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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第6章 はじめての冒険者らいふ!
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第76話 調査の依頼 #2



「それで議長様。

今日はどう言ったご用事で

我々をお呼びしたのでしょうか」


と、言いつつも、

用事は大体なんとなーく察している。

どうせ魔人事件の詳細報告しろとかそんなんだろ?


「うぬ。それはじゃな」


こっちは怪我人なんだからはよ済ませて

早よ帰りてえわ。



「貴殿らに依頼があって

ここに呼んだ次第であるぞよ」



…………い、依頼?

予想もしていなかった単語に面食らう。

目をパチクリさせながらオウム返しした。



「依頼、ですか」


「うぬ。

教会所属の冒険者としてのお主らへの

国からの依頼でおじゃる」


「……」



『教会所属の冒険者』

なんとも馴染みのない単語である。


たしかに1週間ほど前、俺たちは

教会所属の冒険者になるならないの話をした。


が、あの後あまりにも色んな事が多すぎたので、

自分たちが教会所属の冒険者で

あるという自覚が微塵もない。


だから正直な話、

教会所属の冒険者と言われてもすげーーピンとこない。

それ俺たちに言ってんの?と素朴に思う。


「……」


というか、俺たちって結局

教会所属になるって話になったんだっけか…?


「……なるほど。依頼でしたか」


が、そんな曖昧なことを言えるわけもないので

適当に相槌を打つ。


てっきり魔人事件の件について、

詳しく聞かれるものと思っていた。拍子抜けである。



「それでどう言ったご依頼でしょうか?」


「地方で起きている日照り問題を

調べて欲しいのじゃ。」


「日照り……はぁ、なるほど」


「詳細は、後で教会に送るのじゃ。

詳しくはそれを読んでもらえばよい。」


「か、かしこまりました。」



なんとも実感のない話だが、

仕事の依頼である。俺は切り替えて

もう少し話を聞こうとする。


「期限はいつまででしょう。」

「一ヶ月」


「えっ」

「一ヶ月じゃ」


「……」


み、短くないか…?


「す、すみません。

短くありませんか…?」


「短くない。

この期間は、王国の定めだ"納期決定計算式"で

正確に算出された時間じゃ。なにも問題ないのじゃ」


ほんまかいな…。

つーかなんだその計算式。


しかし、こう言われて仕舞えば

なにも言い返せない。

俺はとりあえず同意をしておくことにした。


「……わかりました。」


あとでその詳しい資料とやらを

絶対に見なきゃいけないな…。


「……」

「……」


そして俺とチビおっさんは見つめ合う。

…ん?な、なんだ?この無言の時間は。

チビのおっさんはゆったりと言葉を吐く。


「以上である。もう帰ってよいのじゃ。」


「はぁ……?!」


えっ!?も、もう用事終わりなの!?

思わず俺はそのまま聞き返す。



「も、もう用事は済んだのでございますか?!」


「うぬ。済んだ」



け、怪我人をわざわざ呼び出しておいて、

アサインの話だけだと……?!


無表情で高い椅子から

見下ろすチビおっさんの顔を見る。


"行政は気が回らない"と評したメアリの言葉を

ようやく身にしみて理解した。



✳︎



まぁ、帰っていいっていうなら帰るか…。

素直に踵を返して帰ろうとする。


(結局魔人事件の件には

一切触れてこなかったなこいつら。

まぁいいんだけども)


「……」


俺たちは立ち上がりかける。

しかし、アリアだけは正面を向いたまま跪いていた。


「中央議長様。ひとつお願いがあります」

「うぬ?なんじゃ?」


「サタケ様の件で、お話がございます。」


・・・

・・


アリアは切々とサタケにされたことを話した。

サタケだけでは分かりづらいので、

事件の全体像を要約して話したのだった。


「うーぬ」


「サタケ様のした事は、あまりにも罪深いです。

到底許されることではないと思います」


チビおっさんは一人唸った。


「実になんとも、

現実味のない話であるぞよ」


「?どういう事でしょうか」


「そもそも農民でしかないタケシ殿が、

単独で魔人を倒すなど不可能である」


……まぁ、ごもっともな意見だな。


アリアは反論しようとする。

が、それを俺はさりげなく手で制する。


たぶんアリアは、神剣のことや、

サタケと戦った時の俺の戦いを

話すつもりなのだろう。


だが俺としては、

その辺りの件は"マジ"で話して欲しくない。

"王国に知られたくない"というのが正直な本音だ。



チビなおっさんは続ける。


「そして、サタケ様が

タケシ殿に興味を持って戦いを

申し込んだと言う話に至っては、

現実味がないどころではない。


農民に勝負を挑むバカな八柱将が

どこにいると言うのじゃ。ありえんのじゃ」


……いるんだよなぁ、そんなバカな八柱将が。

アリアは懐から例の録音機を取り出して話を続けた。


「証拠はあります。

本人自らが自分の過失を認めています」


「……」


沈黙。そして


「ありえない」


「…は?」


「仮にその魔法具に証拠が詰まっていたとしても、

サタケ様を訴えることは、ありえない、

と言っているのじゃ」


「……」


「八柱将とは、国の英雄。

国民にとっての希望なのじゃ。

そんな偉大なる存在を訴えるなど、

ありえないことじゃ」


「だから今回の事件の顛末はこうじゃ。」


「"教会所属の冒険者が魔人と戦った"

"しかし、力及ばず負けそうになる"

"そこを、颯爽と援軍として

サタケ様が登場し、魔人をあっという間に

斬り伏せた"」


「これが、真実なのじゃ」



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