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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第6章 はじめての冒険者らいふ!
87/120

第80話 男をダメにする幼女


・・・

・・


なぜ王国に直訴しないのか。

その理由を俺は長々と話して聞かせた。


そして一通り話を終えて、

アリアが一言、こう言ったのだった。


「話が長いわね」


「えっ」


「要するにこういうことでしょ?

タケシの力は何回も使える力じゃない。

でも、もしも王国や国民にこの力を知られたら、

無理矢理に何回も酷使されちゃーう。それはやだー、

ってことでしょ?」


「……まぁ、そういうことだな」


「そうならそう一言言えばいいのに。

タケシはくどくてダメね。ねーサナちゃん〜」


「え、あ、はい!

…え?い、いや。その」


サナを巻き込むな巻き込むな…。


✳︎


そしてアリアはベンチにもたれかかって、

んーっ!と背伸びして、パンと膝をはたいた。


「うん。聞きたい事も聞けたし私は満足かな」


アリアは飛び跳ねるように

ベンチから立ち上がる。


「じゃ、そろそろ帰りましょうか。

メアリさん心配しちゃうわ」


「えっ」

「ん?」


アリアのあっさり塩風味なその反応が、

正直釈然としなかった。

絞り出すように俺はアリアに尋ねる。


「……えらいあっさりしてるなオイ」


……反応それだけ?

議長に食ってかかった奴とは

思えないほどのサバサバ感である。



「そう?」


「あんなに怒ってたのが嘘みたいなんだが」


「あー……まぁ、怒ってたのは本当ね。

うん。さっきまでは確かに怒ってた」


アリアは俺をまっすぐ見る。


「タケシがもしも、言いたいことがあるのに、

無理して黙ってたら嫌だなーっていうのが

私の行動の発端なのよね。」


「でも今の話で、タケシが本心から

今のままで良いって思ってるのが伝わったわ。


タケシがこれでいい、って心から思ってるなら

わたしにこれ以上固執する理由がないのよ」



……なるほど。


「そうか……まぁ、お前がそれでいいなら

それでいいよ俺は」


「うん」


なるほどな。

つまり、今まであんだけ怒ったり

反論したりしてたのは、

全て俺が嫌な思いをしないようにするためってことか。


「……」


一通り聞いて、素朴に思う。


(こいつどんだけ俺のこと好きやねん……!!!)


さすがタケシ!さすタケ!と

連呼された時にも思ったけど、

こいつ絶対俺に気あるよな……!!!!


【ギュン!】

そして俺の口元が天を突かんと上を向く!


ニヤニヤ。ニヤニヤ。ニヤニヤ…!!

さながら…否。まさしく思春期男子のように

俺のニヤニヤは止まらない…!!

妄想ノンストップ。今俺の頭の中は

まさしく有頂天だった。


(え?どうする?これ絶対に気あるやつやん?

もしもこのままアリアに告られたら

俺どうしちゃう?!逆玉きたかこれ!?カーッ!)


思春期真っ只中!

16歳タケシは止まらない!

野暮&野暮。そして野暮キングの俺は、

どストレートにアリアに尋ねてしまったのだった!




「アリアってめちゃくちゃ俺のこと好きよな」




高まる期待。躍動する心拍音!

そしてアリアは、俺の顔を

しげしげと見つめながら答えたのだ!


「うーん……中の上……?」


「……」


ガバリと冷や水をぶっかけられた。

……え?なにそのガチっぽいリアクション。


全く照れる気配のないその表情。

モアイ像のように平坦なそのぶれないアリアの顔に

俺は愕然とした!!


(あれーーーーーーっっっっ!!)


好きじゃないの!?

あんなに俺のこと慕ってくれてる風なのに!?!?


(こ、ここここれじゃまるで俺が

勘違い系アイタタ男子じゃねーかぁぁぁぁ!!)


胸が!胸が痛い!張り裂けそうだ!

でもおちつけ!!ど、動揺を、け、気取られるな!!


そ、それから俺は、

クールにスマートに話題を変える!


「ま、ままままぁとにかくだ。

利害の問題で、サタケにされたことは

公にするつもりはないが、

あ、ああああいつにされたことは生涯絶対忘れねえ」


「ぜ、絶対にいつかやり返す。

その時はもしかしたら、アリアの…いやお前らの

力を借りるかもしらん。その時はよよよろしく頼むぜ」


「任せて!」「わかりました!」

(えー…復讐手伝うのはちょっと…)


そ、そそそれぞれの反応を確かめて、

それから俺たちは病院に帰ったのだったたた。



・・・・

・・・

・・



途中、俺たちは商店通りに立ち寄った。


(そういえば

"魔人倒してお疲れさん会"やってなくない?)


というオリビアの発言をきっかけに

今日はみんなでちょっとした宴会を

開こうという話になったのである。


商店通りで、俺たちはお菓子やらケーキやら、

嗜好品をたらふく買い込んだ。


✳︎


「"サナちゃん初めまして会"もまだやってないわね」


(そうだね。それもやらなきゃだね)


「え!」


買い物の最中、アリアとオリビアのそんな会話に、

サナが手をパタパタ申し訳なさそうにしていた。


「そんな!悪いですよ!」


「ううん。祝わせて頂戴サナちゃん。」

(うん。祝わせてほしい。)


「で、でも……」


渋るサナ。そんなサナに、

アリアはポツリと漏らすように語った。


「今更だけど……ごめんね?

