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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第6章 はじめての冒険者らいふ!
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第87話 協力の強要

「いろいろなことがおざなりなまま、

事態が進んでしまった…。

まずはそのことを謝りたい」


神官は頭を下げて謝罪した。

俺は固い態度をくずすことなく、

淡々と相槌を返しておく。



「事態というのは具体的には

なんのことを言っていますか?」


「具体的には、君たちが教会所属の冒険者として、

依頼が通達されたことだ。」



"教会所属の冒険者"。

その言葉を聞いて、俺は昨日のことを振り返る。


入院してるにも関わらず、

中央議会にいきなり呼び出されたこと。

いつのまにか、教会所属の正式な冒険者に

させられていたこと。

いきなりたった1ヶ月の期間で

依頼を申し込まれたこと。


続々と思い起こされる昨日の記憶。

そして俺は、その時の素直な感情を、

ありのまま吐露することにした。



「あれには正直驚かされました。

正直私たちには教会所属という

意識がありませんでしたから」



神官は申し訳なさそうに続ける。


「そうだね…。

教会に所属するかしないかは、

結局曖昧なままだったから…。」


スキル授与式の後、

教会に呼び出された俺たちは、

教会所属の冒険者になるかどうか問われた。


そして俺が丁度返事をするかしないかの

そのタイミングで、魔人の襲撃にあったのだ。

なので、俺の返事は曖昧なままなのである。



「だから今日は

改めて君たちに問いに来たんだ。」



俺に向けていた視線を今度は

アリアとオリビアそれぞれに向ける。



「教会所属の冒険者になる意思が、

君たちにあるかい?」


「…… 」



あの時の問いを再び問いかけられる。

教会所属の冒険者にならないか、と教会に

問われた当時の自分を振り返……ろうとしたが、

俺はすぐにやめてしまう。


いや、つーか意思もなにもさぁ……。


「……中央議会の人たち、もとい、

王国の人たちは、すでに僕たちを

教会所属に冒険者だと認識してるんですよね?

そして僕たちは、その決定の元に既に多額の報奨金を

受け取ってしまっている。


ここで今、教会所属になることを拒否したとして、

ここまで進行してしまった事態を、

覆すことってできるんですか?」


「……」


神官は無言だった。

できるわけがねえ。というか、

できたとしてもやるべきじゃない。


追い討ちをかけるように、俺は言葉を紡ぐ。



「もしも仮に、既にそこまで決まったものを、

強引になかったことにすれば、

私達の信用もイメージもガタ落ちです。

教会への印象も悪いでしょう」


「それは……そうだね。

でも君たちがどうしてもと言うなら……」


俺は神官の言葉を遮るように、

片手の掌を向ける。


「……神官様。そんなできるかできないかの

領域の話ではなくて、現実的な話をしましょう。


今更、決まったものをなかったことにするのは

到底無理な話です。

できたとしても、それはするべきじゃない。

色んなところに迷惑がかかってしまう上に、

信用問題にも関わってしまう。


私たちが話すべきは、これからのこと。

これからをどうするかについて話すべきでは

ないでしょうか?」


・・


「……そうだね。その通りだ。」


心底申し訳なさそうにしている神官。


……さて。

クレームっぽく色々言ってるが、

ぶっちゃけ教会所属の冒険者に

なることに関しては全く抵抗はない。


それどころか、

教会所属の冒険者が一番無難な選択だろうし、

教会所属の冒険者は本望中の本望である!!


が、しかし、

そんな本音は伝えない。

とりあえず被害者ムーブには乗っておく。


"お前らの対応がクソなせいで、

俺たちは仕方なく教会所属の冒険者やってるんやで?"

というこの構図。


神官の申し訳なさそうな心情に乗じて、

とりあえず被害者ヅラしておけば、

多少のイニシアチブを掴めるだろう。


次なる段階に進むべく、俺は話を続ける。



「ではさっそく現実的な話をしましょうか。

まずは、今回受けた調査の依頼についてです」


それから俺は、

調査で分かったことをさらりと説明してから、

具体的な"協力体制"の話を振った。


ここまでの会話の中で、

俺が最もしたかった一番の話題を

ようやく神官に話し出す。


「調査範囲はとてもとても広大です。

おまけに納期は短く、しかし私たちは

未だ入院の身で動けません。」


「なので、何人か人を貸して欲しいのです」




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