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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第5章 魔人討伐のその後
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第68話 お見舞いの目的

意識を失ったその後について。


サナが呼んだ神官たちの懸命な治療により、

俺は何とか命をつなぎとめた。


それからすぐに王都の病院へと搬送され、

数日の治療の末、ようやく歩けるくらいにまでは

回復した、というわけである。


・・・

・・


「あはは」


そして時は今現在!

俺は拳1つ分は入りそうなほどに

大きく口を開けて絶叫していた!


「ひえええええええええ!!!」


「あはは」


「ひ、ひてえええー!ひえーーーー!!!」


「あはは面白いなータケシはー。

流石僕の親友だね!」



そして今!俺のすぐ目の前に!

俺を病院送りに追いやった張本人が現れたのだ!


「ひえええええええ!!

殺さないでええええ!!」


これを叫ばずしていつ叫ぶというのか!?

逃げ道を塞がれ行き場を失った俺は、

壁に張り付くように命乞いである!!



「4日ぶりかな?

元気そうでなによりだよー」


「ひ、ひぇぇぇ!ひえええええ!!」


「うんうん。声が出てるねー。

元気のある証拠だね。

なんだか僕も叫びたくなってきたよ!

やっほーーーーー!やっほーーーー!!!」



張り合うように男も大声をあげている。


この男こそが諸悪の根源・最大悪。

俺を魔人と勘違い(そこも怪しいけど…)して

右腕を切り落としたあげくに、

大量出血で殺しかけた張本人!


「あははは」


それだというのに、

まるで微塵も反省の色がないのだこいつは!



(こ、こいつには

罪悪感というものが無いのか?!)



こ、こわいこわいまじこわいこいつ!

頭のネジ外れてるわ!

というかこいつ何しにここに来たんだ??!!



(ま、まさか俺にとどめでも刺そうって

思ってんじゃないだろうな!?)



も、もうやだ!まじであの時の目には会いたくない!

いっそ舌噛んで死んだ方が楽になるか?!南無三!


……と、恐怖一色に染まっていた俺だったが、

男は先回りするように、俺に話した。



「ふふふ。そんな期待した目で

僕を見ないでくれよー。

今日は"遊び"に来たわけじゃないんだ。」



ニコッと楽しそうに笑うと、

男はこう続けた。


「今日は純粋なお見舞いさ。

この前はごめんね〜。

君が魔人じゃないことはわかってたけど、

つい遊びたくなっちゃってさ!

反省してるから許してね!」


う、嘘つけ!反省してる顔じゃねーんだよ!!

ニコニコしながら男は続ける。


「まぁまぁ。とにかくさ。

タケシもそんな壁にくっついてないで

ベットに座りなよ?

僕に会えて嬉しいのはわかるけど、

そんなに大暴れしたら傷がまた開くよ?」



ア、ア、ア、アァ…ぶん殴りてぇぇぇ……

でもそんな真似怖くてできるわけがねえ…


結局俺はイエスマン。

言われるがままにおとなしく言う通りに

ベットに座ったのだった…。


・・・

・・


「それであのー…

今日はどういったご用事で…?」


両手を揉み揉み、ベットに正座する。

恐る恐る、震えながら俺は男に尋ねる。


「うーん」


…?なんだろう。

男は不満気に唸りだした。


「本題に入る前にさ。

やるべきことがあるじゃないの?」


「?な、なんでしょうか」


男は少しだけ不機嫌そうに俺に問いかける。

「………わからないの?」


「へ、へぇ…す、すみません。

粗末な農民の出なもので学がないもので…」


「タケシ、出身を理由にしたら

ご両親にも自分にも失礼だよ。

その言い訳はいただけない」


「ははーっ!!おっしゃる通り!

おっしゃる通りでございます!すみません!!」


速攻で土下座の体勢である。

はぁ、とため息をついてから、

男は諭すように語りかける。


「あのね。タケシは大事なことを忘れてるよ。

僕らが対話をする上で、まず真っ先に

しないといけないことだ」


「は、はい。なんでございましょう」


「それはね?……自己紹介だよ!」


・・・・・

・・・・

・・・

・・



そして唐突に自己紹介タイムが始まった。


「私はタケシ、タケシと申します…。

ケチな農民、取るに足らない雑草、

稲にわく小さな害虫…それが私でございます…。」


へりくだりにへり下る。

私はほんと大した人間じゃないんです。

あなた様はこんな私と話すことなんてないんです。

だから早くおかえりください……


「タケシは雑草なんだね!」


………いや、雑草は例えだからな?

雑草は踏まれても踏まれても次の日はまっすぐ天に

向かって伸びる不屈の象徴だからな?

ばかにすんなよ???


自分でへりくだっておいて、人にそう言われると

カチンとくる。そういう人間でございます。はい。


……と、一通りこころの中で葛藤した後、

再び俺は返事を返す。


「はい左様でございます…。

唯一の取り柄は、雑草のようなしつこい生命力と、

そしてクワを握り続けてできたマメくらい。

そんな矮小な男でございます…はい…」


極めて謙虚で卑屈に自己紹介をする俺。

一方サイコパス男は。


「あははははは」


気持ちのいいくらいの大笑い。快活な笑いである。

……笑ってんじゃねええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!


ひとしきり笑い終えると、

男はニコニコとつづける。


「うんうん。わかったわかった。

タケシは謙虚な人なんだね!うんうん」


「常に人の後を追う。

わたくしは金魚の糞でございます…。

それが私の持って生まれたサガでございます…はい…」


「なるほどねーうんうん。

じゃあ次は僕が自己紹介するね?」


お前のことなんて1ミリも知りたくねーわ

早よ出てけやくそサイコパス!!!!


…という気持ちはおくびにも出さずに、

俺は目尻をぐんにゃり下に下ろして愛想笑いで頷いた。


「僕の名前はサタケ。

サタケ・クラウンが僕の名前だ!」


「なるほどォ素晴らしいお名前ですねェ」

「うん!」


「……」

「……」


「……?」


あ、あれ?自己紹介もう終わりすか?

妙な沈黙に困惑していると、男は俺に問いかける。


「タケシ、って名前は

"イワテ"の名前のセンスだよね?

タケシってもしかして"イワテ"出身なの???」


私事ですが、

某漫画動画のイラストのお手伝いしましたー。

よければどうぞー


https://youtu.be/dpS1KRkzMIE

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