第64話 八柱将軍 サタケ #2
甦るのは魔人を倒した直後の記憶。
そして、サタケとかいうサイコパス戦闘狂と
出会うまでのトラウマが思い起こされる……
・・・・
・・・
・・
・
ガコンという大きな音。
「……」
その大きな音ともに、魔人の体はピタリと止まる。
そして俺は、勝利の雄叫びをあげたのだった…!
「やったーーーーーー!!!
たおしたーーーー!!!」
魔人は地面にうつ伏せで伏したまま、
ピクリとも動かない。
斬撃が効かない魔人の体をついに神剣が貫いた!
(決まった!勝った!
俺たちの勝利だあああああああ!!!)
勝った!俺たちの勝ちだやったー!
……と、俺は順調に死亡フラグを立てていく。
そして喜びもつかの間、
すぐにそのフラグは回収された。
「やったーーーー………へごぉおどおぉぉ!?」
それはあまりにも突然。
なんの前触れもなく、
体が横に弾かれように吹き飛んだ。
「へっ…?」
こ、攻撃を受けたのか!?と俺は錯覚した。
しかしすぐにそうではないと気づかされる。
攻撃を受けたわりには体が全く痛くないのだ。
「あ、脚が勝手にうごいてる…?」
勝手に動く両足。
脚がまるで意思を持ったように走り出しているのだ。
それも、普段の俺が出せないような強靭な力で、
地面を蹴り飛ばし真横に
ジャンプしているのだから普通じゃない。
そして俺はされるがままに操り人形。
体は真横に弾かれた。
【ドゴオオオオオオオオオオン】
直後、響き渡る爆裂音。
俺の元いた場所めがけて
光球が爆裂したのだ!
遅れて今更に思い出す!
地面に倒れる魔人に夢中で、
迫り来る魔法の攻撃を俺はすっかり失念していた!
「……あ、ああ、あ」
危ねええええええええええ!!!
さっきまで立っていた場所は、
地面がえぐれるほどの大爆発でもはや見る影もない!
(し、死ぬところだった!!)
もしもあそこに立ったまま
だったら確実に死んでいた……!!!
この脚が勝手に走り出していなければ、
俺は爆発して見るも無残に爆発していたのだ!
己の身に起きた怪奇現象に困惑するよりも先に
感謝の気持ちが勝る!
た、たた助かったあああああ……!!!
俺の脚ナイスゥゥゥゥ!!
なんかしらんがナイスゥゥゥ!!
1人自分の足を褒めるように撫でていると、
頭の中からお馴染みの声がした。
『タケシくん怪我はない!?』
勇者が心配そうに声をかける。
『ご、ごめん。緊急事態だったから
体を勝手にうごかした!』
「あ、そういうこと?」
そういえば、前にもこいつに体の主導権を
奪われたことがあったな…。
怒られるのではないかと勇者は
ビクビクしているが、
流石にこのナイス判断を怒るわけがない。
「いやいや!よくやった!ありがとう!」
今回ばかりはまじでナイスだ!!
弾け飛んだ元いた場所を脇目で見ながら
俺は素直に賞賛したのであった。
・・・
・・
・
「………へぇ」
…そんな俺たちの様子を
じっと見つめる存在がいることに、
俺たちは気づかない。
入り口が瓦礫で塞がれているはずの密室。
そいつはどこからともなく忽然と姿を現した。
「援軍でーす。援軍にきましたー」
ゆるい声。
緊迫感ある状況にもかかわらず、
ヘラヘラした態度でゆらゆら歩いてくる。
「へっ…?え、えんぐん?」
突然現れたその男。
近所を散歩するくらいの軽ーい足取りで歩いてくる。
金髪碧眼。指にはいくつもの指輪がひからせながら、
ゆるい笑顔で友好的に近づくその男。
「そうそう。援軍援軍。
たすけにきましたよー」
向こうの片隅で小さくなっている神官たちに向けて、
男は適当そうな感じに声をかける。
突然、マイペースに空気も読まずに現れた男に、
俺の思考は追いつかない。
援軍。男はそう名乗る。
しかし現れたのはたった1人だけだ。
援"軍"と呼ぶにはあまりに貧弱な人数である。
(えっ。少なっ)
これが対魔人に対する王国の対応…?
おれたちが奇跡的に倒せたからいいものの、
舐めすぎにもほどがあるのではなかろうか。
……と、思っていたのが最初の印象。
だが数分後にはそんな主張も消し飛ぶこととなる。
「君が魔人だよね?」
それはどこかあどけない声だった。
新しいおもちゃを見つけた子供のような、
そんな無邪気さすら感じる声だ。
「は?いやいや、魔人じゃないよ。俺は…」
そんな俺の言葉を右手で制する。
男は手のひらをこちらに向けて、俺のセリフを遮った。
「わかってる。もうわかってるから」
「あん?」
「君のさっきの動きを見ればわかるよ。
全部わかった。これ以上言葉はいらない。
あとは剣で語り合おう」
「はぁ?お前なに言って…」
『タケシ君!伏せて!』
「へ?」
それはあまりに一瞬。
瞬きする間もない速さ。
勇者すらも反応できない速度で、
そいつは腰の剣を抜刀した。
「えっ」
直後、いつも毎朝毎晩見ていた"それ"が
目の前の宙を舞う。
気づけば、俺の右腕は
そいつの剣によって吹き飛ばされていた。