サナちゃん、私たちの第一印象悪かったでしょう?」


「え?そんなことはないですが…」


(ううん。態度悪かったよわたし達。

あの時の私たち、色々勘ぐっちゃってたから…)


「そうね…」



あー…。

そういやそうだったかもなぁ。


今は極々自然に絡んでいる三人だが、

最初はそうでもなかったのだ。

極力距離を置いていたように思う。


まぁ、それも考えてみれば

仕方のないことだろう。


俺の病室にきてみると、

突然謎の幼女がベットの横に座っている。

「この子はどなたさん?」と聞かれても、

当時、この複雑な関係をどう答えるべきか

悩んだ挙句、俺は結局はぐらかすしか

できなかったのだ。


一体何者かもわからない少女の存在。

当時の二人の様子を振り返ると、

どう接すればいいかわからない、

という感情がありありと見えるそんな態度だった。


「タケシにサナちゃんのこと聞いても

ちゃんと答えてくれなかったでしょ?」


「…そうだったな。すまん。でもあれは」


「うん。わかってる。

たった今、タケシから事情は聞いたからね。

でも私たちはあの時……ねぇ?」


(うん。サナちゃんのこと

タケシの隠し子だと思ってたもんね)


「「隠し子!?」」


ん、んなアホな。



「私たちがサナちゃんと会ったのが、

ちょうどタケシが眠っているタイミングでね?」


(眠ってるタケシの横で、

タケシの顔を心配そうに見つめるサナちゃんを見て、

わたし達、瞬間的に思ったんだよ。)


「きっと、タケシの怪我を知って、

王都で離れ離れに暮らしてた隠し子が、

こっそりお見舞いに来たんだ、って」


(でも、それをタケシは知らない…。

タケシは隠し子がいることすら知らない。

サナちゃんは認知されてない子供だったの。


だから、サナちゃんは面と向かって

会うわけには行かず、

タケシの眠ってる時だけ、こっそり

お見舞いに来てたんだって…)


(だからわたし達、最初、距離置いてたんだよね。)


「二人の時間を邪魔しちゃダメだ、って思ったもん」


(うんうん)


「……」


なんと言えばいいのかわからない。

だから言葉を選ばずそのまま言った。


「お前らあほだろ」



✳︎



アリアはサナに目線を合わせてしゃがみ込む。


「最初の頃はそんな感じで

距離を置きがちだったから…。


もしかしたら、それで嫌な思いさせたことも

あったかもって思ってね?

その謝罪も込めて、サナちゃん歓迎会を開きたいの」


(ダメ、かな?)


二人はサナの前にしゃがみ込んで

手を握りながらお願いする。


「あ、あの……」


じーーーっ……


「は、はい。あの、う、嬉しいです……。

ほ、ほんとに…嬉しいです………っっっ」


手を繋がられながら、

サナは顔をうつむかせて、恥ずかしそうにそう告げた。


そう聞くと、オリビアもアリアも

顔をパッと明るくさせる。


「じゃあサナちゃん!

今日はサナちゃんが主役の宴会よ!

サナちゃんは特別に

3つまで、好きなものを買っていいからね!


「!わ、わかりました!

ありがとうございます!」


そんな微笑ましいやりとりを見ながら、

俺もにこやかに伝えた。


「じゃあ俺も

3つ好きなもの選んでくくるな!」


「え?」(えっ)


「よし。いくぞサナ!

お菓子コーナーはあっちだ!」


「は、はい!」


「人形付きのめちゃくちゃ高いお菓子だけ買うぞ!

アリアは金持ち貴族だからいくらでも

買ってもらえるはずだ!いくぞ!!」


お菓子コーナーに駆け出そうとする俺たち。

が、アリアがそれを引き止めた。


「いや。なんでタケシも

お菓子買ってもらう気満々でいるの?」


「……はぁ?」


何言ってるんだこいつ…。


「いや、そりゃそうだろ。

だってこれ、"魔人倒してお疲れさん会"

でもあるんだろ?

一番体張った俺も、お菓子を奢ってもらって

しかるべきだろ?」


「……」

(……)


……なんだよその無言は


(……タケシは本当にすごいね)

「すごいぜ」


「オリビアの報奨金をほぼほぼ全部

自分のお見舞いの果物に使わせただけはあるわね」


「いや、待て。それはちがう。誤解がある」


アリアとオリビアは、

ドン引きしたような目で俺見下ろす。


「わたしタケシの分は奢らないわよ」

(わたしももう奢らない)


なんだよ!サナだけかよ!!!


車椅子に乗りながらプンプン切れる俺の手を、

そっとサナが握りこむ。


「タケツ様、大丈夫です!」

「あぁ?!」


「私のお菓子3つのうち1つは、

タケシ様が選んでよいです!」


「……」

「やったぜ!!!」


やった!俺も奢ってもらえるやん!!!

"うわ…子供にたかってる…"とどこかから

そんな声が聞こえたが気にしない!



「アリア様。オリビア様。

それでも大丈夫ですか?」


「……はぁ。仕方ないわね。いいわよ」


(サナちゃんは旦那さんを

ダメにする奥さんになりそうだね!)


「ええっ!そ、そんなことないです!」



そんな三人の話をほったらかして、

俺は意気揚々と、誰よりも高い高級お菓子を手にして

レジへと並んだのであった。


・・・

・・


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