第69話 八柱将とは
「オリビア様、どうぞ」
「……」ぺこり
メイドのメアリーに軽く会釈しながら
オリビアがやってくる。
手には毎度お馴染みフルーツである。
オリビアはこうして毎日、俺とアリアを
お見舞いに来てくれてるのだ。
(タケシおはよう。怪我の具合どう?)
「おう。調子いいぞ。
むしろ動かなすぎて体の調子が悪いくらいだ」
(ふふ。それならよかった)
そう言って、オリビアはフルーツを机に置いた。
今日は俺の大好きなリンゴとバナナを
買ってくれたようだ。
オリビアは、毎日こうして俺の好きなものを
色々買ってきてくれる。
「……わるいな、毎日気使わせて。
言ってくれれば金は払うからな?」
(いいよ。このお金は私のじゃないし)
「いやでもお前これ……
王国からもらった報酬金で払ってんだろ?」
報奨金。
俺たちは魔人襲来事件での功績を評価されて
国から報奨金を貰っていた。
オリビアには、
魔人の結界を破壊して王国に危険を知らせた功績を
評価され、そこそこの額の報奨金を
王国から提示された。
しかしこいつと来たら、最初は
「私はなにもしてないから」と言って頑なに
受け取ろうとしなかったのだ。
(いいってば。
このお金はタケシとアリアちゃん
のためだけに使うって決めたもん。
タケシだってそうしろって言ったでしょ?)
「あの時は言ったけどさぁ…」
最初、オリビアは
頑固として受け取ろうとしなかった。
だが、ここで断ってしまうのは、
王国のメンツが潰れてしまうのと同じこと。
そう思った俺が、とっさに
「とりあえずもらえるもんはもらっとけよ。
要らないなら俺に後でこっそりよこせ」
とオリビアに耳打ちして、
なんとか報奨金を受け取らせたのである。
(私本当になにもやってないもん。
これはタケシに使うべきお金だから、
タケシは気にしなくていいの)
「……お前がそれでいいんなら、いいんだけどさ」
なんでそんなに頑ななのかわからん…。
まぁ、個人の問題だし俺は別に構わんのだけども…。
✳︎
(うわ、なにこのメロンの彫刻、すごい)
「すごいだろ」
そう言いながら、オリビアは
ベットの横のいつもの席に向かう。
(これタケシが作ったの?器用だね)
「いや、俺じゃないよ。
そこの御方がやってくれたんだ」
(え?御方???)
そう言ってオリビアはいつもの席に
腰かけ……ようとしたところで、
ようやく男の存在に気がついたのだった。
「やぁ!」
「……!?」
念話を使うことも忘れてオリビアは
びっくりして男を見つめる。
驚いたオリビアを男は楽しげに見つめていた。
(き、気づかなかった…)
「いや気付くの遅くないか?」
1メートルまで近づいてようやく気付くて…。
どんだけ視界狭いんだモグラかお前は。
呆れている俺に、
男はにこやかに悪びれもせずにこう言った。
「仕方ないよ。気配を遮断してたからね!」
……うちのオリビアを
びっくりさせないでもらえますかねェ!!!
・・・
・・
・
そして改めて向かいあう。
「はじめまして!
僕はサタケ・クラウンです!」
もう1つ持ってきた椅子にオリビアが座ると、
サイコパス男が元気に挨拶をした。
(は、はい。はじめまして。
オリビアと申します)
会釈して挨拶するオリビア。
そして少し不思議そうな顔で男の顔をじっと見つめた。
「……?」
「?どうかした?」
男は覗き込むようにオリビアに問いかける。
(あ、いえ…。
なんだかどこかでサタケ様のお顔を見たことが
あるような気がして…)
「奇遇だなオリビア。
俺もこいつ…じゃなく
この方に見覚えがあるんだよ。」
(タケシも?)
「うん」
この顔はそう、
真夏の動物園で暑さにやられて
腹をグデンと公に晒して
アホヅラを晒すパンダの間抜け面そのものだ。
にへらと笑った顔からは
実に知性を感じさせない。
単細胞生物のミジンコもこんな顔を
していた気がする。
(うーん……?)
「はて?」と不思議そうにするオリビアに、
メイドのメアリーがさらりと補足した。
「見たことがあっても不思議はありません。
王国民なら一度は見たことがあるはずですからね。」
「え?」
(えっ)
メイドのメアリーはつづける。
「この方は、
"八柱将"様のお一人ですから」
・・・
・・
・
「この方は、
"八柱将"様のお一人ですから」
「ハッチューショー……?」
語尾を伸ばして問いかける。
はぁ?新手の焼酎の名前か?
つーか知ってる前提で話してんじゃねーよ。
そんなも知らねえy……
(八柱将!?!?)
ん。
(こ、この方が
あの八人しかいないというあの……?!)
「はい、そうです」
ん?
……ん!?
あっ、やべえ反応ミスったか!?
もしかしてこれ常識の範疇のワードなん?!
オリビアが驚いてるのを見て内心焦りまくりである!
やべえ無知がバレる阿保がバレる阿保がバレる……
「なるほど八柱将ね
納得だようんうんすごいよねー。」
なにも納得してないけど、早口でまくし立てながら
とりあえず腕を組んでウンウン頷いておいた。
「……」
俺の心中を察しているかどうかはしらないが、
メイドのメアリーがさりげなく補足する。
「…八柱将。
彼らは王国が抱える戦力の最大戦力です。
王国の最終兵器と呼ばれるほどの戦力で、
数々の偉業を残している方々です」
ほーん。
なるほど。とにかくつよくてすげーってことだな!
メアリはさらに説明する。
「その名は大陸全土に広がるほどの強さを誇ります。
一人一人が国の1つ2つを滅ぼせると
言われるほどの力をもっている、
と言われていますね。」
……はぁ?国を一人で滅ぼすぅ?
いやお前国に何人兵士がいると思ってんだよww
無理に決まってんだろww
「あるものは海を割り、
あるものは大地を隆起させ、
あるものは、剣の一振りで国の領土を壊滅させる…。
そんな神がかった実力を持つ者たちを、
王国は八柱将と呼んでいます。」
なんだその漫画の設定をそのまま並べたような話は。
まさしくおとぎ話の世界である。
国の英雄として持ち上げる気満々な
王国の魂胆見え見えだ。
俺は一通りの話を聞いたあと
冷めた気持ちでぼーっと聞き流す。
一方、オリビアは拳を握って
うんうんと強く頷いている。
(そ、そしてこの方が
その一人だと言うんですか!?)
「そうです。八柱将の一人が、
サタケ・クラウン様その人なのです」
メイドのメアリーは
ちらりと俺を見てさらに続ける。
「ちなみにサタケ様は、
国民から絶大な人気があるんですよ。
スマイル王子と呼ばれています」
こいついつもニコニコしてるから
一見優しいイケメンに見えるもんな…。
でも声を大にして言いたい。
(みんな聞いてくれーーー!
こいつ中身はただのサイコパス狂人なんです!
王都の皆さん!話を聞いてくれーー!)
・・・
・・
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