇者。


いやいや、ジョークだって。

マジで忘れるわけないやん。俺は痴呆症か?

つーか最近ろくに喋らないお前が悪いんだよ。

もっとオリビアとかアリアとかに自分から

話しかけに行ってみろや。


『だ、だって喋ってもタケシ君にしか

僕の声聞こえないし…』


はいはいコミュ障乙。

そんで?オリビアはどこに行ったんだ?


『さぁ。外に出るとこまでは見たけど、

どこに行ったかはわからないよ。』


勇者は続ける。


『でも多分、どこか広い場所に

行ったんじゃないかな?』


はぁ?根拠は??


『なんとなーく、これから

練習やるぞーみたいな気力に満ちてたから。

広い場所で朝練でもやってるんじゃない?』


なんだその言葉覚えたてのちびっ子みたいな根拠は…。

これでもしも間違えてたら

マジ容赦しねーからなテメェくそ野郎。


『ぽ、僕にだけ辛辣すぎない……?』


下手の者には強く出る。

人間とはそういう者なのである。



✳︎



広い場所というと病院の中庭かねぇ…。


リハビリも兼ねて

松葉杖でテクテクと中庭に向かってみる。


オリビアに特段用事があるわけではないが、

流石に最近は体を動かなさすぎた。


オリビアを探すがてら、調子のいいうちに

かるーく運動したい気分なのである。


「おっ……」


いたいた。…って何やってんだあいつ。


勇者の言った通り、

中庭にオリビアが立っていた。


中庭の中央。

広い草原の中心で棒立ちで目を瞑っている。

何をするでもなく、中庭の真ん中に立っているのだ。


「……」


何やってんのあれ。

木になる練習?学芸会で木の役でももらった?

ずっと立ってるだけなんだけど。


なにやら知らないがえらく集中した様子だ。

話しかけるのも悪いので、機を見て待っておこう。



・・・

・・


……数分後。

オリビアは変わらず突っ立ったままである。


(まじであいつなにやってんの?)


いよいよ意図がさっぱりわからん。


(おいクソ勇者。

あいつ何やってんだとおもう?)


かれこれ3分くらい観察してるが、

マジでずーっと棒立ちしているだけなのだ。

宇宙人と交信でもしてんの?


『……』


頭の中の勇者に話しかける。

……が、この勇者野郎は、

あろうことか俺の発言を軽く無視しやがったのだ!!

あぁ?!おいコラ無視すんじゃねえ!!!


『……見てわからないの?』


わかんねーから聞いてるんだよ!!!


『……あれは魔力を高める呼吸の練習だよ。

相当に練られた魔力を感じるよ』


魔力を練るってなんやねん。

練りものか?かまぼこでも作るのか?


『……前も言ったけどタケシ君って

ほんとに魔法のセンスないよね。』


あぁぁぁぁ!?!?


『これだけ大きな魔力が目の前にいても、

ほんとになにも感じないなんて……。

逆にすごいことな気がしてきたよ』


はーーー全然感じないわー。

潜在的な魔力センスが高すぎて、

この程度の魔力じゃなにも感じないわー。

凡人の定規と俺の定規じゃスケール感違うのよ。


とんでもなくでかい定規で、

ちいちゃいミジンコを図ることできるか?

できんやろ?それと一緒だよ。


『言い訳の反射速度だけはすごいなぁタケシ君は…』



・・


『今彼女は魔力を練ってるのに集中してるんだよ。

魔力操作の修行の一つだね』


!!!!

あ、あいついつのまに魔法の練習の

やり方なんて知ったんだ…??


お、お、お、同じ平凡な農民としては、

抜け駆けされてるようで

ぶっちゃけソワソワしている心境である。


『といっても、今彼女がやってるのは

初心者向けの本を買えば

絶対に書いてあるような簡単なものだけどね』


そのあと勇者は、

呆れたような驚いたようなそんな調子で続ける。


『……まぁ、練度も密度も何もかも、

初心者とは程遠いけど…。


魔力を感じられる僕から見ると、

目の前で台風を見ているようなそんな気分だよ…』


"魔力を感じられる僕"ゥ……?

当てつけか……?

台風とやらを一つも感じられない俺への

当てつけか……??


『タケシ君ってところどころ

コンプレックスの闇が深いよね…』


そんなオリビアを遠くから

観察していた俺たちだったのだが……。


『相当な練度……ほ、ほんとにすごい練度だ……』


それから勇者は心配そうに続ける。


『でもこの練度はちょっとまずいかも』


あ?何がまずいんだ??


と、問いかけようとしたその時

ビビビビビ!とどこからともなく警告音が

聞こえてきたのだ。


【PIPIPIPIPI!!!!

緊急事態発生。緊急事態発生。

巨大な魔力を探知しました。

超上級魔法の発現が確認されました。】


「えっ」


【PIPI PIPI!!!

患者の方々は看護師の指示に従って

避難してください。

警護の方々は原因の調査を始めてください】


突如、病院中に響き渡るアナウンス。

あれ?これってもしかして……。


『か、完全にオリビアちゃんが原因だよ!』


あ、やっぱり?


『上級魔法の探査機に引っかかったみたいだ!

は、早く止めた方がいいよ!

じゃ、じゃないとまたメアリさんに……』


アァッ!!

またメアリに怒られる!!


大音量の警告音が鳴っても、

構わず集中し続けるオリビアに

慌てて駆け寄ったのだった。




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